第三十四話 同盟締結
アナタはアイドルに『触れられないもの』と名付けたことがありますか? ……俺はある。
俺は今の戦闘で使い魔をやっていた四人をスカウトして、名前を付けさせてもらった。
「『炎の精霊イフリート』のイオナです。炎のことなら任せて下さい」
炎の上位精霊……その実力やいかに。
現実世界の『大城 衣緒奈』は、『あいどる・はーと』の癒し系担当。
みなさん気を付けて! この子の『癒しのオーラ』は大変危険です! 一度ハマると、二度と抜け出せなくなる恐れがあります!
「木の精霊トレントのミソラとマキです、親子です」
「違います」
「……アハハハ」
さすがの俺も苦笑い。
現実世界の『石垣 未空良』は、『あいどる・はーと』の歩くコミュニケーションツール。
どんな相手とも瞬時に仲良くなることができる特殊能力を持つ。
座右の銘は『光陰矢の如し』、やりたいことは我慢しない!
現実世界の『蔦井 茉希』は、『あいどる・はーと』のみんなの妹担当。
メンバー最年少で、やることなすこと全部が可愛い反則級の見た目。
そのポテンシャルは無限大、ただいま成長期&反抗期真っ最中!
「妾は『メデューサ』のクレアと申すもの……以後お見知りおきを」
見たものを石にすることができる魔物『メデューサ』。
魔力が戻ってから、本当のチカラはまだ見せていない……
現実世界の『渡邊 久玲愛』は、『あいどる・はーと』の目ヂカラナンバーワン。
顔の半分が「目」なんじゃないかと思うくらいの、クリクリの大きな目が特徴。
彼女のあの目に見つめられて、恋に落ちない男子はこの世に存在しないでしょう。
「彼女たちも『異世界あいどる・はーと』の新メンバーだ。
みんなそれぞれ事情があって使い魔をやっていたが、その実力は折り紙付きだ、みんなよろしく」
「はい」
「新メンバーの呼び名なんかがあったら便利なんだけど……みんな今まではなんて呼ばれていたんだ?」
「私たちは魔界の使い魔の中でも、『アンタッチャブル』と呼ばれていました……」
「『アンタッチャブル』……『不可触民』か」
現実世界のインドのカースト制度最下層の奴隷も、『不可触民・アンタッチャブル』と呼ばれていた『触れてはいけないもの』という意味らしい。
「俺は実は『アンタッチャブル』って言葉、そんなに嫌いじゃないんだ」
「最下層の奴隷なのに……ですか?」
「『触れてはいけないもの』なんて逆にかっこいいじゃん!
『強くて触れられない』『高貴すぎて触れられない』『美しくて近づけない』……アイドルとはかくあるべきだと思うんだ、そうだろ?」
「あい……どる?」
「だからお前たち八人はそのまんま、『異世界あいどる・はーと』の『アンタッチャブルズ』と命名する」
わーーーーパチパチパチパチ。
そんな話をしていたら……南の方から土煙が上がっている。
豪華な椅子を設置した神輿に乗った女の魔族が、大勢の男性魔族に担がれながらやってきた。
背中に黒い羽、口には牙、小悪魔的な格好をした魔族……
「オーホッホッホ、アタシは『トロメア級』の『蝙蝠魔族』……アタシを出し抜いて吸血鬼族を復興するなんて言っているのは、どこのどいつかしらーー?」
俺とミコトは顔を見合わせた。
聞いたことのある声と喋り方、まさか……
「げっ⁉ まさかお前……いや、貴女は、姫⁉ 生きておいででしたか」
……あいつ、ミコトの顔を見て「げっ⁉」って言いやがった。
「久しぶりですね、ヴェルマリア……元気そうで何よりです」
「まさか、吸血鬼族復興は貴女が……?」
「そうです」
「そ、そうでしたか……確かに貴女が復興するというのなら、筋は通りますわね……ですが、豪族であるアタシたちをないがしろにして復興とは、いかがなものかしら?」
「ではどうしろと?」
「アタシを貴女の国の重要な役職に就かせてもらおうかしら……何せアタシは『トロメア級』ですから、オーホッホッホ」
「お断りします……また裏切られて、責任を擦り付けられても困りますから」
「な、なんですってーー!」
神輿を降りてきた蝙蝠魔族は怒り心頭、取り巻きの男性魔族に八つ当たりを始めた。
「貴女は昔からいつも、そうやってアタシを上から見下して、気に入らないったらありませんわ」
そう言いながら男性魔族をゲシゲシ踏みつける。
「ぐっ……ぐはっ」
「おやめください蝙蝠魔族さま、その者は先日も蝙蝠魔族さまの八つ当たりを受け、腕を骨折したばかり……蹴るなら私を」
「ああ? 『カイーナ級』のくせにアタシに意見する気ですの?」
「いえ、滅相もない……」
「おい、誰かこいつの『舌』を切りなさい」
「えっ」
「聞こえなかったのですか? こいつの『舌』を切り落とせ!
