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異世界で「あいどる24」作りました。  作者: みっど
第八章 魔族編
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第三十二話 並列思考


 アナタはアイドルに『速すぎ』と怒ったことがありますか……俺はある。


 俺とミコトとアキラが『マオウクロニクル』を手に入れた頃、異世界のファルセイン城では……


 ◇執事魔族メルフィスside


 ワタクシと『異世界あいどる24』のメンバー、メギード王と大臣と騎士たち……ワタクシの淹れた紅茶を飲みながら、結構な時間経ちましたが……


 メンバーの一人、アイカ様がそわそわし始めました。

 「もう二時間近く経つわ……マスターたち、大丈夫かしら」

 「サキュバスのアキラ様の話だと、過去の記憶を順を追って遡るとおっしゃっていました。そろそろだとは思いますが……」


 この国の王だというメギード王が、歩いてワタクシのそばに。

 「……ギガンティックマスター殿には悪いが、オレ様はまだお前のことを信用したわけではない。お前がオレ達の味方になったフリをしている可能性もあるからな」

 「メギード王……」

 「いえ、構いません……それぐらい、疑ってかかるぐらいが丁度いいでしょう」


 その時!


 ズガーーーン!

 「な、なに!?」


 「うおおおおお!」

 「あれは!?倒したはずの『黒杖魔族』!?」

 「ふうううう、おのれニンゲンめ~、この私に、こんな深手を負わせおって……」


 「あの攻撃を受けて無事だったとは……」

 黒杖魔族の左腕が一部欠損していて、回復している途中にみえる……

 「……自分の腕を食べて『悪喰アクジキ』を発動させたのですね、なるほど」



 「くっ、みんな下がれ、あいつの相手はオレ様がする!」

 メギード王が剣を構え、黒杖魔族に対峙する……

 「ニンゲンがぁ……貴様など相手になるか!一の獄・『魔眼マガン』!」

 黒杖魔族の目が光る。


 「くらえ!『ロッドラッシュ』!」

 黒杖魔族の、杖による目にも止まらぬ連続攻撃!

 「うおおお!?」

 メギード王は攻撃を受けるので精いっぱい……


 「こいつ、魔導士タイプのくせになんて威力とスピード……ギガンティックマスターが言った通り、本当に千騎士並みの戦闘力かもしれん」

 「メギード王、黒杖魔族さまは『魔眼マガン』で先を読み、アナタが攻撃を受けづらい個所を狙っているのです」

 「そんなことまでできるのか」

 初めての魔族との戦闘、しかも『アンテノーラ級』とくれば、メギード王の方が俄然不利……


 「おおおおおお!」

 メギード王が気力を高めている……大技を出すつもりですね!


 「フッ、奥義『パラディンブレイク』か……」

 「なっ!?」

 「この位置でもその奥義、放てるのかな?」

 黒杖魔族は移動し、大臣や避難していた一般市民の前へ……

 「クッ、この位置でパラディンブレイクを撃ったら、大臣と市民たちが……」


 「どうやら『魔眼マガン』で未来を先読みされたようですね」

 「くそっ、このままじゃ……」



 「みなさん、ここはワタクシにお任せください……みなさんの不安も多少は払拭しておきたいので」

 「メルフィスさん?大丈夫なの?」


 ワタクシは一人、黒杖魔族の方へ。


 「てっきり死んだと思いましたのに、しぶといのですね」

 「アンテノーラ級の私を舐めるなよ……今までの会話、聞こえていたぞ……この裏切り者め!」


 「まあ、その通りでございます……が、

 ワタクシは元々魔族と人間のハーフです、どちらの味方をしようが、それはワタクシの勝手です」

 「なんだと、この恩知らずが!」


 「それに、人間のギガンティックマスターは、ワタクシのことを一人前の人として見てくれています。どこかの誰かのように、ワタクシを奴隷か道具のように扱うことはありません」


 「貴様……使い魔のくせに言うようになったな!」


 ワタクシは自分の武器である『レイピア』を抜き、構える。

 「魔法剣『パイロレイピア』!」

 ボウッ!

