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異世界で「あいどる・はーと」作りました。  作者: みっど
第十五章 第一次異世界大戦 後編
60/80

第六十話 理想の世界

 

 アナタはアイドルに『ただいま・お帰り』と言い合ったことがありますか? ……俺はある。

 

 俺は今、都内にある真っ黒なビルの前に、一人で立っている。

 表札も、看板も、何もない正門にあるインターホンを押す。

 ピンポーン!

 

「はい……」

「すみません、ここは『堂元組』の事務所でよかったですか?」

「いいえ、違います」

 

「ここの組長さんにお話があるんですが……」

「お帰り下さい」

 

「俺は、組長さんの息子さんを半殺しにしたものです」

「!!」

 事務所内がザワついているのがわかる。

 

 ガチャッ

 ドアが開いた。

「中に入れ」

 凄い強面の、屈強な男が数人出てきて、俺を事務所内に入れる。

 

 事務所の真ん中にある長椅子に座らされる俺。

 中には二十人ほどの、ガラの悪い組員と思われる男が俺を取り囲み、睨みつけている……

 奥にある大きな机に、四十代半ばの、貫禄ある男が座っている……多分組長だ。

 

 組長は立ち上がると、俺の前にある椅子に座り、タバコを吸いながら話出す。

「お前が、ワシの息子を半殺しにしたというのは、本当か?」

「はい、本当です」

 

「確かに息子のアクトとギンジは、数週間前から連絡が取れず、つい最近病院に運び込まれたと連絡が入った。二人とも重症だったのは間違いない」

「……」

「二人をやったのはお前だと?」

「はい」

「お前のようなヒョロヒョロの小僧に、うちのアクトとギンジがやられるとは到底思えないんだがな……」

 

「なら、電話をしてみるといいです、今なら出るはずなので。

 電話に出たら、『ギガンティックマスター』と『ドラゴニックキング』からだと言ってみて下さい」

「なんだそりゃ? 『ギガ……』」

「『ギガンティックマスター』と『ドラゴニックキング』です」

 

 組長は、訝しげに俺を睨むと、懐から携帯電話を取り出し、電話をかける。

 プルルル、プルルル……ガチャッ

「もしもし……」

「おう、アクトか? ワシじゃ」

「親父か……」

 

「ギンジもいるのか?」

「ああ……携帯電話の『スピーカー機能』をオンにしたから、ギンジにも聞こえているよ」

「そうか……今事務所に変な奴が現れてな」

「変な奴……?」

「ああ、なんでもお前たちに『ギガンティックマスター』と『ドラゴニックキング』と言えと……」

 

「うわああああああああッ!」

「ひ、ひいいいいいいいッ!」

「⁉ ど、どうした、アクト! ギンジ!」

 

「あ、あああ、ああああ……お、オレ達の前で、そ、その名前は二度と言わないでくれっ……」

「た、助けて、もうしません、助けてーーーッ!」

「おい! アクト、ギンジ!」

 プツッ、ツーー、ツーー、ツーー……

 

「……」

「信じてもらえたかな?」

「……信じがたいことだが、どうやら本当らしいな」

 組員たちが、懐に手を入れる……組長はそれを止める仕草をする。 

 

「だが一つ腑に落ちない、だったらお前は何をしにここに来た?」

「モチロン、息子の復讐とかを考えないように頼むためだよ」

「それは無理な話だな」

「なぜ?」

「息子をやられて黙っているわけにはいかない、組のメンツにも関わるしな」

 

「でも、最初に何の罪もない人に危害を加えたのは、アクトの方だよ?」

「それは仕方のないことだ」

「仕方がない?」

 

「そうだ、結局この世界は『力』がモノをいう。

 動物の世界も、力の強いもの、体の大きい者が弱いものを支配する……そして、人間だって動物だ、そうだろ?」

 組長は、加えていたタバコを灰皿で消し、また新しいタバコを咥えた。

 すぐさま組員がそのタバコに火をつける……

 

「フーー……

 強い者が支配し、弱い者は搾取され、淘汰される……結局はこれが自然の摂理なんだよ」

 まるで学校の先生のように、その男は俺を諭すように話す。

 

「やられたくなかったら強くなればいい、そうは思わないか?」

「……」

 

「弱者ってのはな、『罪』なんだよ」

「『弱者イコール罪』、か……」

 俺は、ギルギルの『罪システム』のコンセプトを思い出して、少し苦笑い。

 

