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異世界で「あいどる・はーと」作りました。  作者: みっど
第十四章 第一次異世界大戦 前編
55/80

第五十五話 吊られた男

 

 アナタはアイドルに『刺された』ことがありますか? ……俺はある。

 

 現実世界の、『あいどる・はーと』のコンサート会場に、一人で来ている俺。

 コンサートは終了し、握手会が始まった。

 俺は、ひと際長い行列ができている、アイカの列に並ぶ。

 一時間並び、俺の番になる……

 アイカと握手する俺。

 

「えっと何回か会っていますよね? 『あいどる・はーと』のアイカです、今日は来てくれてありがとう」

 俺の前には、いつもの笑顔を見せてくれる、現実世界のアイカがいる。

「時間です、離れてください」

 『剥がし』と呼ばれる、握手会の警備をしている人が、俺を剥がそうとしている。

「あれ? なんだこいつ、全然動かない……?」

 

「必ず助けるから、待っていてくれ」

「?」

 

 そう言って、俺は手を離した。

 剥がしの人に吹っ飛ばされる俺。

 ドザァッ!

「なんて奴だ、さっさと離れろ!」

 俺はゆっくり立ち上がり、そのまま会場を後にした……

 

 

「あれ? 私、なんで泣いているんだろう……」

 現実世界のアイカが、何故か一筋の涙を流す。

 

 俺は会場の外の、ひと気のない場所へ行き『オルタナティブドア』を開く。

 ドアの向こうには、『異世界あいどる・はーと』が総出で、並んで俺を待っていた。

「お待ちしておりました、マスター」

 

 俺はオウカにローブを着せてもらい、マフユから杖を受け取る。

「マスター、準備は整っています、ご命令を」

 マフユの肩にも神魔が乗っている。

「ギャウギャウ!」

 

「必ずアイカを助ける、行くぞ!」

「はい!」

 

 *****

 

 俺たちはヴァロン城へ乗り込むため、少しでも近いカイエル城から、気球の準備をしていた……

「マスター、準備完了です、いつでも行けます」

「わかった」

 

 カイエル城の城門から、お供を引き連れたラーマイン王とガーマイン、それにメギード王も出てきた。

「待つのじゃ、ギガンティックマスター殿」

「ラーマイン王……」

「今行くのは危険じゃ、張られた罠に、自ら飛び込んでいくようなもの……相手の出方を待ってからでも良いのではないか?」

 

「いえ、アクトの言っていたことが本当なら、アイカは二日もすればモンスター化してしまう……もはや一刻の猶予もありません」

「ならばこちらも全軍で攻撃をしかける、おヌシはその混乱に乗じてアイカ殿を助ければ……」

「それこそアクトの思うつぼです、三国はまだ動かないのが得策です」

 

「しかし……」

「これは俺たちの問題です……俺がもっとしっかりしていれば、アイカが攫われることはなかった」

「マスター……」

 マフユも申し訳ないという顔をして、俯いている。

「これは俺の『けじめ』でもあるんです」

 

「……おぬしの覚悟はわかった、もう止めはせぬ、だが一つだけ約束してくれ、絶対に『死ぬでないぞ』」

「……わかりました」

 

 

「景気づけに、アタシが『タロット占い』をしてやるよ」

 サザバードの七長老の占術長と館長が、タロットカードを片手に話しかけてきた。

 

「占術長、不吉なのが出たらどうするつもりだい?」(小声)

「大丈夫、事前に不吉なカードは抜いてあるよ」(小声)

「そうかい、ならいいよ、さすがだね」(小声)

 ……アナライズで、全部わかっちゃってるんですけど。

 

「じゃあ、好きなカードを一枚引いて、そこに置いておくれ」

 俺はよく切ったタロットカードの中から、一枚を引き、机の上に置いた。

 出たカードは……『吊られた男ハングドマン』……?

