起
キヨメ:科学全般的に詳しい。知識や教養が全般的にあるが、浅い部分は浅い。
ミサヤ:のじゃ語:プログラミング、コンピュータなどに詳しい。鑑定を使った人物。
ツムギ:お嬢様言葉:怖がりだが、歴史に詳しい。
昼間にミサヤがモンスターに鑑定を使いました。
その時に、全員の頭の中にステータスウィンドウが開きました。
対話のシーンは、ステータスウィンドウが開いたことに対して物恐ろしさを感じたツムギが夜、寝る前に、他の二人に語り掛けるところから始まります。
「操文さん……。昼間にモンスターが出て来て、鑑定と言うスキルを使った時のことなんですけど……」
「紬。改まって、どうしたのじゃ?」
「あの時、全員の頭の中に、モンスターのステータスウィンドウが表示されましたわよね? それが、不思議で不思議で」
「不思議なのは、今に始まったことじゃなかろう、今までも、日本から異世界である、こちらに来て以来、不思議だらけじゃと思うのじゃが」
「そうなのですが、ステータスウィンドウが頭に開いた時に、それをとてもハッキリと感じてしまいまして……。なにか、とても不安になったといいますか……。操文さんや清銘さんは、不安になったりしないのですか?」
「まぁ、確かに不思議、じゃのぅ。ステータスウィンドウなんて、見えてるのに視界に無い。不思議な状態なのじゃ。ARとも、また違う。視界上にあるわけでは無いからのぉ。この状態を強いて説明するなら、見ることが出来るという感覚をさらに付け足したようなモノじゃのぅ。それも脳に対してじゃ。これを、地球に戻って再現が出来たのなら、ひと財産が築けるぞえ。まぁ、で、清銘はどう思うのじゃ?」
「私も、不思議に思うよ~。でも、不安にはならないかなぁ。ツムちゃんもミサちゃんも傍にいるし、他のみんなも、いい人で、とても安心してるよ~」
「そうですわねぇ、みんな本当に良い人ばかりで、なんというか……。確かに人間関係については、こんな幸せでいいのかなぁって思っちゃいますわね」
「じゃな、確かに良い人たちじゃ。それで、ざっくりと思ったことを言うのじゃが、この頭の中にステータスウィンドウが開くという現象を異世界で無く、私らのいた世界で同じことをしようとするのじゃったら、脳にチップを埋め込むくらしか、思いつかんのぅ。まぁ、仮に私らの脳にチップが埋め込まれてたとしても、いきなり頭が爆発したりはせんじゃろう」
「ひっー」
「ちょっと、ツムちゃんいきなり抱き着いて来たら危ないって、前にも言ったじゃん。ミサちゃんもツムちゃんを怖がらせないでよ。今、このタイミングでそういうことをそういう言い方で言ったら逆効果になるじゃん」
「すまんのじゃ。ただ、そんなことは無いよと、大丈夫、じゃよと、言いたかっただけなのじゃ」
「ミサちゃん、メッ」
「すまんのじゃ。でも、チップと言うか、それっぽい物はあるかもしれんと思っておるのじゃ。前も言ったと思うが、わらわがこちらの世界に来てから、やたら勘が良くなったと感じるのじゃ。というか、理由が分からんのじゃが、勘で真実が分かる感じがするんじゃ」
「そうなのですか?」
「うむ。そうなのじゃ。でじゃ、世界のそこら中に何か小さな粒というか粒子が浮いているように感じるのじゃ。町の教会に行った時に、そこにいた見張りが小さい鷲を切り殺したじゃろう。死体は別の物が方付けておったがの。そして、その切り殺したのをわらわは間近で見てたのじゃが、小さい鷲から、黒い小さな粒子が濃い濃度に纏まって、切り殺した見張りの体の中に吸い込まれて行ったのじゃ。それ以来かなりしっかり知覚できるようになったのじゃが、これは、なんというか、生きてる粒子というか……、あえて言うならナノマシンのようなモノに感じるのじゃ」
「ナノマシン!ですか?」
「のじゃ。実際わらわはナノマシンなんて見たことないのじゃけど、あれがそういうモノだという風に感じたのじゃ。だから、さっき、脳にチップがあるという、表現を使ったのじゃ。正確に言うなら、脳の中にナノマシンが入っている、なのじゃ。黒い小さな粒子のナノマシン……黒歴史……」