 ワタクシのレイピアに、炎が付与される……


 「貴様、『魔法剣』使いだったのか……」

 「その通りです黒杖魔族さま、そして……一の獄・『魔眼』!」

 ワタクシの眼が光る。


 「黒杖魔族さま、アナタの次の一手が見えます」

 「やかましい!分かったからなんだというのだ、死ね!」


 黒杖魔族の前に魔法陣が展開……『水』『地』『地』『闇』

 「ギアトール アギトール

 力の円錐 魔の六角錐 地のことわりに反するものに罰を その切っ先で我が敵を刺し貫け 尖塔属性 四重星魔術クアトログラム 『オベリスク』!」


 ズドドドド!

 先ほどと同じ、地面から無数の先が尖った塔が飛び出す!


 「ギャーハハハ、バカめ!カイーナ級がアンテノーラ級にかなうわけが……」

 キュイィィィン……

 「な、何!?貴様、それは……」


 「これは『対魔力結界』です。アナタの魔法は吸収させてもらいました」

 「なんだと貴様、魔族のくせにニンゲンの技を……」


 「ワタクシはこの左手に限り、人間の結界を使うことができます……おそらくこの左手が一番、人間に近いのでしょう」


 「おおー、魔族の技と、人間の結界、両方使えるとは……」

 周りの大臣や騎士たちから歓喜の声が上がる。


 「おのれ小癪な……それで私に勝ったつもりか?」

 「黒杖魔族さま、悪いことは言いません、降参すれば命は保証します」

 「貴様がこの私に情けをかけるとは片腹痛いわ!吠えずらをかかせてやる!」


 黒杖魔族は目に力を入れているようですが……

 「はああああ……『重魔眼ジュウマガン』!」

 顔を上げた黒杖魔族は……左目の瞳が二つに!?


 「フハハハ、私は特異体質でな、瞳が二つある『重瞳ちょうどう』なのだ。これにより一の獄『魔眼』も、通常より効果が上がり、なんと十秒先の未来を見ることができる」

 「じゅ、十秒先も……ザワザワ」


 「なるほど、それは厄介ですね……」


 「先ほどのニンゲンとの戦闘では使うまでもないと判断したが、もうそんなことも言っておられぬ。どんな攻撃をしようと全て避けて、貴様の死角から確実に私の攻撃を当ててやろう……ハハハ、見える、見えるぞ……十秒後私の攻撃で貴様がのたうち回っているのが!」


 ドスッ!

 黒杖魔族の背中から胸に、ワタクシのレイピアが突き刺さる……


 「ガハッ……な、なんだ!?これはいったい、私の見た未来と……違う」

 「黒杖魔族さま、アナタは少しお喋りが長すぎる……以前忠告したことがございましたが」


 「貴様、まさか、魔族の中でも稀に存在する特異体質……『並列思考へいれつしこう』の持ち主、か……?『並列思考へいれつしこう』は、同時に二つの事を考えることができる……私が見た未来はお前の『表層思考』……貴様は『深層思考』で動いたのか!?そうでなければ、私の見た未来が変わるはずは……」


 「しっ、静かに黒杖魔族さま……誰かに聞かれたらどうするのですか?殺すつもりはありませんでしたが、知られてしまったのなら仕方ありませんね」(小声)


 「ま、まて!」

 「ブレイズ!」

 ゴンッ!