そして骨折しているこいつは処刑よ……アタシの蹴りに耐えられず声を上げるなんて情けない」
「そ、そんな」
「早くしなさい! それともお前たちも、こいつらと同じような目に合いたいのかしら?」
「ううぅぅ……すまん」
そう言いながら、他の魔族たちが二人の魔族を押さえつけている……
「オーホッホッホ、それでいいのよ、お前たち『カイーナ級』に人権などないのよ! 恨むなら『カイーナ級』に生まれてきた、自分の運命を恨むのね……オーホッホッホ」
「ヴェルマリア……アナタは変わっていませんね」
今まさに舌と首を切られそうだった二人の魔族を、ミコトが助けていた。
「今でもそうやって弱きものをいたぶって、貶めて、楽しんでいるのですね」
「なんですの、偉そうにもう王様きどりですの?
でもこういうことをしているのは、アタシだけではありませんわ……魔界中をごらんなさい、みんなしていることですの、アタシだけが責められる言われはありませんわ!」
「そうですね、これこそがこの魔界の変えなければいけないところ……ですから私が、この魔界を変えてみせます」
「そんなことできるわけないですわ!」
「私にはできます……マスターと、私のこの技があれば」
ズズズズズ……
今まで感じたことがないほどの魔力の高まり……
ミコトの目がさらに赤く光っている。
「あなたには特別に見せてあげましょう……魔王となった私の『七獄』を」
「お、お前たち、アタシを守りなさい!」
蝙蝠魔族は、取り巻きの魔族たちを自分の前に立たせ、後ろに隠れている……
「そ、そんな……蝙蝠魔族さま」
「ご安心を、この技はダメージを与える技ではありません。
そして、すでにヴェルマリア、私はアナタを『ロックオン』しています」
ミコトの目には、蝙蝠魔族だけが映し出されている。
「さあ、その身で受けなさい……吸血鬼族の七獄、『エナジードレイン』!」
オオオオオオオ……
「ひ、ひいいぃぃ」
黒い魔粒子が蝙蝠魔族の周りに纏わりつき、そのままミコトの元へ戻っていく……
「ハ、ハハハハ……何もないではありませんか、焦って損しましたわ」
「いいえ、しっかりと効果はありました。
今の技でアナタのレベルを『三十』奪い、私に上乗せしました……残念ですが、アナタはもう『トロメア級』ではなく、『カイーナ級』に落ちてしまいました」
「は? な、何を言っているんですの? そんなわけ……」
「ならば、『トロメア級』の六獄を使ってみて下さい」
「そ、そんなの簡単ですわ、四の獄・『黒曜』! ……あれ?」
蝙蝠魔族には何も起こらない……
「お、おかしいですわ、三の獄・『堕天』!」
し~ん……
「そんなバカなことが……アタシ、本当に『カイーナ級』に……?」
「蝙蝠魔族さま……いや、お前、本当に『カイーナ級』になったのか?」