「というわけで、お前をこのまま帰すわけにはいかんなぁ……」

「そうですか……」

 そう言うと、俺は立ち上がり、そのまま事務所のドアの方へ歩き出す。

 

「おっと、逃がさねぇぞ」

「俺は逃げも隠れもしないよ、捕まえたかったら追いかけてくればいい」

 ガチャッ

 俺はドアを開け、外へ。

 組員と組長も、俺を追いかけてドアから外へ……

 

 ザアアアア……

 ドアの先は、見渡す限り、風が吹く広大な草原……

「な、なんだここは?」

「事務所の、外じゃない……?」

 組員たちが振り返ると、入ってきたドアはもう見当たらない。

 

「おいお前、こいつはいったいなんだ? 手品か?」

「手品……まあ、アンタたちから見たら、これは手品みたいなもんかな?」

 扉を開けたら、全然違う世界……昔のテレビ番組とかで、そういうのがあったかもしれない。

 

「おい、もういい、やれ」

「へい」

 組長が組員に指示を出す。

 組員が懐から拳銃を取り出し、俺に向ける。

 ダンッ! ダンッ! ダンッ!

 

 草原に、拳銃の発砲音が響く。

 

「な……なんだ、それは?」

 俺の前には『対射撃結界』が張られ、拳銃の弾丸はそこで止まっている。

「これは『対射撃結界』、弓矢などの射撃武器を防いでくれる結界だ。この世界では、拳銃もただの射撃武器になる」

「お前は、いったい何を言っているんだ?」

 

「『対射撃結界』は、より強く、より大きくするためには、それなりの魔力を要するけど、ただ張るだけなら魔力は関係ない。

 一般の人たちでも無意識で張れる人もいるから、その拳銃はここではほとんど役に立たないよ」

「な、なんだと?」

 

「組長さんさっき言ってたよね、この世界は結局『力』がモノをいうって」

 組長は物凄い怖い顔で、俺を睨みつける。

 

「強い者が支配し、弱い者は搾取され、淘汰される……『弱者は罪』だって」

「何が言いたい?」

「この世界は、アンタたちの『理想の世界』だと思うんだ。

 まさに強いものが勝ち、弱いものは搾取され、淘汰される……そういう世界」

 

 組長は、周りの草原を一度見渡した後、また俺を睨む。

「アンタたちが言った通り、『弱者は罪』だって言うなら、ここで成りあがって見せてよ」

「成り上がる? それはいったいどういう……」

 

「また半月後に会いに来るよ、それまで死なないように頑張って」

 俺はくるりと後ろを向くと、組員たちを残してそのまま歩き出す。

「お、おい、待て、お前……」

 周りから『野盗』や『魔獣』の気配がする……俺がいなくなるのを草むらの中で待っていたんだな。

 後ろの方で、組員たちの声が聞こえる。

 

「な、なんだお前ら⁉」

「く、来るな!」

 ダンッダンッダンッ!

「何だこいつら、拳銃がまったく効いてない⁉」

 グルルルル……

「や、ヤバい、逃げろぉーーーっ!」

 

 ザザアアアアア……

 草原の風が、また一段と強くなっていく……

 

 *****

 

「ただいま」

「お帰りなさいマスター」

 俺はオルタナティブドアで、ファルセイン城下町の自宅に戻った。

 

 アクトとの戦争はとりあえず終結したけど、整理しなきゃいけないことが山積みだ、まずは……

「マフユ、ナナ」

「はい……」

「はいぃ!」

 

「アクトとの戦闘中、お前たちの会話が聞こえていた」

 ナナは少しバツが悪そうな顔をしながらも、話し出した。

「あの時アイカが『剣閃』を出した時、マフユはそれを最初から知っているようだった……そしてあの額の目」

「……」

「マフユ、話してくれるか?」

 

「この額の眼は、魔界の『邪尾族王』の持っていた『邪眼』と同じものです」

「『邪眼』……」

「この眼の能力である『ジャミング』で、アイカの真の力を隠していました」

「アイカの真の力を……? 何のために?」

「それは……申し訳ありません、今はまだ言えません」

 

「アイカもこのことを知っているのか?」

 マフユは服の中から、一冊の本を取り出した。

「それは、『ネクロノミコン』⁉」

「アイカはこの本で記憶を封印しています、だから何も知りません」

 

「俺の『アナライズ』はどうやって回避したんだ?」

「私は執事魔族のメルフィスさんと同じ『並列思考』持ちです、『表層思考』で『深層思考』を隠していました」

「しかも『並列思考』持ちか……能力が渋滞しているぞ」

 

 『邪眼』使いで、『並列思考』持ち、おまけに『ネクロノミコン』……そこまでして隠したい事って……?