 「ぼあっ!」


 「ひっ……」

 黒杖魔族はワタクシの魔法剣で体の内側から炎を吹き出し、燃え尽きた……

 ドサッ……ザアアア


 「……メルフィスさん、何も殺すことは無かったのでは?」

 「すみません、昔よくいじめられていたので、つい恨みがこもってしまいました、反省します」

 「……」


 「さあみなさん、紅茶を淹れます、おかわりの方は申し出てください」


 〇俺side


 パアアア……

 「マスターとミコトの体が光っている!」


 「う、う~ん……ふああ、よく寝た」

 「マスター!」

 「みんな、ただいま」

 「おかえりなさい!」


 「ギガンティックマスター、いかがでしたか?」

 「ああ、ミコト」

 「はい」

 目覚めたミコトは、ベッドを降り、空中に手をかざす。

 ヒイイィィン……


 ミコトの目の前に、光り輝く『マオウクロニクル』が顕現した。


 「おお、まさしくこれは吸血鬼族の『マオウクロニクル』……さすがですギガンティックマスター」


 「まだまだこれは計画の第一段階、本番はこれからだ」

 「はい、そうですね」

 「メルフィス、この後はどうする?」

 「まずは魔界へ行き、国を興す土地を選定します。この場合やはり、もと吸血鬼族が住んでいた土地をそのまま再活用するのがいいかと」


 「魔界へはどうやって行く?というかそもそもお前たちは、どこからこの地上に侵攻してきたんだ?」

 「通常魔界から地上へ来るためには、『天獄の塔』と呼ばれる装置を使います」

 「『天獄の塔』?」


 「はい、魔界と天界、そして地上を繋ぐ階層エレベータとなっています」

 「そんな凄いものがあるのか?」


 「ですが、その階層エレベータを使うには様々な『許可申請』や、『検閲』を通る必要があり、地上から魔界に出るまで約二日かかります」

 「そんなにかかるのか」


 「なので、『邪尾族』は昔地上に来た時に地上の転移者を一人確保し、『オルタナティブドア』を使って、魔界から一瞬で地上に出られるようにしました」

 「おおー、オルタナティブドアで……ザワザワ」


 「転移者を『一人確保』ねぇ……『拉致してきた』の間違いじゃないか?」

 「……まあ、そうとも言いますね」


 「『サキュバス・ダイブ』でミコトの記憶を見た時も、ミコトは邪尾族の転移者のオルタナティブドアを通って地上へ来ていた……そいつは奴隷紋もかけられていて、厳重に監視されていた」


 「おそらくその時と同一の転移者のオルタナティブドアで、今回の地上侵攻も行われたと推測されます」

 「魔界へ行ったら、その転移者も助けるからな」

 「御意」


 「で、そのオルタナティブドアはどこに?」

 「今はここファルセインの北、『トリド砂漠』の海岸にあります」

 「よし、そこから魔界へ乗り込もう」

 「はい」



 俺はメギード王のところへ。

 「メギード王、今回は少数精鋭で行くのが得策だ、だから俺たち『異世界あいどる24』のメンバーだけで行く」

 「メンバーだけで……大丈夫なのか?」


 「あまり大勢で行くと、宣戦布告と思われるからな……それよりメギード王、アナタには他に頼みたいことがある」

 「なんだ、言ってくれ」


 「他の王たちにも、このことを伝えて、今後の対応を話し合ってほしい。俺たちが行って計画通りうまくいくとは限らないし、魔界との全面戦争になる可能性もある」

 「魔界との……全面戦争……」

 「あくまで可能性の話だ……地上の王国も一枚岩じゃない、喧嘩なんかしてる場合じゃないとアンタから他の王たちに言ってやってくれ」

 「よし分かった、任せてくれ!」



 俺たちはマイクロバスにメンバー全員とメルフィスを乗せ、一路ファルセインの北『トリド砂漠』へ。目的地に向かいながら、メルフィスに聞いてみる。


 「邪尾族の王って、どんな奴なんだ?」

 「邪尾族の王は、巨大な体躯に腕が四本あり、四つの魔法を同時詠唱することができます」

 「『フォースキャスト』か……とんでもないな」


 「また額に第三の目『邪眼じゃがん』を持ち、相手の精神系の技をジャミングしたり、幻覚を見せたりすることができます」

 「えっ、それって俺の『アナライズ』も無効化できるのか?」

 「分かりませんが、できる可能性が高いです」

 「マジか……」


 「モチロン王族なので、『七獄』も使用できます」

 「もう無敵じゃん!?」


 「ですが、野蛮で粗暴な性格だとの噂ですので、隙をつくとすればそこかと……」

 「う~ん、話術と策略で丸め込むしかない……というわけか」

 「はい、そうなります」



 「ところで、魔界に着いたらまずどうする?」

 「着いた場所にもよりますが、まずは元の『吸血鬼族の街』へ行きましょう。そこに国民たちが残っているのなら、そのまま彼らを国民として向かい入れ、ミコト様に建国を宣言してもらいます」

