人間にはそんなに個体識別能力はないと悟ってしまった
いつからだろう。
プリキュアを個体識別が完全確実な個体名で識別できなくなったのは。
まあ、なんというか、あれですあれ。
色ですよ。
パーソナルカラーっていうんですかね。
あれで識別しちゃってるんですよね。いつのまにか。
某所で、友人とプリキュア見ながらチャットしている時も、青い子とかピンクとか、まあそんな感じで呼んでるわけなんです。
プリキュアに対して甚だ不誠実な態度だとは思うんですが、もはや咄嗟に名前とかプリキュアネームとか出てこないんですよね。プリキュアのファンがいたらごめんなさい。でも、できない……とまでは言いませんが、個体名を覚えるのがメチャクチャ努力しないとできなくなってきている。
どこかの誰かが言ってたんですけど、アニメキャラの識別はほとんど瞳と髪と髪型で行っていて、そこに口調とかがついてくる感じかな。
属性とかは、もっと副次的。
こりゃヤベエと思いました。
まあ、わたしは読者のみなさんではないですし、読者のみなさんのほうがわたしよりも個体識別能力はある可能性のほうが高いとは思うんですが、わたしはわたしの実体験を否定するほど強くはありません。
わたしをベースに作らなければ……キャラクターをキャラクターとして認識してもらえん可能性がある。
ところで、小説という媒体でキャラクターを強く識別する記号ってなんでしょうか。さっき述べたパーソナルカラーと言いたいところなんですが、わたしはたぶん違うと思うんですよね。
ズバリ主人公との位置関係なんじゃないかと。
えっと、まず主人公は忘れられないでしょう。というか、主人公が忘れられるほどキャラが薄かったら、その時点で面白くないって話だから、考える必要がないですよね。はい次。
じゃあ、次に……ってことで、ここからは主人公の交友関係みたいな話になるんですが、おそらく主人公との立ち位置があざやかなところが比較的覚えてもらいやすいと考えています。
恋愛小説だったら言わずもがなパートナー候補は、それなりに描写をさかれるでしょうし、覚えてもらいやすい。
あとはライバルの悪役令嬢とか、敵キャラは覚えてもらいやすいでしょうかね。
案外ヤバそうなのが、友人ポジあたりとか、友人じゃないけどクラスメイトとか、そういったところになると途端に解像度が落ちる。
あ、ヤベエわ。
わたし、三人くらいまでしか同時に認識できないわ。まあ、モブからメインキャラに昇格みたいなことはありうるわけだし、ともかく最初……とっかかり、冒頭はやっぱひとりかふたりで始めるのが無難かな。
なんて思ったりもする。
文学者はここでポエムをかまして、どど~んと世界観の広がりとかを見せたりもするんだけどさ。
例えば、雪国とか読んだことある人ならわかると思うけど、『国境の長いトンネルを抜けると雪国だった』とか、ほとんどポエムじゃん。ごく普通の国語に直せば、『列車が長いトンネルを抜けると雪国があった』とかのほうが正確だろうしね。
でも、(列車)という主語を書いては、結晶化された宇宙が破壊されてしまう。
『国境』というラインを設定しなければ、幽冥の境を描けない。
『であった』という言葉にしなければ、いまここにある雪国に縮減されてしまう。
要するに現代人風に言えば、あの冒頭の一文は、異世界にログインした瞬間を切り取ったものだと思うよ。行き着いた先は、どこでもない雪国であり、つまりは異世界なんだよね。
すごいな、と思うと同時に、これはまあ解釈にカロリーを使うというのは、瞬間的に理解できてしまう。
なぜなら、プリキュアの名前すらも覚えていられないわたしがここにいるんだぞ。こんなところまで読みといてもらえるとか甘えだ甘え、みたいな感じ。
実体験に裏打ちされた考えって、なかなか突き崩せないよね。まあ偏見なんだけど、その偏見こそが個性ってものでしょ。
そんなわけで、キャラだしは、極少数から始めるべきなんだろうな。
ここで、ひとりかふたりかということを考えると、たぶん最初はふたりのほうが難易度が低い気がするね。
だって、キャラクターが識別されるのは、相対的位置関係によるものでしょ。ようするに、主人公が一人称でダラダラと述べても、主人公のキャラが伝わるのに一手遅れてしまう。
そう考えると、「婚約破棄する!」という始まりは、すごく妥当なように思える。ミステリーとかでもよく言われるように、冒頭では死体を転がせって話で、インパクトがあったほうが覚えていられるからね。
プリキュアの名前を覚えきれないわたしでも、なんとか覚えていられるよ。
今日は素直に考えた、わたしでした。
ついでに言えば、できるだけメインキャラは文字数少ない名前にしてる。ぶっちゃけ二文字が正義と思ってるんだけど、西洋風だと結構ムズい。