「ギクッ!」
蝙蝠魔族の取り巻きの、男性魔族たちの様子が変だ……
「俺の恋人は、お前より可愛いからという理由で処刑された……」
「私の父は、お前の前を横切ったというだけで、両目と両足を潰され、今も家で寝たきりだ……」
「今まではトロメア級だったから、命令には一切逆らえなかったが、本当にカイーナ級に落ちたというのなら……」
「ち、ちょっと、落ち着きなさい……これは何かの間違いよ、そうに決まっているわ!」
ミコトが蝙蝠魔族に囁く……
「転移者たちの世界に『正負の法則』というものがあります。
『良いことがあれば悪いことが、悪いことがあれば良いことが交互に繰り返される。自分さえよければいい、と他人を不幸にする者は、必ずその報いを受ける』……まさに自業自得、アナタにかける言葉はありません」
「そ、そん……」
取り巻きの男性魔族たちが、みんなで蝙蝠魔族を連れていく……
「な、なに? どこへ連れていく気? アタシを誰だと思っているの……」
「いいか、絶対に殺すなよ……こいつにはこの世のすべての地獄を味わってもらうんだからよ……」
「ま、待って……いや、いやあああああああぁぁぁぁーー」
今の蝙蝠魔族の悲鳴、魔界中に響きわたったようだった……
とりあえず一人目の豪族はクリアかな?
「今までの戦いは全て、鏡の魔法『ミラーコネクト』で魔界中に中継していました。
先ほどの七獄『エナジードレイン』は、魔族の立場からすると『脅威』そのものだったでしょう……」
「そうだな、レベルや階級で全ての優劣が決まる魔族にとって、『エナジードレイン』は最悪最凶の技だろう。今のをリアルタイムで見たのなら、他の魔王や魔族が黙っているわけはない」
メルフィスの作戦も、ミコトの『魔界を変えて見せる』っていうセリフも、なんか現実味を帯びてきた気がする……
*****
「さて、最後の豪族って奴も来るかな?」
「来るでしょう……『魔剣魔族』はこの辺り一帯を仕切っている大物。その強さもかなりのものです」
「やっぱり『魔剣』を使うのか?」
「はい……『魔剣』は相手を呪ったり、斬った相手のチカラを削ぐことができます。魔剣魔族は、その魔剣を自分で作ることもできるのです」
「自分に合った魔剣を作る……もしくは相手の嫌がる効果の魔剣を作ることも可能ってわけか、手強そうだな……」
しばらくすると、北の方角から色んな武器を携えた魔族たちが現れた。
「僕の街のすぐ近くで、好き勝手暴れているのは、君たちかな?」
魔族たちの中から、屈強なドラゴンに乗っている魔族が話しかけてきた、こいつが『魔剣魔族』……?
「お、おまっ……」
俺とメンバーたちは、思わず吹き出しそうになった口を押さえた……
そう、魔界の実力者、『魔剣魔族』はなんと俺の『弟』にそっくり!