 

「げっ……」

「その反応、あまりいいカードではないみたいだな?」

「え、えっと……あれ、おかしいな、抜いたはずなのに」(小声)

「ほら言わんこっちゃない」(小声)

 

「ああ、先程向こうの机に何枚かカードが置いてあったから、私が混ぜておいたぞ」

「ライゴウ……! アンタ余計なことを」(小声)

 

「それで、これはどんな意味を持つカードなんだ?」

「……」

 占術長と館長は、お互いに頷いた後、話を続ける。

「『吊られた男』の意味は……

 徒労、やせ我慢、投げやり、自暴自棄、欲望に負けることを暗示して、

 『頑張る割には成果が出ずに、疲れるだけで終わる』という意味だよ」

 

「そうか……」

「ま、まあ、こんなカードなんて当てにはならないさ」

「そうそう、もう一度引いたらまた違うカードが出るよ、きっと」

 

 俺はまた切り直したタロットカードを、もう一度引いてみる……

「げっ……」

 また『吊られた男』が出た。

「えーっと……同じカードを二回連続で出すなんて、物凄い強運だよ、きっといいことがあるよ、たぶん」

「……そうだな、ありがとう」

 二人は、物凄くばつが悪そうな顔をしている。

 

「じゃあ、そろそろ行くよ」

 俺はくるりと振り返ると、ラーマイン王たちをあとに、ヴァロン城へメンバーたちと出撃する。

 

 *****

 

 『四天王戦世界大会』の時と同じように、ヴァロン大陸の南西、『首都オウコ』に降り立つ。

 ここまでアクト側からの攻撃はなし。

 その必要はないってことか……?

 

 俺はオルタナティブドアを開き、異世界あいどる・はーとのメンバーを呼ぶ。

「全面戦闘になると思うが、最終目的はアイカの救出だ。

 救出が成功したと同時に撤退するから、そのつもりでいてくれ」

「はい」

 

 

 ◆アクトside・ヴァロン城入り口前庭園

 

 ギガンティックマスターと異世界あいどる・はーとのメンバーは、ヴァロン城入り口に立つ。

 

 ヴァロン城入り口前の庭園には、百名あまりの黒い鎧兵が整列している。

 その奥には、三将軍とアクトが、ギガンティックマスターたちを待ち構えていた。

 

「ようこそギガンティックマスター、余の城へ」

「お前の城じゃないだろう、アクト」

 

「もうすぐ、この異世界の全てのものが、余のモノとなる。お前の愛しいアイカもな……」

「異世界も、アイカも、お前の好きにはさせない!」

「いいね、ギガンティックマスター……まさに『正義の味方』のセリフだ……反吐が出る」

「なに?」

 

「正義の味方は、面倒だな……卑怯な手は使えない、ズルもできない、人質を取るなんてもってのほか」

「当たり前だろ、そんなことをして恥ずかしくは無いのか?」

「恥ずかしい? そんなわけねぇだろう……せっかくこの世に生まれて、一度しかない人生、自分の好きに生きて何が悪い?」

「好きに生きるのはいい、だが他人に迷惑をかけるな」

「もう一度言ってやる、『反吐が出る』」

「くっ……」

 

「悪はいいぞ、自分以外はどうでもいい、何のしがらみもない、自分の欲望のまま生きることができる」

「……」

「他人に支配されず、欲しいもの全てを手に入れる……この異世界ならそれが可能だ!」

 

 アクトは、持っていたガントレットを腕にはめ、ギガンティックマスターを睨みつける。

「ギガンティックマスター、お前はオレ様達の計画の邪魔だ、排除させてもらう!」

 アクトは、腰から真っ赤に染まった剣を抜き、ギガンティックマスターに向ける。

「もうすぐお前も、この『デモーニッシュブレード』のように、真っ赤に染めてやるぞ……」

 

 アクトは、黒い鎧兵たちに号令をかける!

「者共、かかれ!」

 わああああーーー

 整列していた黒い鎧兵たちが、堰を切ったように一斉に攻撃してきた。

 

「異世界あいどる・はーと、行くぞ!」

「はい!」

 異世界あいどる・はーとも、ギガンティックマスターの号令で迎え撃つ。

 

 

「アラクネ流操糸術りゅうそうしじゅつ、『エントラップメントウェブ』!」

 バシャアアアァァン!

