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35/50

35.

 (※ナターシャ視点)


 勘違いなんて、誰にでもあるわ……。


 そう、アーノルドは、勘違いしている。

 自分が勘違いしていたと、勘違いしている。

 私が嘘をついていることは、見抜けなかった。


「何とかなるものね……」


 私は初めから、アーノルドに怪しまれていると警戒していた。

 勘違いではないと証明するために、どこかにメモを残していると思っていた。

 そして、それを私は、リビングで見つけた。


 気付いたのは、食事をしていた時だった。

 カレンダーに、『6』という文字が書かれていた。

 最初は何のことかわからなかったけど、あとで気付いた。

 あれは、私が読んでいる本が六巻だというメモだったのだ。


 そのことに気付いた私は、逆にそれを利用することにした。

 アーノルドは用事で夜まで帰ってこないと分かっていたから、私はその間に、八巻まで読んだ。

 そして、彼が帰ってくる前に、メモを書き換えておいた。


 最初は書かれている文字を消そうと思った。

 しかし、文字はボールペンで書かれていた。

 そこで私は、ボールペンで書かれていた文字に、さらに書き加えた。

 そうすることで、『6』から『8』に違和感なく書き換えることができた。

 アーノルドもそのことには気づかなかったようだ。


 自分の勘違いを確かめるために、彼はメモに頼った。

 そのせいで、メモに書かれていることは、絶対的に信じていた。

 数日前に書かれているメモなら、客観的な情報として信用できると思ってしまった。

 それが、彼が勘違いに気付かなかった原因である。

 メモだって、書き換えることができる。

 それに気付かなかった時点で、彼の策は何の意味もなしていない。


 そして、私の嘘ではなく、彼自身の勘違いだったと思い込んだ彼は、それからさらに優しくなった。

 私が本を取って頼めば、それを断ることはなかった。


 少し危なかったけど結局、私の嘘がバレることはなかった。

 何もかもが順調だ。

 これからも、この幸せな生活が続く。


 そう思っていたのに、まさか、あんなことが起きるなんて……。

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