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ご丁寧にゴブリンが縛られていた所とは真逆となる位置に縛られて転がされている女性がいた。近づいて見ると、喋れないようにしっかりと猿轡をされていた。
本来は綺麗であろう赤茶色の長い髪はボサボサに乱れており、ブラウンの瞳からは大量の涙が溢れている。本来は美人さんなんだろうけど台無しだな。
粗末なワンピース? ローブかな? を身につけているが、粗相をしてしまったのか腰元に小さな水溜まりをつくっており自身のスカートを濡らしてしまっていた。だがそれすらも気にする様子もなく、ただただ恐怖に怯えているのだった。
「動けない。喋れない中で。あえて音と視覚情報だけ残してみました」
「なんで?!」
「えっ……怖がるかなって」
「効果てきめんだよ! なんでそんな事したの? そして何でまた亀甲縛りなんだよ! お前そっちの趣味あるの? とんだ変態さんだな!」
縛るの大好き女子ってどこ向けの設定だよ! 決まってるよね、ドM向けですよね。
生憎俺の好きな属性じゃないから。
「違うわよ!」
珍しく声を荒げて反論してきた。
そうだよないくら厨二病患っているからって、SM趣味の変態と思われるのは流石に抵抗あるよな。
「これは菱縄縛り! 亀甲縛りとは別物よ!」
「……」
怒るのそっちかよ……。どう違うかさっぱりわからないよ。
「ま、まあいいや。それでなんでこんな縛り方してるんだ?」
「ん~と、カナメが好きかなって?」
やめろ理不尽に俺を貶めるの。そんな趣味ないからな。
てかお前ゴブリンも縛ってたけど、もしかしてアレも俺向けのサービスとか言わないよな?
アホみたいな会話をしている間も、女性は一層震えを大きくしていた。そうだよな、自分縛られている被害者だもんね。とりあえず猿轡だけでも外してあげよう。苦しそうだ。
結び目をほどくため、後ろに回りこもうとすると必死の形相で身体を動かし少しでも俺から離れようと後ずさった。
いや確かに現状だとそういう態度になっちゃうかも知れないけど傷つくわー。
「大丈夫、口の奴を外すだけだよ」
そう宣言して再度回り込もうとするも、また逃げられる。何で? オイラ怪しいもんじゃないよ!
縛られ、猿轡までされているのに無理やり動いたものだから、息が上がり顔を真っ赤にしフーフーと鼻だけで必死呼吸している。動いた際に、胸が強調されるように更に縄が食い込んでなんかエロい。そしてデカイ! なにがなんては要らないだろう? ユリアに無いものさ。上気した顔に食い込んだ縄……SM趣味はなかったけど何かグッとくるな。
「カナメ」
じっと見ていた事に気づかれたか? 後ろから掛けられた声に必要以上に驚いてしまった。違うよ、俺は猿轡をとって上げようとしただけで別にユリアとの貧富の差を確認してたわけじゃ……。
「ココ! この胸の所が菱形だから菱縄縛りなの! 亀甲はココが六角形になるから!」
……聞いてねえよそんな事は。
一先ず後ろに回ることを断念し、的はずれな事を言っているユリアに猿轡を外してあげて欲しいと頼む。
「騒ぎだして五月蝿いだけよ。そのままでいいじゃない」
「いや呼吸とか苦しそうだし、頼むよ」
それに会話出来た方が誤解も解きやすいだろ?
「はぁ、わかったわ。でもあなた騒がないでよ」
コクコクと高速で頷くと女性。
ユリアは後ろに回らず横からグイッと猿轡を下に引っ張りおとした。俺もそうすれば良かったかな? でも伸ばした手も避けられたら心折れそう。
「こ、殺さないで……」
第一声が命乞いか。俺、どんな風に見られてるのだろう。
「誰にも言いませんから……」
何のこと……ひょっとして泣きながらユリアに抱きついて頭撫でられていたの見られたのか。それなら生きて返せないな──。
とか言わないよ! 口止めはするだろうけど。でもどこから見てたんだろう?
「何時から起きてたの?」
「その女が目を醒ましたのは、カナメがちょうどゴブリンを刻んでいた時よ」
あーあれか……無心になってやってた時だな。確かに無表情でゴブリン切ってた奴が近寄ってきたら怖いだろうな。
「あの私、本当に誰にも……」
「ちょっとあなたは黙っていなさい。今は私が話してるの」
「はい」と小さく返事をしてまた黙る女性。名前位聞きたかったのだけどな。ユリアさん他人に厳しいな……巨乳に厳しいのかな? 俺と話してるときと全然違う。
「で、どうするの?」
「──選択肢を教えてくれ」
どうするだけじゃわかりません。
ゴブリンの時と同じなら逃がしてあげる一択だけどな。勿論口止めはするけど。どこまで強制力があるかな?
「基本は同じよ。殺すか。逃がすか。奴隷(支配)にするか。あとはそうね、あのゴブリンに与えるもありかしら?」
なにその最後の選択肢? ゴブリンに与えてどうするの?
「決まってるじゃない増やすのよ」
「やめ……」
思わずと言った感じで声を出した女性をジロリとユリアが睨む。つまりユリアが言っているのは、エロ同人でよく見る展開だ。でも、それは余りにも……。
「なに? 自分が童貞なのにゴブリンが先に良いことするのがそんなに嫌なの?」
「そんな事思ってねーよ」
あと童貞でもないからな!…… 多分。
ゴブリンに襲われる女性……「嫌ー!」とか叫びながらも次々と犯されていく。エロゲーとかでは良くみる展開だけど現実にはちょっとNGだよな。可哀想すぎる。
「ひっ……」
女性が俺を見て悲鳴をあげる。やめて心が痛む。
「カナメ後ろよ」
気がつくと俺の後ろにゴブリンがいた、股間を膨らませて。よかった俺じゃないのか。
「まてまて、お前に渡すつもりはないぞ」
そう言うと一瞬首をかしげ、スゴスゴと入り口の方に戻っていく。あそこから会話聞いて来たのか?
「流石に聞こえないでしょ。カナメが変な想像したんじゃないの? それにゴブリンが反応して来たのかも」
ユリアが冷たい目で見てくる。女性の目も心なし冷たい。仕方ないだろ『女』『ゴブリン』なら大抵凌辱系の定番だし。
「どうするの?」
「俺としては逃がしてあげたいのだけど──」
女性の冷たい目が希望に満ちた目に変わった。現金なもんだな、でもゴブリンの相手から解放ならそうなのも仕方ないよな。
「逃がすはいいけど──」
そこまで言うと、ユリアは俺ではなく女性の方を向き。
「あなた一人で帰れるの? ちなみにここは『人食いの森』よ」
途端に女性の顔がまた絶望に染まり、体からは力が抜けた。
何々どういうこと? 何か物騒な名前が出たけど。
「ここの場所を教えてあげたのよ」
「だからそれで、何でこんなもう駄目みたいな顔になるんだよ」
「そうね、少し地理と歴史の勉強をしましょうか。あなたはその間に、自分の身の振り方を考えておきなさい。ちなみにカナメは『逃がしてくれる』らしいわ。でも『ここから』であって村までじゃないからね。あなた一人で帰ることが前提よ」
相変わらず女性は項垂れたまま、ピクリとも動かなかった。心が折れたらこんな感じになるのかな? しばらくは放っておいてあげよう。
そしてその間にユリアはホワイトボードを引っ張ってきて、何時もの女教師スタイルである。
「さあお勉強の時間よ」