「うわああっ⁉」

 黒い鎧兵たちは、アラクネのユイが仕掛けた蜘蛛の巣の罠にかかっている!

「みなさん、今です!」

 

 アクトが、腕組みをしながら、メンバー達を眺めている……

「アドバンスドアーツ、『デビルズ・アイ』!」

 ヒィィーーーーン……

 アクトの目が妖しく光る。

「さあて、どんな攻撃をしてくるか……楽しみだ」

 

 

 スレイプニルのモモが、黒い鎧兵を一人捕まえて、空中から急降下する!

「アドバンスドアーツ、『スレイプニルダンカー』!」

 ドガァッ!

 

 体の周りに砂を纏った、砂の民ノノが飛び出す。

「今度は私が! おいで、『デゴちゃん』!」

「バオオオオオオーー」

「砂に代わって、デコピンよ! デゴちゃん、『ゴーレムデコピン』!」

 ドガァァァッ!

 

 ナナも、氷属性の魔法を唱える。

「アドバンスドアーツ、『氷足』! ……からの、『ナナ・インフィニティ&ストライク』!」

 ズガガガガガッ!

 

 『透明薬』をかけた飛翔扇を、フウカが投げる。

「アドバンスドアーツ、『インビジブルブーメラン』!」

 ドガガガガガッ!

 

 メンバー達の攻撃を受けた黒い鎧兵たちは、吹っ飛んだがすぐに立ち上がり、またこちらに向かってくる……

「この黒い鎧兵たち、何度吹っ飛ばしても気絶しないし、立ち上がってくる……まるでゾンビみたい!」

 トーコが、気味悪がりながら叫ぶ。

 

「あきらかに普通の兵士とは違う……でも殺してはダメよ」

 マフユからの指示……しかし為す術がなく、少しずつ後退していく。

 

 

「へっへっへ……これで終わりだと思ったら大間違いだぜ」

 陸軍将・ギンジが詠唱を唱えると、何十体という魔獣を召喚した。

「ギョッギョッギョ……」

「バールバルバルゥ……」

「ブオオオーーーン」

「召喚士、なんて厄介な……」

 

 

「闇の民レイザさん、私に『闇属性魔法』を!」

 ランが、愛槍『床落とし』を構えながら、レイザに協力を求める。

「わかった」

 

 レイザの前に魔法陣が展開……『闇』『闇』『闇』『闇』

「スーレイ・アブトゥル・ラーズ・クルス

 漆黒よ 暗黒よ 暗闇よ 常闇よ すべての闇よ 波のように荒れ狂え

 闇属性クアトログラム、『ダークネスオーシャン』!」

 ランの『床落とし』に、闇属性の魔法が付与された!

 

「行きます、新レゾナンスアーツ、『オロチ』!」

 ガオオオオオオオンッ!

 ランの槍から、八つ巨大な黒龍が飛び出し、敵に襲い掛かる!

 ドガガガガガ……

 

 天空の民アミサーの前に魔法陣が展開……『水』『風』『風』『風』『風』

「大いなるアトランティスの神よ その四方守りし 風の竜 今こそその力解放し 咆哮せよ

 テリブル・コーダ・アーキセクト・スーダオン・カルスト

 大竜巻属性ペンタグラム、『アトランティストルネイド』!」

 

 巨大な竜巻が四本、広範囲を破壊しながら魔獣たちを斬り裂いていく!

 ゴオオオオオオ……

 

「鬼哭流刀殺法、『鬼コンボ』!」

 ズズズズゥゥン!

 剣に炎が付与され、北西と南東の方角に鬼門が現れる。

「行くぞ! 鬼哭流刀殺法 『鬼哭妖炎双牙』!」

 ドドムの双剣から、炎を纏った気力の渦が放たれる!

 ドバアアアアーーーッ!