間違いない、こいつ弟のドッペルゲンガーだ。
「ギガンティックマスター、メンバーのみなさん、どうかしたのですか?」
事情を知らないメルフィスはキョトン顔。
「弟のドッペルゲンガーは、魔界にいたんだな……」
「君たちがここで国を興せば、すぐ近くの僕たちの街は、必ず戦争に巻き込まれる。僕は魔界の王が誰になろうと知ったことじゃない……だから君たちが国を興す前に倒してしまえばいい、そう判断した」
なるほど……争いごとが嫌いな『弟』と同じような考え方だ。
魔族とはいえ、弟と同じ顔したこの魔剣魔族と戦うのは、少し気が引ける……
まてよ、生まれ育った環境などは違っても、基本的な性格や弱点なんかは変わらないはず……
「ちょっとカマをかけてみるか……」
俺はみんなの武装を解き、一人魔剣魔族の前に歩いていく。
「俺は『転移者』だ、アナライズでお前のことは何でもわかる。
お前はたぶん乗り物が苦手だったはずだ、そのドラゴンの乗り物は大丈夫なのか?」
「な、なんでそんなことを……⁉」
「ザワザワ……そう言えば魔剣魔族さま、前の車輪付きの乗り物はすぐに降りていたな……」
「虫とかも苦手だったと思うが、その足元の虫は平気なのか?」
「え⁉ どこどこ? うえ~~!」
「ザワザワ……今のリアクション、本当に虫が苦手だったのか……」
「好みの女性はボーイッシュな子、短髪で背の低い子だったよな?」
「そ、それは……」
「ザワザワ……そう言えば最近の側近は、みんな短髪で背の低いボーイッシュな子ばかり……」
「待て待て待て、それは今関係ない!」
うーん、やっぱり現実世界の弟と、中身はほぼ一緒みたいだな。
「お、おいアンタ! デタラメなことばっかり言うんじゃない!」
「いいのかそんなこと言って、二歳までおねしょしていたことバラしちゃうぞ」
「な、な、な……」
「ヒソヒソ……やっぱりあの噂は本当だったのか……魔剣魔族の母どのに相談されたことがあった……」(小声)
「お、お前! もう怒ったぞ……僕が本気になれば、『魔剣』のチカラを使って、こんな街廃墟にすることだってできるんだからな!」
「なんだと?」
ゴゴゴゴゴ……
「うっ……な、なんだこの威圧感」
「おい『魔剣魔族』、俺を本気で怒らせるな……」
「う、ううぅぅ……なんだ? なぜかこの人は本気で怒らせてはいけないような気がする……」
「ザワザワ……魔剣魔族さま……」
「わ、わかった……僕たちの街を戦争に巻き込まないと約束するのなら、建国を認めよう……どうだ?」
「よし、それでオーケーだ」
俺と魔剣魔族は固く握手を交わした。
「凄いですギガンティックマスター……あの魔剣魔族を説き伏せてしまうとは。一体どんな魔法を使ったのですか?」
「いや、今回のは魔法じゃなくて……そうだな、『威厳』かな」
「『威厳』……ですか?」
「そう、『威厳』」
俺はドヤ顔。
*****
魔剣魔族が自分たちの街に戻るのとすれ違いに、またドラゴンの乗り物に乗った魔族が街にやってきた。
「お? また魔族が襲撃に来たんじゃないか?」
「いえ、あれは……」
今まで来た豪族や、町の要人とは違う、ちゃんと鎧を装着した兵士……?
「来たようです、『邪尾族』の兵が」
「フム……あの映像を見て、どんな反応かな?」
邪尾族の兵士は、移動用のドラゴンから降りると、書状を開きながら話し出す。
「我らが邪尾族の王が、吸血鬼族の王と『同盟』を結びたいとご所望です」
よしきた、『同盟』のお誘いだ。
「ひいては、吸血鬼族の王と、その配下のものを、邪尾族の城へ招待したいとのことです」
「予想通り来たな、メルフィス」(小声)
「はい、ここまでは順調です」(小声)
「ワタクシは執事魔族のメルフィスと申します、王のご招待、謹んでお受けします」
俺たちはその邪尾族の兵に連れられ、邪尾族の王城へ
魔界に来たときに通ってきた丘を過ぎ、その先にある邪尾族の王城……