 そもそもアイカもマフユも、現実世界のアイドルのドッペルゲンガーのはず……それが何でそんな秘密を?

 

「あの時、お前はアイカのことを『あの方』と呼んでいたな、それも何か関係があるのか?」

「申し訳ありません、それも今はまだ言えません……ですが必ず、いずれお話いたします、信じて下さい!」

「……」

 

「マスター……」

「わかった、信じる」

「はやっ!」

 ナナの突っ込み……もう定番になってきた。

 

「いいんですかマスター、そんなに簡単に信じちゃって」

「マフユの正体はわからないけど、奴隷市場で初めて会ってから今まで、共に過ごしてきた事実は変わらない。俺は今のマフユを信じる」

「マスター、ありがとうございます」

「あ~あ、いい人すぎるというか、何というか……ま、そこがマスターのいい所でもあるんですけどねぇ」

 

 

 ピンポーーン

 家のチャイムが鳴った、お客さんかな?

 アイカが扉を開けると……

「ヴァ、ヴァロン皇帝⁉」

 何とそこに立っていたのは、ヴァロン皇帝と近衛兵団の三人、それにサモンロードとドラゴニックキングたちだった。

 こういうのって普通は、俺たちの方がお伺いしなきゃいけないんじゃないのか?

 

「突然すまぬ、城は今半壊状態なのでな」

 あーそうでした、すみません……

 

「しかし皇帝、単独での行動は危険かと……」

「ちゃんと近衛兵団も連れてきている、問題ない」

 皇帝の後ろには、三人の千騎士が立っている。

 多分『銀嶺のウォルフ』、『空魔のソウケイ』、『海鳴のホーン』って人だ……初めて会ったけど。

 

「それに、町に入ったときに、サモンロード殿とドラゴニックキング殿とも合流したしな」

「丁度僕たちもギガンティックマスターの家に行く予定だったから、一緒に来ちゃったよ」

 ノリが軽いなぁ……

 

「コズミッククイーンは、現実世界での有給休暇が切れたから仕事に戻るって。ギガンティックマスターによろしく言っておいてくれって」

 

「それで皇帝、今日のご用事は、ひょっとして……」

「うむ、ヴァロン城のことなのだが……」

 やっぱり!

 半分以上粉々にした上に、中庭はクレーター、城門はバラバラ……そりゃ怒るよな。

「スミマセンでした、できる限り弁償の方を……」

「いやいや、その必要はない、そのことを伝えに来たのだ」

「えっ」

 

「そもそも余の命と近衛兵団、その他大勢を救ってくれた『大英雄』に、城の弁償などさせられん」

 そう言っていただけると、助かります……

 

「実は城の方は丁度『立て直し』を検討していたのだ、カイエル城に負けない、もっと巨大な城をな」

 おっと、まさかの『負けず嫌い』がこんな所にも……

「逆に『解体』の費用が抑えられたのでな、そのお礼も兼ねている」

 ……多分冗談なんだろうけど、器がでかいな~。

 

「ヴァロンの転移者の中に、『イッキュウケンチクシ』という者がおってな、新しい城はその者に建てさせる予定なのだ」

 さすがはヴァロン帝国、転移者の数もファルセインとは比べ物にならないからな。

「『てっきんこんくりーと』製で、地上十五階建て、『えれべーたー』や『えすかれーたー』も完備した最新の城だ」

 皇帝、それはもう『城』ではなくて『ビル』では……?