 

 三人の攻撃で、ほとんどの魔獣を倒した。

 

 

「へへへ、魔獣よ来い!」

 ギンジが詠唱を唱えると、また何十体もの魔獣が召喚される。

「くっ……倒したそばからまた召喚してくる、これじゃあキリがない……」

「魔獣は無視して、まずアクトと三将軍を狙おう」

 ギガンティックマスターの提案に、メンバー全員頷く。

 

 

 セイレーンのカルラが、大きく息を吸い込む。

「アドバンスドアーツ、『デスヴォイス』!

 ア”ア”ア”ア”ア”ア”ーー!」

 物凄いがなり声が、衝撃波となり放たれる!

 

 海軍将・ヤスが、ノートパソコンを片手に技を放つ。

「アドバンスドアーツ、『セキュリティ』!」

 ガシャンガシャン! ビーーーー!

 幾重ものレーザーで、敵の攻撃を防ぐ壁を作った。

「……否⁉」

「この技の前では、物理攻撃はほぼ無効でヤス」

 

「ならこれならどうです? アドバンスドアーツ、『炎の剣』!」

 バオオオオオッ!

 イオナの手が黄色の炎に包まれる。

「『黄炎剣』!」

 ズバアアアアアッ!

 

「アドバンスドアーツ、『ファイヤーウォール』でヤス!」

 ゴオオオオオッ!

 ヤスの前に炎の壁が立ち上る!

「くっ、これは⁉」

 

 アオイの前に魔法陣が展開……『水』『水』『水』『風』

「海神よ 我に力を貸し給え 深淵を除くとき 深淵もまたこちらを見ている 水流よ 全てを飲み込む穴となれ 大渦属性クアトログラム、『メイルシュトロム』」!」

 ドドドドドォォーーーー

 空気中の水分を集めて、巨大な大渦を発生さた!

 シュウゥゥン……

「なっ⁉」

 

「『ファイヤーウォール』のおかげで、四大属性の攻撃も効かなくなったでヤス。パソコンには外からのウイルスに対抗するために、あらゆる防御プログラムが組まれているんでヤス。

 オイラも同じように、外からの攻撃を防ぐため、いろんな防御を組んでいるでヤス」

「物理も魔法も、ほとんど効かないなんて……」

 

 

「ボクの『星語魔術プラネットロア』を見せてあげるよぉ~」

「えっ……あのハヤトって人、『星詠人スターゲイザー』なのぉ?」

 ナナがビックリする、意外だったらしい。

 

「マキ、行くよ!」

「レゾナンスアーツ、『親子の絆アターーック』!」

 

 ハヤトの前に魔法陣が展開……『水』『地』『地』

「レイラント・ファスト・アービス 星屑よ ボクを守る帯となって~

 星屑帯属性ハイアナグラム、『アステロイドベルトゥーー』!」

 ガシンガシンッ!

 

 ハヤトの前に小さな岩が集まって、壁になった。

 ドドガァッ!

「なっ⁉ 私たちの『絆』が、防がれた⁉」

 

 メデューサのクレアは、自分の首にかかっていた石のペンダントを投げた!

「アドバンスドアーツ、『ストーンヘンジ』!」

 石のペンダントは巨大な石柱になり、ハヤトに襲い掛かる。

 

「星の光よ、ボクの拳に宿ってー! 『スターライトナッコー』!」

「ナッコー?」

 ドドドドドッ!

 光り輝く拳で、石柱を全て叩き割った!

「妾の『ストーンヘンジ』が……」

 

「くっ……ふざけた喋り方だけど、ゾディアックビーストを持たずにこの威力、強いわ」

 さすがにマフユも、戦いづらそうにしている。

 

 

 イフリートのイオナが、隙をつきアクトに攻撃!

「アクト、覚悟! ……『炎の剣・黄炎剣』!」

 バオオオン!

「フッ、アドバンスドアーツ『炎の剣・黄炎剣』!」

 ガキィーンッ!