禍々しい漆黒の城壁、やたらデカく、権力を見せつけるような城だ。
そのまま巨大な門をくぐり、広間を抜け、俺たちは玉座の間へ。
巨大な扉を開け、玉座の間に出ると、何百人という魔族たちが俺たちを待っていた。
「ガフッガフッガフッ……」
「グルルルル……」
「ニヤニヤニヤ……」
突然魔族たちの真ん中がザァーーと開き、玉座まで道ができた……
俺たちはその道を歩いて、邪尾族の王の前へ。
「こいつが、邪尾族の王……」(小声)
【邪尾族王】……
五メートルはあろうかという巨大な体躯に、腕が四本、額には第三の眼が……
「あれが『邪眼』か」(小声)
玉座の後ろには、立派な十本の尻尾が動いている……
邪尾族は、尻尾の数・色・形で階級が決まるらしい。
ほおづえをつきながら、俺たちを睨みつけている。
「そこの女、お前が吸血鬼族の新しい王か?」
「そうです、名はミコトといいます」
「そっちのニンゲン……お前は『六芒星魔術』を使っていた奴だな?」
「ああ……アンタが邪尾族の王だな?」
「ニンゲン! 我らが王になんと無礼な!」
横にいた大臣風の魔族が、腰にある剣の柄を握る……
「構わん……魔族とニンゲンは元々敵対関係にある、今更媚へつらってきても、かえって気味が悪い」
大臣風の魔族は、納得いかない顔をしながらも、剣を納める。
「我々邪尾族が地上に放った先行部隊は、ことごとく作戦失敗に終わったようだが、吸血鬼族の王と、『六芒星魔術』を使えるニンゲンと同盟を結べるのなら、それで良し、というところだな」
俺はちょっと試しに、邪尾族王をアナライズしてみた。
ザッザザァーーーー……
まるでテレビの砂嵐のように、ステータス画面が乱れて内容がまるで確認できない。
邪尾族王の口が、ニヤリと微笑む
「余に『アナライズ』しようとしても無駄だ……この『邪眼』で、精神系の技は全てジャミングできる」
「他の魔族を読心しようとしても無駄だぞ、邪尾族王さまのジャミングは、この部屋全体に広がっているからな」
さっきの大臣風の魔族が、得意げに話す。
「さて、吸血鬼族の王よ、お前が国を興した目的は何だ?」
ミコトは俺と顔を見合わせ、そしてメルフィスとも顔を見合わせ、お互いに頷く。
「私の目的は……吸血鬼族の国を復興させることにより、この魔界に拮抗状態を作り、魔界統一戦争を長引かせる、もしくは地上侵攻をやめさせる、というのが目的です」
ザワザワ……「なんと、そんな理由で……」
ザワザワ……「自分の欲のためではないのか……」
「なるほど……おおかた魔族の地上侵攻を防ぐために、裏でニンゲンが糸を引いているのであろう?」
(げっ……バレてる)
「だとしたら……何か問題でも?」
「……問題はない。余は地上などどうでもいいからな、この『魔界統一戦争』に勝利することが最優先だ」
邪尾族王は立ち上がり、玉座を降りてきて、俺たちの前へ。
「このままいけば、我ら邪尾族の敗北は目に見えている……余は利用できるものは何でも利用する、たとえそれがニンゲンであってもだ」
そう言って、邪尾族王はまた玉座に戻る。
「そのため我らと『同盟』を……ともに魔角族を倒すために!」
「……わかりました」
「うむ、ではここに『邪尾族』と『吸血鬼族』の同盟締結を宣言する!」
わあああぁぁーーーーパチパチパチ
とまあ、ここまではうまくいったけど……
メルフィスが前に出てきた、邪尾族王に提案があるようだ。
「同盟の証として、ワタクシたちで【魔脈】を攻略しましょう」
「! ……ほう」
ザワザワ……あの『魔脈』を……
なんだ? 急に周りがザワザワしだしたな。
「あの『魔脈』を攻略できたのなら、お前たちの望みは全て叶えてやろう。
余の兵を千人貸してやる、好きに使うがいい」
「ありがとうございます邪尾族王」
こうして俺たちは邪尾族の玉座の間を後にした……
「ふう、緊張したなぁ……でも計画通り、何とかなったな」
