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38/50

38.

 (※ナターシャ視点)


 お願い、間に合って……。


 私は全速力で走った。

 階段まで猛ダッシュ。

 そして、死ぬ気で階段を駆け上がった。

 そこから息をつく暇もなく、また全速力で自分の部屋まで向かった。

 そして、部屋に入って、扉を閉めた。


「はあ……、はあ……」


 息が切れて苦しかった。

 それは、久しぶりの感覚だった。

 しかし、そんなことを思っている場合ではない。

 玄関の扉が開く音が聞こえた。

 とりあえず、間に合ったようだ。


 それでも、安心するのはまだ早い。

 とりあえず、呼吸を整える必要がある。

 部屋でじっとしているはずの私が、呼吸を乱していては不自然だからだ。

 階段を上ってくる音が聞こえる。

 

 まずい、まだ呼吸が整っていない。

 いや、落ち着くのよ……、焦ってはダメ。

 焦ったら余計に、呼吸が乱れる。

 廊下を歩く足音が聞こえた。


 よし、呼吸が整ってきた。

 これで、アーノルドが部屋に入ってきても平気だ。

 そして、部屋の扉が開いた。

 予想していた通り、入ってきたのはアーノルドだった。


 しかし、予想外のことが起きた。


「ど、どうしたんだ! ナターシャ!」


 ものすごい形相で、彼が近づいてきた。

 え……、私何か、おかしいところがある?


「ど、どうしたのよ、アーノルド。そんな驚いた顔をして……」


「どうしたは、こちらのセリフだよ! どうしたんだ、ナターシャ。ものすごい汗だよ」


「え……」


 しまった。

 呼吸を整えることしか意識していなかったせいで、汗をかいていることに気付かなかった。

 走れば汗をかく。

 当たり前のことだ。

 その当たり前のことを、私はすっかり失念していた。


「えっとね……、これは……」


 私は必死に言い訳を探した。

 彼は心配そうな顔をこちらに向けている。

 本当のことは、もちろん言えない。


 必死に考え、私が彼に返した答えは……。

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