 イオナの『黄炎剣』を、『黄炎剣』で受けるアクト。

 

「なっ……私の『黄炎剣』を……」

 

 後ろからセイレーンのカルラがアクトに攻撃を仕掛ける。

「アドバンスドアーツ、『デスヴォイス』! ア”ア”ア”ア”ア”ア”ーー!」

 

「へへへ……アドバンスドアーツ、『デスヴォイス』! ア”ア”アア”ア”ーー!」

「……⁉ い、否……⁉」

 逆に、カルラが吹っ飛ばされた。

 

「大丈夫、カルラ?」

「是……」

 イオナとカルラは、驚きを隠せない。

 

 

「おいギンジ、あれだ」

「あいよ!」

 

 アクトの前に魔法陣が展開する……『炎』『水』『闇』『闇』『闇』

「死・破壊・罪業・悪を司る暗黒の王よ その目に映るものに災いを 形ある全てのモノよ 混沌に帰せ

 ドゥール・ドーゾ・カタルフィ・666・アンバタルテッド……

 悪魔召喚ペンタグラム、『アーリマン』!」

「ギャッギャッギャッギャ!」

 翼の生えた単眼の悪魔を召喚した。

 

 ギンジの前に魔法陣が展開……『風』『地』『闇』『闇』『闇』

「漆黒纏いし 亡国の騎士よ その首級を王に捧げよ 血塗られた戦場の果てで 歴史は繰り返されるだろう

 アナン・ケイル・シジルド・ヴォーテ・クアッシーニ……

 不死召喚属性ペンタグラム、『デュラハン』!」

「オオオオオーーーン……」

 騎馬に跨る、首のない騎士を召喚した。

 

 

「この黒い靄……この二体、どちらも『瘴気』持ちだわ!」

 二体の召喚獣は、瘴気を纏いながら、メンバーに近づいていく……

「アドバンスドアーツ、『オウカフィールド』!」

 オウカは白い結界を張り、メンバーは全員その中へ。

「両側から挟まれると、動きが制限される……」

 

「一か所に集まって、的が絞りやすくなったぜ」

 アクトが剣を構えて、集中する。

「ハッハッハー行くぞギガンティックマスター、『鬼コンボ』!」

 ズズズズゥゥン!

 アクトが叫ぶと、その剣は炎に包まれ、北西と南東の方角に鬼門が現れる。

「そんなバカな⁉ 『鬼哭流刀殺法』は門外不出の鬼の民の秘技、なぜお前が使える⁉」

 

「余のアドバンスドアーツ、『デビルズ・アイ』は、視認した相手の技をコピーして、自分の技にすることができるのだ。まあ、今のこの戦闘中に限ってのことだがな……」

「そんなことが……」

 

 アクトは炎を纏った剣を構えて、ギガンティックマスターに向かって技を放つ。

「鬼哭流奥義、『鬼哭妖炎双牙』!」

 

「みんな下がれ!」

 ギガンティックマスターが前に出て、『対斬撃結界』を張る。

 バリーーーンッ!

「うわあぁっ!」

 

「大丈夫ですかマスター⁉」

 アクトの技は、オウカフィールドを破り、『対斬撃結界』も割り、ギガンティックマスターを吹っ飛ばした。

 

「ハハハハー! どうだ! 思い知ったかこの偽善者め! 今とどめを刺してやるぞ!」

 アクトが、とどめを刺しに突撃してくる。

 

「……残念だったな」

 ボワワワ……

「なに? 誰だお前は⁉」

 ギガンティックマスターと思われた男は、変装が解け、騎士の姿に。

 

「私はファルセインの百騎士『法螺吹きのエリア』……

 私のアドバンスドアーツ、『模写』の力と演技力、とくと見たか!」

 

「『模写』……? あのリンカって女と同じ技か、小癪なマネを」

 アクトは突撃を止め、ギガンティックマスターを探す……

「ということは、本物のギガンティックマスターは……」

 

「マスターはすでにアイカの元へ行っているわ、今から追いかけてももう遅い」

 マフユがアクトに言い放つ。

 

「フッ……それで余を出し抜いたつもりか?」

「なんですって?」

 

「余のクラスは『悪魔崇拝者サタニスト』……

 自分のレベルに応じた悪魔を召喚、使役することができる。

 アイカには、既に余が召喚した『従属悪魔』を憑依させてある」

「『従属悪魔』を……憑依……?」

 