「申し訳ありませんギガンティックマスター、ワタクシの独断で、『魔脈』を攻略することになってしまい……」
「それは構わない、邪尾族たちのあの反応……あれで一気にこちらに流れが傾いたからな。
それよりメルフィス、邪尾族の王は野蛮で粗暴な性格って言ってなかったか?」
「申し訳ありません……おそらくあの大臣が参謀となり、邪尾族王に知恵を授けているのでしょう。ワタクシが以前見かけた時には、あの大臣はいませんでした」
「だとすると、邪尾族王を丸め込むってのは難しそうだな」
「そうですね、今後どのような手を使ってくるか……」
「それはそうと、『魔脈』ってのは何だ?」
「『魔脈』とは、地上で言う『地脈』と同じようなもので、魔界の地下を循環している魔力エネルギーのことです。この『魔脈』の上にいると、絶えず魔力が供給され、魔力切れを起こすことがありません」
「『魔奪の鞭』でイオナの魔力を奪っていた、『毒爪魔族』みたいになれるってことか」
「そうです、しかも自分の実力以上の魔法を使うことも可能となります」
「魔導士にとっちゃ、夢のような場所だな」
「この魔界の丁度中央付近に、巨大な『魔脈』が存在し、その上に敵側の『魔角族』の要所があります」
「なるほど、俺たちでその要所を攻め落とそうって寸法か」
「どちらにしても、この『魔脈』を攻略しないことには、邪尾族の敗北は必須。このままの状態で『魔角族』に攻め込まれれば、我々も無事では済みません」
「逆を言えば、そこを攻略できれば吸血鬼族と俺たちのお株は爆上がり、『天下三分の計』も成就しやすくなる……と」
「その通りです」
「そうと決まれば『善は急げ』、さっそく部隊を編成、作戦を立てて、ちゃちゃっと攻略しちまおう」
「油断は禁物です、『魔脈』を統括している司令官は、『魔角族』の王の息子、つまり魔角族の皇子です」
「魔角族の皇子が司令官?」
「はい、魔界全土でも三本の指に入るほどの魔力の持ち主で、魔角族王と同じ『ジュデッカ級』です。『闇に愛されしもの』という異名を持ち、『闇のエレメンタルトーカー』でもあります」
「そんな奴が、魔力が無限に湧き出る『魔脈』の上にいたら、もう無敵じゃん⁉」
「ですので、今まで邪尾族も手が出せなかった要所なのです」
「そんなの俺たちで何とかできるのか……?」
◆邪尾族王side
邪尾族城の玉座の間、今は人払いをして邪尾族王と大臣の二人……
「あれが前の吸血鬼族王ガウスの娘か。
小賢しいニンゲンの言うことなどを真に受けおって……」
「ですがあの『七獄・エナジードレイン』は、我々魔族にとって脅威に他なりません」
「確かにそうだ……」
「加えてあのニンゲン、『六芒星魔術』を使えるものは、魔界でもほとんどいません」
「なぜニンゲンが……忌々しい」
「あのまま放置しておけば危険極まりないですが、味方として利用するのであれば、こんなに有益なものはいないでしょう」
「そうだな、しかも自ら『魔脈』を攻略すると言ってきた……これは願ってもない」
邪尾族王が指を鳴らすと、女性の魔族が酒が入ったグラスを持ってきた。
「やつらが『魔脈』を攻略できたのなら、それはそれで良しとして、失敗したとしても、魔角族と吸血鬼族は相当疲弊するはずです」
大臣も女性魔族から酒のグラスを受け取る。
「我々はそのうしろに本隊を率いて、魔角族と吸血鬼族共々潰してしまえばいい。フフハハハ」
「利用するだけ利用して、その後で亡き者にすれば、我ら邪尾族は安泰です」
邪尾族王と大臣、二人とも持っていた酒を飲み干す。
「魔界の王『魔界王』の称号……もうすぐ我が手の中に! フハハハハハ……」
☆今回の成果
『イフリート』のイオナが仲間に
『トレント』のミソラが仲間に
『トレント』のマキが仲間に
『メデューサ』のクレアが仲間に
ミコト 七獄『エナジードレイン』習得
『邪尾族』と同盟締結




