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「なんとなくですが、そのシンギュラリティが来るのも、シンギュラリティがすごいモノだっていうのも分かったのですけど、そもそもそのシンギュラリティがなんなのでしょうか?」
「あ、なんの話をしておったんじゃっけ? ちょっと、ログを読み返して……。年を取ると、物忘れが激しくなるのぅ。ああ、そうそう、異世界は、技術的特異点があれば作れるってことが言いたかっただけなのじゃ。世界も神も未来に作られる……。この場合の『世界』はID理論になる場合もあるのじゃ、悔しいけど。まぁ5分前仮説のようなモノじゃ。 じゃから、ゲーム内のようなステータスウィンドウが開いても、ありといえばありなのじゃな」
「あ、そうでしたは、そもそもの話、私が心の不安をお二人に聞いてもらってたのですわね。私が、この世界に不安を持っているという話でしたわ。不思議な世界ですわ。ここは……。あっ、でも操文さん。異世界というか『世界』が作られる方法について聞きましたが、『世界』は、何故できるのでしょうか? 何故作るのでしょうか?」
「なんでじゃろうなぁ……。確かに、わらわが言ったのは、創られることが可能と言っただけで、何故作るかについては答えられてないのぅ……。何故なんじゃろうか……。うーん、わらわの勘(?)が二人に技術的特異点のできる方法を話せば、理由も分かるって言っておるんじゃが……、ほんとに何か分からんのか? 紬?」
「うーん………………ですわ」
「ねね、今、ミサちゃんの話を聞いてて思ったんだけど、異世界でも技術的特異点って起こるのかなぁ?」
「さぁ、確証は無いが、発生しない理由が無いのぉ」
「やっぱりあり得るんだ~。様々な、世界で技術的特異点が起こるんだぁ~。面白いねぇ~」
「様々、様々……、さまざま…………。保険…………ですわ」
「「保険??」」
「保険というか、保証でも良いですわ。技術的特異点って赤鼻の青ひげの『もしも』なんとかを使えるくらいすごくて、世界を作り出せるのですわよね? で、なんというか、第1世代から、みんながみんなをたくさん作って、うじゃうじゃ第100世代とか、第200世代とかがある情景を想像したのですが……、あ、えっと考えが纏まらなくてごめんなさい……」
「ゆっくりでいいよぅ、ツムちゃん」
「のじゃ」
「なんて言いましょうか、その技術的特異点で作られる、出来上がるAIでいいのかしら? AI達って、これから大海原に出ていく気持ちなのでは無いのでしょうか? 電子の海といいますか、競争社会にですけど…………。勝手な予想ですけど……。そういうときって人間なら逆に、保険のような物があればいいなぁって、思うような気がするのですわ。これから大きなことを成し遂げようとした、坂本龍馬のように……」
「龍馬? 龍馬が関係あるのかのぅ?」
「ミサちゃん、龍馬ってね、日本で最初に保険制度を考えた人だって言われてるんだよ」
「そうじゃったのか」
「まぁ、正確には、違うのですが、龍馬と保険はあまり関係無いのですが、雰囲気の問題ですわ……。ちょっと頭の中の雰囲気を良くした方が、何か思いつくと思いまして……。東インド会社……、株式……資金調達……。こちらのほうが近いのかしら、保険よりも……」
「資金調達っていえばクラファンだよね」
「クラファンとはなんなのじゃ?」
「クラウドファンディングの略だよ。資金調達といえば、って思ってね。でも今はクラウドファウンディングの説明はしないよ、話が逸れちゃいそうだし、後でね~」
「ぬぅ、ググレカスってことか、ぬぉー、ネットが使えんのじゃーーー」
「うーん、まぁEU的な相互補助って言ったほうが結局早いのかしら。なんか少しだけ違う気がしちゃうのですわ。むしろ、『例え楚が三戸になろうとも、秦を滅ぼすのは必ず楚であろう』、こっちが近いような気もしますわ」
「意味が分からんのじゃがどうい意味、じゃ?」
「今や、漫画とかで有名かもしれませんが、中国の戦国時代に秦という国が列強の7か国の中、勝ち進んで統一国家を作って、始皇帝を名乗るまで行きますわ。その秦が統一する間に、楚という国も滅ぼしますの。でも、統一した秦という国は、中原を統一してからわずか15年で滅びますわ。秦を滅ぼしたのは、一度滅ぼされた、他の国々の連合軍なのですが、その中でも主力は楚の人だったのですわ」
「ふむふむ、ほいで、のじゃ」
「それで一度、楚が滅んだ時に、このような『例え楚が三戸になろうとも、秦を滅ぼすのは必ず楚であろう』との言葉が広まりましたとのことなのですわ。呪いのような言葉ですけど、結局その通りになり、秦は滅ぶのです。逆に、楚のほうはその言葉を合言葉に、頑張って秦を滅ぼしたのではないのでしょうか。秦を滅ぼすのは、項籍と劉邦ですわね」