 マフユがアイカが囚われている踊り場の方を見上げると、すでに『飛翔魔法・スカイグラインド』で近づいているギガンティックマスターがいた。

「マズい、このままじゃマスターが……」

 

「どれ、奴の泣きっ面でも拝んでくるとするかな……

 アドバンスドアーツ、『イービルウイング』!」

 アクトが叫ぶと、背中から蝙蝠の様な黒い翅がはえた。

 バサッバサッバサ

 

「くっ……待って、マスターーー!」

 

 

 〇俺side

 俺は百騎士エリアに囮になってもらい、

 城の裏手から、『飛翔魔法・スカイグラインド』を使って、アイカの元へ。

 

 この先、俺はまた記憶が飛んでいてよく覚えていない。

 アイカやマフユ、その他の人たちの話をまとめたものとなる。

 

 

「何とか気づかれずに来れた……アイカ待っていろ、今助けるからな」

 俺は踊り場の横から侵入し、気絶しているアイカの元へ。

「大丈夫かアイカ、今抑制を壊すから……」

 

「マス、ター……?」

「おお、気が付いたかアイカ」

「はい、ウフフ、ありがとうマスター……」

「アイカ……?」

 

 気が付いたアイカは、横にあったアイカカリバーを持つと、そのまま俺に向かって剣を突き出す!

 ドスッ!

 

「ぐふっ……がっ……」

 アイカの『アイカカリバー』が、俺の腹部に突き刺さる……

 

「マスターーーーーーッ!!」

 マフユの悲痛な叫び声が、空にこだまする。

 

 俺は腹部を刺されたまま、後ろに倒れそうになる……

 大量の血が噴き出し、意識が朦朧とする……俺は死を覚悟する。

 

(いや、まだだ、まだ死ねない!)

 俺は最後の力を振り絞り、上体を起こす。

 

「アイカーーーーーーッ!」

 真っ赤に染まった両手で、アイカの頬に触れる……

 

「俺の命をやる……だから、帰ってこい! アドバンスドアーツ、『転魂術』!!」

 

 カァッ!

 俺の体から光る球のようなものが飛び出し、アイカの体へ吸い込まれていく……

 

「『転魂術』⁉ アイツ一枠あったアドバンスドアーツの枠、『転魂術』にしたのかギャウ!」

 一部始終を見ていた神魔が、俺とアイカを見て叫ぶ。

 

「現実世界のコンサートに行って、握手会で『新堂アイカ』に逢ったのは、このため⁉」

 マフユも一緒に叫ぶ。

 

 

 俺はそのまま力尽き、城の踊り場のふちから落ちてしまう。

 その時、足だけが引っ掛かり、俺はまさにタロットカードの『吊られた男』のように、宙ぶらりの状態に。

 

「ヒイイィィーーー……」

 アイカに憑依していた悪魔が、アイカの体から逃げ出していくのが見える……

「あ、あああ、あああああ……」

 魂が戻ったアイカは、自分がしてしまったことを、走馬灯のように思い出してしまう……

 

「わ、私が……マスターを……そんな、そんな……」

 真っ赤に染まった両手、頬や額にも俺の血が……

 アイカはそれらを見て、小刻みに震える……

「この手で、私が、マスターを……」

 

 空中に浮かんで、俺とアイカを見ていたアクト。

「よくやったアイカ、魂が戻ってしまったのは想定外だったがな……ハーハッハッハ!」

 アクトの前に魔法陣が展開する……『水』『地』『闇』

「ヴィービル・ガゾッソ・ガルガナ・チュアルス

 闇の眷属 悪の眷属 我と同調し 我の衝動に応えよ……

 悪魔召喚ハイアナグラム、『グレムリン』!」

 

 ブワワワワ……

「ヒーー、ヒーーーー!」

 アクトは、従属悪魔を十体召喚した。

「余の従属悪魔よ、その女を捕らえろ!」

「ヒーーーーッ!」

 

 アイカの周りに十体いた従属悪魔たちは、一斉にアイカに襲い掛かる!

 その時、アイカの周りに、光り輝く十本の剣が出現する。

 シュインッ!