 

「完成したあかつきには、ギガンティックマスター殿も招待する、楽しみにしていてくれ」

 

 

「サモンロードとドラゴニックキングは何の用で来たの?」

 勝手にうちの台所で飯を食べていたドラゴニックキングが、喉を詰まらせながら話し出す。

「モグモグ……

 オレは別に用事は無かったんだが、アミサーがどうしてもお前にお礼が言いたいと言ってな」

「お礼?」

 

 天空の民アミサーは、種族進化して『天界の民』になっていた。

 背中の翼の枚数が増え、頭の『天使の輪』も形や大きさが変化している。

「ギガンティックマスター様の助言のおかげで、種族進化することができました、ありがとうございました」

 

「いやいや、種族進化できたのはまさに仲間たちのおかげ、仲間から貰った『勇気』のおかげだよ」

「はい!」

 アミサーもリュオンも、『人間恐怖症』はある程度克服できたみたいだ。

 俺の『高所恐怖症』の克服方法が、こんなに広がって役に立つとはなぁ……

 

 

「で、サモンロードは何しに来たの?」

「僕は『オリハルコンのトロフィー』が見たかったのと、キミのお父さんを紹介してほしくて来たんだ」

「俺の親父を?」

 

「ガンドルフの『金剛亀の盾ダイヤタートルシールド』と、『回転鉄槍ドリルスピア』の、更なる強化のためにね」

「フムフムなるほど、まいいけど」

「キミのお父さんが凄腕なのは、鬼の民のドドムから『お墨付き』が出ているしね」

「あんまり言うと調子に乗るから、ほどほどにな」

 

 人魚のアオイが、サモンロードに近づいてきた。

「サモンロードさんが召喚した『リヴァイアサン』、凄かったですね~。あれってペットにできます?」

「ペ、ペット⁉」

 どうやらアオイは、サモンロードの召喚魔法『リヴァイアサン』に興味があるらしい。

 

「む、無理無理、ヘキサグラムの『リヴァイアサン』を捕まえるなんて……たとえできても無理だよ、契約するだけでも大変だったのに」

「え~、じゃ『レンタル』ならどうですか?」

「レ、レンタル? ダメだよ」

「なら『サブスク』は?」

「サ、サブスク⁉」

 ……アオイ、どこでそんなこと覚えたんだ?

 

 

 その後俺たちは、洗脳されていた大統領や国防長官たちを元の場所へ帰した。

 一応ある程度説明はして、都合の悪い部分は、マフユに借りた『ネクロノミコン』で記憶を改ざんさせてもらった……


 現実世界は、兵器の消失や『核ミサイル』発射などで、連日大ニュースが続いたが、どこにも被害がないということで、次第にこの話題は終息していった。

 

 アクトに脅されたヴァロンの転移者たちも、全員探し出し、話をした。

 やはり一度壊れた『オルタナティブドア』は、修復したとしても元には戻らず、異世界間の往来はできなくなっていた。

 

 俺たちはお互いの連絡先を交換し、どうしても異世界に来たい時は、できる限り協力すると約束した。

 

 *****

 

 そして半月後……

 俺は『魚座ピスケスのゾディアックビースト』を使い、異世界に置き去りにしてきた組員たちを探す。

 十名ずつ、二組に分かれているみたいだ。

 

 一つはファルセインのスラム街、『闇オークション』会場。

 もう一つはカイエル方面の『不夜城』のはずれ。

 俺はアイカを連れて、『闇オークション』会場へ向かった。

 

 

 会場内はすでにオークションは終了しており、貴族たちが帰宅する準備をしている……

 俺はオークションの責任者と話をして、落札した商品が並ぶ部屋へ案内してもらった。

 そこには……いた、十人の組員たちが、鉄格子の中で震えている。

 

 俺は鉄格子の前に行き、その場でしゃがむ。

「ア、アンタ! あの時の⁉」

 一人の組員が俺の前に来て、鉄格子を掴みながら助けを請う。

 

「アンタ、あの時はすまなかった、本当に悪かったと思っている、反省もしてる、だから一生のお願いだ、頼む助けてくれ!」

 組員たちは全員、祈るように俺に救いを求めている。

 

 俺は静かに口を開く……

「……現実世界でも今の状態に近いことがあったはずだ。その時『助けてくれ』と懇願する人たちに、アンタはなんて言ったんだ?」

「そ、それは……」

 

「……そうか、『お前が殴られようが、弄ばされようが、殺されようが、オレには関係ない』そう言ったのか」

「な、なんでわかって……い、いや、あの時は、その……」

「じゃあ今俺がアンタたちに言う事は特にないよ、じゃあな」

 俺は立ち上がり、アイカとその場をあとにする……

 

「ま、待ってくれ! おい、おい!……

 このままだとオレたち全員あの変態貴族たちにカマを掘られちまう! 頼む、助けてくれーーーッ」

 後ろで組員たちの叫び声と泣き声がこだましている。

 

 