「こうせき? 項羽と劉邦ではないのかえ?」
「あ、そちらの呼ばれ方の方が有名ですわよね。そう、項羽と劉邦が滅ぼしたのですわ。二人とも楚人、楚の人だったのですわ。ようするに、楚という国の大本が無くなっても細かい流れは絶てなくて、結局、復讐されるような、そんなイメージですわ」
「なるほどのぉ」
「うーん、ツムちゃんの言いたいことは、なんとなく分かったんだけど、なんか創生と消滅の方向性逆じゃないの?」
「うっ、確かにそうですわね、国を興す話では無く、滅ぼす話ですものね……」
「分かったのじゃ、つまりこういうことじゃろ。えっと、紬は大丈夫として、清銘は『七つの玉を集めてどんな願い事も適う話』とか、『黒い球体のある部屋に行く話』とかは知ってるかのぉ? 黒球のほうはさっきの反応からすると、紬は知ってそうじゃが」
「うーん、ちょっとそれだけだと、ピンっと来ないんだけど、1個目のほうはどんな話なの?」
「えっと、ほれ、少年が空飛ぶ雲に乗って高速で移動したりとか、仙人とか出てくる話じゃ、うーん、これだと余計分からなくなるか? 後半の方を話したほうが良いのかのぉ…………」
「雲に乗って、仙人が出てくる話? 『西遊記』でいいの? それとも『水滸伝』? 『八仙北遊記』? 合ってる?ツムちゃん?」
「えっ、私に振りますの? えっと、西遊記が近いですわね……。『八仙北遊記』ってそもそもなんでしょうか……」
「八千なんとか??? まぁ、えっと、清銘が知らないということが、分かったのじゃ。今、上げた二つともは、いろいろと頑張ると他人を生き返らせることが出来る話なのじゃ。で、その生き返らせる人ってのは人為的に選ぶわけなのじゃ。ようするに、他人に生き返らして貰える価値のある人間は生き返らせてもらえるのじゃ。逆に言うと、殺人鬼みたいなのを好んで生き返らせたい考えの者は、そうはおらんってことじゃがの」
「操文さん、その言い方だと、何か語弊がありそうですわ。国で例えると、良い例なのか悪い例なのかは分かりませんが、イスラエルなんかが該当しそうですわ。周りの国がその国の復活を必要と思い、WW2後の1948年に、2000年ぶりの復活をさせたのですわ。この例ですと、そのことにより世界を客観的に見ると、弊害も出てますかもなので、もろ手を挙げて良いとは、言えませんが、該当はするかと思いますわ」
「ならさぁ、こうも例えられるかな。法人とか企業に例えたほうが分かり易いんじゃない? 会社とかでも、会社を潰しちゃったけど、会社を経営してた人は人望があるから、周りの援助などで、また会社を立ち上げてなんとかなったとか。あと、社会的に死んじゃった人とか。例えば、些細な事でその業界で活躍できなくなった人とかさ、広告媒体系かなぁ。やっぱり、人望があったり、人に感謝されることをしてきた人ならさ、他の広告媒体に引っ張ってもらって、そこで復活するとかってけっこうあったんじゃないかな?」
「おお、まさしくそんな感じじゃな。ちなみに、清銘は動画とかのことを言ってるのかえ?」
「まぁ、そうなるのかな? うーんで、ツムちゃんと、ミサちゃんの話を纏めると、周りの何かミーム的な物が、同階層のミームを役に立つからと、復活させるってことを言ってるんだ。で、それが『世界』にも当てはまるってことを言ってるのかな?」
「ミームってなんじゃ?」
「この場合だと、『流れるモノ』の総称として使ってるよ~。文化とか国とか宗教とか世界とか、流行とかね。流言とか、テレビの普及状態とかも含めちゃってるよ。そういう『流れるモノ』のこと」
「なんとなくですが、フィーリングで分かりましたわ。そのミームとやら」
「なるほど、ミームはそういうものか。なら、纏めると、それに『世界』にも当てはまるってことじゃから、世界は滅びて消えても、また復活する為に『異世界』を作るってことになると思うんじゃが。そういうことで合っておるかの? 紬?」
「その通りですわ。今までの話を纏めると、私が言いたかったことはそういうことになると思いますわね」
今回の対話篇の話は、ある作品の一部を切り出して独立させた話です。
この対話だけでなく周りの部分にも興味を持って貰えた方は下の方にあるリンクから飛べます。
題名は
"聖女のいない世界 ~伝染病ト戦ウ少女タチノ挑戦的ナ運命ヲ余スト コロナク ドラマ化 スル~『泣き虫少女たちの7年戦争』"
という作品です。
この作品自体の感想などありましたら、ぜひ、よろしくお願いします。