「なるほどなのですわ……」
「まぁ、異世界、じゃからのぉ。何でもありなのかもしれんのぉ」
「ですわねぇ。異世界……ですものね」
「だよねぇ……。でも、本当に、この『異世界』っていうかさぁ『世界』ってなんなんだろうね? うちらが元いた世界ってこっちから見たら『異世界』なんだよね? そもそも『世界』ってなんなのかなぁって思ってさ」
「それについて、わらわも考えていたことがあるのじゃが、あくまで仮説ではあるが、『異世界』がなんなのか……。そもそも異世界は神が作っておる。そのような場合もある。では、異世界を作り出すような、神を作ったモノはなんなのか? について、考えることあってのう。まぁ、『神』が作れるなら、『世界』も作れるであろうから、『神』は必ずしも、今の話の流れでは必要無いかもしれんじゃがのぅ」
「世界を作ったどころか、神を作っただなんて、そのようなことを考えて良いのでしょうか? というか、多神教の神的な神なら、神が大本の神から作られる神話のような話は、ギリシアにしろ、ローマにしろ、日本にしろ、北欧にしろ、クトゥルフにしろ、ありますものね」
「ツムちゃんは歴史に詳しいだけじゃなくて、神話まで知ってるんだね」
「えへへ。お父さんから、色々教えてもらったのですわ~」
「奇遇っじゃなぁ、わらわもお父さんからいろいろ教わってるのじゃ~~。で、コホンっ。でじゃ、この『世界』と言うのは、パラレルワールドのことでは無いかのぅ。パラレルワールドのことを説明するのに、分かり易い例があるのじゃが、二人はアニメは見るのかえ?」
「私は、まぁまぁ……見ておりますわ」
「私も、見るよ~。ネコバスのやつの監督さんのやつとか好きだよ。ほら日本の旅先がそれっぽいと安定するやつ。シカとか猪とか城とかが出てくるやつのこと。あと、有名なのでたくさんあるのも、1、2時間ずつくらい見るかな~。教養としてちゃんと知ってるよー」
「はて? 花札かのぉ? それに、教養?……のじゃ」
「1、2時間?? それは、全然見て無いのでは? 1クール見ないってことでしょうか?」
「1クールってなんのことだか分かんないけど、えっと、アニメっていうと、小分けになってる方でしょ? サブの運転手の栗石さんからいろいろ教えてもらって、ピックアップして見てるけども。設定も栗石さんからばっちり聞いているから覚えてるよ~。主人公がモガヘアーのやつ。モガヘアーは終戦直後で、世界観は戦前の昭和初期で、そのちぐはぐも楽しめて、それに日本の男尊女卑系の家族の生き様を学べるやつとか。第二次ベビーブーム世代の私たちの親世代の、さらに上司がどういう学生時代を生きてるかを学べるやつとか。あ、あと、私あれ好きだな、青白い雪達磨が、お腹からいろいろ出すやつ。えへへ、けっこう詳しいでしょ~」
「うっ運転手?? それもサブ? やっぱりの本物……、って、ツッコミどころ多すぎでどこから突っ込んでいいのか分からないですわ…………。運転者がいらっしゃるのですか?」
「うん、いるよ。栗石さんは、サブだから、いつも助手席に座ってるよ。あまり、運転したことないなぁ。でも不思議なんだよね。学校とかで騒ぎがあると何故かいるんだよね。まぁ、それは関係ないから気にしないで」
「栗石さんとやらの、設定の説明が客観的過ぎるぞよ……。ふむぅ、あ、見てるのか。それじゃ、その最後に言ったやつじゃ。清銘もギリギリ見ててくれたおかげで説明が楽で助かったぞよ。その青ダヌキがお腹からいろいろ出す奴の話を知ってると、説明が楽になるのじゃ。おぬしらシンギュラリティって知っておるか?」
三人の会話の部分部分において、三人中二人しか理解できてないところが多々あります。
人が三人以上集まって会話をすると、こうなることが宿命なのかもしれません。