結
「ん……、じゃが、でも、もし作った『異世界』がこちらを邪魔しに来たり、こちらを滅ぼしに来たり、ようは敵になる可能性もあり、製作元の世界を復活させてくれる、保証というか根拠というか……、そういうものが無いとむしろ『異世界』を作ることがマイナスになりそうな気もするのぉ…………」
「確かに、ただ作れば良いという問題でもありませんわね。例えば、国や宗教に例えますと、自分と違う価値観を認めないような、そのミームでしたっけ?ですと、自分と違うモノを認めないわけですから、異世界が他の異世界を自分色に染めに征服……攻める可能性は高いですわね。歴史上で見て…も…ずっとそうでしたわ……現代でも、一つの考えで纏まった集団が他を同じ考え、同じグループにする為に……力を使っておりますものね……。もし同じ考えにならなければ、力ずくで消し去るなんて……ユーラシア大陸等でよくあることですからね…………」
「ふむぅ、なるほど。そう考えると、その通りだのぉ。『異世界』を作ること自体が考え物なんじゃなぁ……」
「ねね、ツムちゃん、ミサちゃん、因果応報ってあると思う? あー、うーん、そんな畏まるものじゃなくて……良い事したら良い事が帰って来るみたいなのってあると思う?」
「なんじゃ、話が変わったのかえ? あるんじゃなかろうか? というか、あればええのぉ」
「どうんなんでしょうかね。『因果応報』って言葉があるくらいですから、あるのではないでしょうか?」
「私は、短い人生だけど、あるかなぁ~って、体験から思うんだけどさ。あれば良いと思わない? まぁ、無ければ作っちゃえばいいんじゃない?」
「ちょっと何が言いたいのか分からんぞよ」
「『異世界』ってさぁ、その方針を決める何か、意思決定をする何かが『いる』んだよね? 『ある』かな? 相手というか『他の異世界』を尊重する『異世界』なのか、尊重しないで、ただ自分と違うなら滅ぼそうとする『異世界』もあると。ならさ、そもそも『異世界』の最高の意思決定機関自体を、他者を尊重するような意思決定機関にしちゃえばいいんじゃないの?」
「話が戻ったと思ったら、どういうことじゃ? よう分からんぞ? 意思決定機関にしちゃう?」
「そのように、作為的にその集団の意思決定機関なんて作れるのでしょうか? あ、なるほど、新~~政権。親米政権とかの話ですわね? うーん、いつも思うのですが、清銘さんって帝王学でもやってるのかしら……」
「やってるよ~。でね、そう『異世界』を作る時に、最高の意思決定者、もしくは意思決定機関が排他的で薄情にしないように作ればいいと思うんだよね。まぁ、紆余曲折があっても、シンギュラリティを迎える時には、その状態になるように迎えさせるのがベターだよね」
「そのようなこと、できますでしょうか?」
「まぁ、無理だったら、完成前に消しに行っちゃえばいいんじゃないの? 将来の禍根を無くす為にね。良い感じに完成しそうなら守りに行けばいい。この場合、自分の都合ばかりを考えているミーム同士は敵同士になり、他者を尊重できるミームは味方同士になるんだ。もちろん他者を尊重できないミームに対して、できるミームはしっぺ返し戦略を取るよ」
「帝王学? そこはしっぺ返し戦略になるのか。なるほどのぉ」
「しっぺ返し戦略? 戦略ですの? 兵法ですの? 陣形? ってなんなのでしょうか?」
「えっと、チスイコウモリの話なんだけどね」
「治水蝙蝠ですか? 一領具足の半農半兵の、四国の蝙蝠?」
「ちょっと、それはなんだか分からないけど、血を吸う、コウモリの種で、チスイコウモリって呼ばれている蝙蝠がいるのだけどね。それの、お話なんだけど」
「はいな……」
「ちなみに、コウモリとかハイエナって名前で損してるよね?」