 俺とアイカは、そのまま『オルタナティブドア』を通り、今度は『不夜城』へ。

 まだ昼間なので、『闇市』は開催しておらず、町は閑散としている。

 

 少し歩き、『不夜城』のはずれにある、古い建物の中へ入る。

 そこは元『暗殺組織デスサイズ』の下部組織だった、盗賊団のアジトだった。

 

「ア、アンタは……⁉」

 盗賊たちがザワつく。

 奥から盗賊団の頭っぽい男が、恐る恐る俺の前に歩いてきた……

 

「ア、アンタ、あの英雄『ギガンティックマスター』だな……? お、オレたちを捕らえにきたのか……?」

「いや、今は見逃してやるよ、その代わり奥の牢屋に入っている奴と話をさせてくれ」

 盗賊たちはほっと一安心、俺を奥にある牢屋まで案内してくれた。

 

 牢屋の中には、組長も含めた組員が十名……

「こいつらは、オレたちが『奴隷位』になりそうになった時に、罪を擦り付けるために捕らえたやつらだ」

 盗賊団の頭が、組員たちの前で説明した。

 

 組長が鉄格子のところまで来て、俺に話す。

「小僧、やってくれたな……こんな世界で置き去りにして、ワシたちを嵌めやがって」

「……」

「この世界ではお前は『英雄』扱いか……さぞ気分がいいだろうな、ワシたちをこんな目にあわせて」

 

 俺も組長に話す。

「言ったはずだ、ここはアンタたちの『理想の世界』だと。

 強い者が支配し、弱い者は搾取され、淘汰される……『弱者イコール罪』、アンタが言ったことだよ」

「ワシの話の上げ足でも取ったつもりかこの小僧が! 舐めるなよ!」

 

 ガシャンガシャン!

 組長は鉄格子を掴んで暴れ出す。

「『やられたくなかったら強くなればいい』、これもアンタの言葉だ」

「くっ……」

 組長は諦めたのか、鉄格子から手を離し、組員たちの元へ戻る……

 

「ああ、わかったよ……成り上がればいいんだろ? この世界で、やってやろうじゃねぇか!」

 開き直ったかのように気合いを入れ、組員たちを鼓舞する。

 

「今に見ていろ、ワシはこの世界でも強き者になって、また弱い者を支配してやる、ワーハハハハ……」

 まるで獣が、相手を威嚇して吠えるかのように、組長は大声で笑い出す。

 俺はアイカと盗賊団のアジトをあとにする……

 

 その後、俺たちが彼らを目撃することはなかった……

 

 *****

 

 俺はアイカと外を歩きながら、一人もの思いに耽る……

 俺がこの異世界に来てから一年ちょっと、この『ギルギル』には、まだ俺の知らない秘密がたくさんある。

 

 ①まずアイカとマフユの正体……

  マフユの言う『あの方』とは? アイカの真の力とは?

 ②神魔のセリフの真意……

  秘密裏に誰かを捜しているようだった、それはいったい誰なのか?

 ③アカネの『霧』の秘密……

  アカネの隠された能力に、霧が関係しているみたいだ……何者かの関与も?

 ④トーコと『Dr.ナマズエ』との関係……

  以前チラッと触れたが、トーコの方からはまだ話は無い。

 ⑤ミキの『ネクロノミコン』……

  『本の民』の反動が無いというのはおかしい……きっと何かある。

 ⑥他にも、『魔界のタロットカード』と『ゾディアックビースト』の未確認……

  『魔界のタロットカード』は、『世界ワールド』と『正義ジャスティス』のカードがまだ未回収。

  『ゾディアックビースト』は、『牡牛座タウラス』と『牡羊座アリエス』がまだ残ってる。

 ⑦そもそも、なぜ俺たちはこの世界に『転移』できたのか?

  条件は? 人選は? 転移者ごとに『ランク』も存在するようだ……

 

 

 よーし、俺はメンバーと一緒に、この『ギルギル』の謎を必ず解き明かすぞーーーッ!