 

「あれは……まさか『剣閃けんせん』⁉」

 それを見ていたマフユが驚く。

 

「いやああああああああああああああああーーーーッ!」

 アイカの悲痛な叫びに呼応して、十本の光輝く剣は、周りの十体の従属悪魔に突き刺さる!

 ドスドスドスドスッ!

「ヒッ、ヒィーーーー……」

 アクトの従属悪魔たちは粉々に消え去る……

「なんだとっ?」

 

 光り輝く剣は、そのままアイカを抑制していた足場を破壊、アイカはその場でまた気を失ってしまう。

 

「今のうちだわ、モモ、来て!」

 マフユはスレイプニルのモモに乗り、空を翔け、アイカと俺を回収する。

 

「くそっ、なんだ今の剣は……」

 アクトも空を飛翔し、マフユを追いかける。

 

「『サジタリアスシュート』ッ!」

 バシュンッ!

「うおっ、危ねぇッ!」

 

 

 モモに乗ったマフユは、上空からメンバーたちを先導する。

「みんな、撤退よ! 急いで!」

 マフユの号令で、全員撤退を始める。

 

「逃がすかよ!」

 アクトと三将軍は、逃がさないよう追いかけてくる。

 

「クレア、お願い!」

「妾に任せるのじゃ」

 

 メデューサのクレアが、自分のアイマスクを取る……

「マズい、アイツの眼を見るな!」

 アクトが全員に叫ぶ!

 

「『メデューサ・アイ』!」

 ザザザアアアアァァァ……

 残っていた魔獣たちが、全部『風化』していく……

 

 アクトと三将軍が、目を開くと、すでに異世界あいどる・はーとのメンバーは全員いなかった……

「あっぶねぇ……」

「くそ、取り逃がしたか……」

「まあいい、予定通りギガンティックマスターは無力化した……後はどうとでもなる」

 ギンジとアクトが、少し悔しがりながらも、不敵な笑みをこぼす……

 

 *****

 

 ◆現実世界『清流会病院』・サモンロードside

 

 病院の一室で、サモンロードと病院の先生が、話をしている。

「今のところ病状は安定していますが……」

「そうですか……」

 

 トントン

 サモンロードが、病室のドアをノックする……妹の病室らしい。

 ガチャ

「あ、お兄ちゃん」

「ゴメン瑠美るみ、寝るところだったかい?」

「うん……でも看護師さんがいなくて」

「そうか……大丈夫、僕がずっといるよ、このまま寝るといい」

「わかった、ありがとうお兄ちゃん」

「ああ」

 

 そのまま妹の手を握り、妹の顔を見ながら、眠るのを待つサモンロード。

 病院の医療器具の音だけが、病室に響いていく……

 ピッ、ピッ、ピッ……

 

 

 ◆現実世界『鳥海商事』・コズミッククイーンside

 

「申し訳ありませんでした、部長」

「困るよ黒田君、君に頼んだ私の立場もね……」

 

 会社の部長とコズミッククイーンが話している奥で、他の女性社員たちが噂話をしている……

「ヒソヒソ……お局さま、また叱られているよ、自分は悪くないのに」

「きっとマゾなのよ、ドМ……クスクス」

 

 部長との話が終わったコズミッククイーンが、自分の席に戻る。

 すると一人の女性社員が近づいてきた。

「黒田さん、この後新人社員の歓迎会をするんです、行きませんか?」

「ごめんね、部長に残業を頼まれて……私に構わず、楽しんできて」

「そうですか、それじゃあ……」

 そう言って、女性社員たちは会社をあとにする。

 

 コズミッククイーンは一人、会社のパソコンで作業を続ける。

 カタカタカタ……

 オフィスにパソコンの音が響く……

 

 いつの間にか、外は雨が降り始める。

 オフィス街に降り始めた雨が、どんどん激しくなり、パソコンの音をかき消していく……

 ザアアアアアア……

 

 

 ☆今回の成果

  ラン レゾナンスアーツ『オロチ』習得

  俺 アドバンスドアーツ『転魂術』習得


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