「どういう意味なのじゃ?」
「こうもり野郎とか、ハイエナ野郎ってさぁって言葉あるけどさぁ。例えば、ライオンとハイエナだと、ハイエナ行動をしてるはライオンで、自分でちゃんと狩をするのはどっちかっていうと、ハイエナなんだよね。どっちかっていうと、ナマケモノはライオンなんだよね。ちなみにナマケモノのフタちゃんは可愛いけどね」
「そうじゃったのか……」
「で、コウモリ野郎って言葉も、イソップ寓話の卑怯なコウモリから来てるんだけど」
「それは、どんな話なのじゃ?」
「動物と鳥が昔から争ってたの。そこで両方の形質を持つコウモリが風見鶏というか、日和見的な行動をするんだよね」
「ふむふむ、のじゃ」
「洞ヶ峠のようですわね」
「で、最終的に、鳥と動物が争いを辞めた後、日和見だったコウモリは、みんなからやり玉にあげられちゃう、可哀想な話なんだよね」
「なるほどのぉ。そういう話なのか、可哀想というのは、それは確かにどっちつかずはな行動は、ある戦力から見たらイラつく行動かもしれないのじゃが、そもそも昔から争ってる鳥と動物こそが悪い気もするがのぉ。まぁ争うということにも、それなりの理由があったのかもしれんから、それはそれで決めつけは良くないといことになるのかのぉ」
「あっ、だよね、そう思うよね。まぁ実際上、引いた視野でみると、大陸移動説で有名だけど、約3億年前に分裂を始めた超大陸パンゲアが、今の形に近くなった後、3500万年前に南極大陸が今の位置に来て、ユーラシア大陸の気候が変わって鳥類と哺乳類は3500万年間、生物界の覇権という意味において、争ってきたから鳥と動物の争いって本当にあったんだよね。確かに、争うことにしょうがない感はあるよね」
「有名? 昔……? のじゃ…………」
「面白い話ですわね。確かに大国に囲まれた小国はどっちつかずな行動を取るしか無いってのは多いですわよね。例を挙げれば枚挙にいとまがないですわね。毛利家しかり。フィンランドしかりバルト三国しかり。ルクセンブルクしかり。エトセトラですわ」
「ちょっと、話がそれている気がするのじゃが、チスイコウモリの話はどうなったのじゃ?」
「そうそう、その話をしてたんだよね。なんか話がそれちゃったね。コウモリって話が広がるなぁ。ネズミに似てるよね。あっ、んで、チスイコウモリのコロニーの話なんだけど」
「コロニー? 地球に落とすやつのことかのぉ?」
「それは、よく分からないけど、チスイコウモリが集団でいる状態かなぁ、厳密な群れでは無いんだけど、群れみたいな物って思ってもらっても構わないけど。で、そのチスイコウモリのコロニーの話なんだけど、そのコロニーでは、吸って来た血を、血にありつけなかった仲間に分け与える行動するの」
「ふむぅ。せっかく取って来た血なのに、他のコウモリにあげちゃって良いのかのぉ?」
「そうなんだ、不思議だよね。死にそうな仲間に上げちゃうの。まぁでも適当にバンバン上げちゃう訳じゃじゃなくて、返してくれる保証の高い個体に上げるの。自分が困っているときにくれなかった個体には、そいつが困っていてもあげないの。これが、まぁ、しっぺ返し戦略って呼ばれることなんだけど」
「なるほどですわ。理解できてきましたわ」
「さらに、分け与え行動としっぺ返し戦略するコロニーのほうがコロニーとして生き残り易くなるんだ。ある動物学者がチスイコウモリの体重と時間を計って計測したんだけどね。お腹、満杯のチスイコウモリが、その後食事をまったく取らないと、残った命は60時間なんだ」
「命が60時間とな、短い天命、じゃのぅ…………」