「えい、えい、オーーーーッ!」

「うわっビックリした! マスター、何ですかいきなり……」

「ゴメンゴメン、ちょっと気合を入れたんだ」

 

「もう、マスターって、やっぱり少し『変』ですよね」

「イヤイヤイヤ、『変』っていったらナナやアカネの方が……」

「それは……」

「ハハハ……」

「フフフ……」


 俺は、こんな当たり前の日々が、ずっと続いていくと思っていたんだ……

 あの日が来るまでは…… 


「わあああああッ! お前っ! キャルロッテを返せっ!」

「やめてっ、お願い、リンを殺さないで……彼を、愛しているの……」

「みんなどけっ、リュオンは、オレがやる……」

「双林寺活殺拳・攻の拳・究極奥義『閃空極地鳳凰活殺拳』ーーッ!」


「シノ! 死ぬなっ! シノーーーーーーッ!」

「お願いですマスター、私を……殺してください!」

「言ったはずだヒナタ、俺はたとえお前に殺されたとしても、お前を許すと!」

「お前をこの世界ギルギルから、削除デリートしてやるぜ……『バグ』ッ!」


 今までの戦いは全て、この戦いのための『布石』だったのかもしれない……


 ☆今回の成果

  ファースト 

   アイカ(113)装備 マキアカリバー風神 マキアカリバー雷神 剣閃

   マフユ(109)装備 射手座サジタリアスのゾディアックビースト 邪眼

   ナナ(109)装備 武神王の脚甲 武神王の闘着

   ヒナタ(114)装備 魔導王の杖・改 魔導王のローブ・改


  セカンドシスターズ 

   ネネ(105)装備 命王の杖 智天使ケルビムのローブ

   フウカ(104)装備 ガルーダウイング ガルーダの衣・改

   トーコ(104)装備 真・錬金術セット 錬金神のローブ


  ナイトメアウェイカーズ

   リンカ(100)装備 ストレンジダガー 幻神の装束

   ノノ(100)装備 砂神の扇 砂神の衣

   リリ(⁇)装備 神龍根 閃神の衣

   ヒビキ(99)装備 地神の斧・改 ベヒモスメイル・改


  オッドアイズ

   シノ(98)装備 モリブデンの盾×四 ベヒモスメイル・改

   ラン(98)装備 床落としマークⅡ ファイアドレイクの鎧・改

   アカネ(100)装備 モリブデンの鞭 真・極光の衣

   ミキ(100)装備 魔導書 ネクロノミコン 賢神のローブ

  

  イレギュラーズ 

   オウカ(96)装備 光竜のほうき 光竜のローブ

   アオイ(95)装備 ワダツミの槍 ウェットスーツ

   エマ(94)装備 地脈のハンマー ファイアドレイクの鎧・改

   フタバ(94)装備 獣神王の爪 獣神王の衣

   ルイ(95)装備 ダークマターボウ アンチマターメイル

   ミコト(⁇)装備 魔界のタロットカード 大魔王のローブ

   アキラ(⁇)装備 ナイトメアリング サキュバスローブ

   モモ(94)装備 獣神王の脚甲 獣神王の衣


  アンタッチャブルズ

   アラクネのユイ(91)装備 アラミド繊維の糸 魔力糸の衣

   スライムのヒフミ(92)装備 なし

   ナーガのカオル(93)装備 空王の杖 天界のローブ

   セイレーンのカルラ(92)装備 カラオケのマイク ヌエの衣・改

   イフリートのイオナ(93)装備 不燃の手袋・改 不燃の衣・改

   トレントのミソラ(93)装備 ユグドラシルの枝 ユグドラシルの衣

   トレントのマキ(91) 装備 ユグドラシルの葉 ユグドラシルの衣

   メデューサのクレア(93)装備 少女漫画の目のアイマスク ネイルアート

 

 

 ◆名もなき村……

 

 前のような活気のある風景は無く、村は静まり返っている……

 建物は全てことごとく破壊され、火の手が上がっている。

 

 そこら中に、惨殺された村民たちが横たわっている。

 その中には、バグの父親である『村長』の姿も……

 

「あああああ、ああああああ……」

 バグが、村の中心で、血みどろになっている『フリージア』の死体を抱きかかえて泣き叫んでいる……

 

「なんで、なんでこんなことに……オレが一体何をしたというんだっ⁉」

 そう叫びながら、バグも血の涙を流す……

 

 ジジジ・ジジジジジ……

 バグの体の一部が、ゲームのモザイクのように点滅している……

「ああああ、うああああああーーーーーッ!」

 バグの叫び声が、いつまでも村にコダマする……

 

 

 この後に訪れるであろう、『ギルギル』の惨劇を暗示するかのように、『名もなき村』から黒煙が立ち昇る……

 

 これまでで最大の戦いの幕が、今切って落とされようとしていた……

 

 

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