 「それから?」

 「ワタクシの魔法で、ミコト様の宣言を魔界中に流布します、その上で魔界の出方を待ちましょう」

 「なるほど……わかった」


 数十分走って『トリド砂漠』に着くと……

 「う~ん、ドアはあったけど、やっぱり魔族が監視しているな」

 海岸近くにぽっかりドアが一つ、その横には巨大な鉄球を持った魔族が立っている。

 俺たちはマイクロバスを降り、そのドアと魔族のところへ……


 「ん~ニンゲン、ここに何しにきたズラ?」

 「そのドアを通って、魔界に用事があるんだが」

 「はー?オイラ魔族以外はここを通すなって言われているズラ、通すわけにはいかんズラ」


 「じゃあ申し訳ないけど、お前をぶっ飛ばして通るとするよ」

 「ムギーーーー!ニンゲンのくせに生意気ズラ、思い知らせてやるズラーー!」

 ブオンブオンブオン……

 魔族は鉄球を回し始めた。

 「オイラは『鉄球魔族』、この鉄球をかいくぐって、攻撃することができるズラかー?」


 「あれぐらいの速さなら、俺の『超電磁キャノン』で……」

 「四の獄・『黒曜コクヨウ』!」

 ビキビキビキ!


 「なんだなんだ?鉄球魔族の体が、黒い宝石みたいなものに覆われて……」

 「あれが四の獄・『黒曜コクヨウ』です……ダイヤモンド並みの硬度を持つ黒曜石で、体を防御できます」

 「マジか!?あいつあんなナリで『アンテノーラ級』なのか」

 「ムギムギーー!またオイラの悪口を言ってるズラねー?」


 「う~ん、ダイヤモンド並みの硬度となると、俺の『超電磁キャノン』でも壊せないかも……アイカ、お前のアイカカリバーならいけるか?」

 「行けるとは思いますが、あの鉄球と『魔眼マガン』を避けながらというのは……」


 「よし、じゃああの技を使うぞ!」

 「あの技ですね」


 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』『闇』

 「カイン ガロン ヅア ベルデルタ

 我に物質の分解・構築の力を与えよ 理路整然 万物の理のもと 物質を作る力を 練金属性 四重星魔術クアトログラム 『アルケミー』!」


 俺の前に磁石のレールが作られる……

 「アイカ、レールの上に乗れ」

 「はい!」


 アイカを俺のレールの上に乗せ、ガントレットの『雷の魔力石』を発動させる……

 アイカは自分に『対魔力結界』を張る、これは空気との摩擦でアイカが燃えたりしないようにするためだ。


 「いくぞ!レゾナンスアーツ、『ちょう……」

 ズバシューーー!!

 「ガアアア!」

 「あ」

 俺が技名を叫ぶ前に、アイカが鉄球魔族を斬っちゃってる……


 「は、速すぎて、なにも……」

 バタッ、パアアア……


 「ちょっとアイカ、速すぎ!技名言えてないし!」

 「そんなことを言われましても……」


 「凄い速さでしたね……威力も申し分ない、素晴らしい技です。なのになぜギガンティックマスターは怒っているのですか?」

 ナナが答える。

 「マスターはね、『技を使うときに技名を叫ばなければいけない病』なの、ううぅぅ……」

 「ほう、地上にはそんな病気があるのですね、参考になります、メモメモっと……」


 「んなわけあるか!」

 ※(注)本当の技名は『超電磁スラッシュ』です。


 「コホン……よーし気を取り直して、では魔界に乗り込む、みんな気合い入れていくぞー」

 「おーー」



 ☆今回の成果

  俺とアイカ レゾナンスアーツ『超電磁スラッシュ』習得


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