「そう。だから命が切れる前に、また次の血を取って来なきゃなんだけど、でね、満腹のチスイコウモリは、瀕死の個体のチスイコウモリ、だいたい取って来た血の1/5を上げるんだけどね。上げた側は、60時間が55時間になるの。でもね、瀕死のコウモリは、その1/5の血を貰った、おかげで、命が15時間も伸びるの。15時間あれば、次の日の狩で血を取って来れる可能性があるの。血を貰えなければ死んでいたのになんだ」
「ほほぉ。すごいの、よい仕組みなのじゃ5時間分が15時間になるなんて」
「そうですわね。時間で言われると、とても効率良さそうですわ」
「そうなんだよね。こういうことって、けっこうあるみたいでさ、ちょっとした、やってあげたことが、相手にとって、とても大きいメリットを生むってこと。そうそう、サブ運転手の栗石さんに、バレンタインデーのチョコ上げた時にも、この話になったんだけど、たぶん、私がチョコを買いに行ってあげるという、労力に対して、相手が貰った時の恩恵が、とても大きいらしいから、義理チョコはたくさんあげたほうが良いって言われたよ」
「ふむむ。面白い話、じゃのぉ。それに、相変わらず、客観的な分析をするのぉ。栗石さんは」
「なるほど、まさにそれですわね。それにしても、清銘さんって、ドラスティックな考えもできるのですわね。しっぺ返し戦略の話が、よく分かりましたわ。えっと、異世界をミーム(?)に見立てて、の話をしてたのでしたっけ?」
「そうかな? そんなにドラスティックかな? そうそう、異世界をミームに見立てて、お互いがけん制し合うときに、しっぺ返し戦略をすれば良いっていう話をしてたんだ。でね、異世界の成長の途中経過の話になるけど、あまりにも排他的な、一党独裁的だったり、薄情な状態だったりしたら、罰を与えればいいんじゃないかなぁ。デウス・エクス・マキナのようなモノかなぁ」
「デウス・エクス・マキナ……なるほどですわ……。でもそんなことできるのでしょうか?」
「ドラスティック?? デウス・エクス・マキナ??? まぁ、神を作るというか、世界を作るというか、システムを作るなら、罰というシステムくらい作れるのではないかのぉ」
「あ、やっぱりできるよね、ありがとうミサちゃん。んで、その罰を予め仕込んでもいいし、神様がいて、見張ってるなら、罰を与えてもいいと思うんだ。そうして補正していけば、他者に対する尊重を持つ異世界が出来上がるんじゃないかなぁ」
「うーん、全部を理解したとは、言えないですけど、なんかすごいですわ。なんか、やっぱり、清銘さんって、こんなに見た目は小動物みたいで可愛いのに、人心掌握術とか、政治とかにとても強そうですわ……悪い政治家みたいですわ……」
「え? 私がどうなのかは分からないけど。ちゃんと、みんなを導くのは良い政治家なんじゃないの? ツムちゃん、考え方が逆じゃない?」
「えっ、そうなのでしょうか? なんか清銘さんに言われると、それが正しく思えてきますわ…………」
「ふむぅ、清銘はたらしだのぉ。統率か、魅力が100なのじゃ」
「おい、おまえら!! いい加減に寝ろ!」
「うわっ、ビックリした。オスカーさん!」
「お前ら、もう寝ろ。お前らが寝ないと……、姫様がこちらに混ざりたくて気になって眠れんのだ。姫様の健康管理も我々の仕事だ。だから、頼むからもう寝てくれ」
「「「はーい」」」
今回の対話篇の話は、ある作品の一部を切り出して独立させた話です。
この対話だけでなく周りの部分にも興味を持って貰えた方は下の方にあるリンクから飛べます。
題名は
"聖女のいない世界 ~伝染病ト戦ウ少女タチノ挑戦的ナ運命ヲ余スト コロナク ドラマ化 スル~『泣き虫少女たちの7年戦争』"
という作品です。
この作品自体の感想などもありましたら、ぜひ、よろしくお願いします。