外道の勇者、ジョシュア
東の大陸の端にある国、ヨハネ共和国は水や農作物、石油や金などの鉱物に大変恵まれたところである
しかし、恵まれているが故に欲に溺れてしまった者達がそれらの資源を求めて争いを始めるようになってしまった
この世界の人々はその者達が繰り返す戦争や虐殺から必死で生き延びなければならない
国の南、風の民の街アクアクラントは豊かな風と多くの水源に恵まれた街だった
しかし隣国、イリスの者達は街の水源を強奪しようとし、大虐殺が始まった
「止めてくれ!
頼むから命だけは助けてくれ!
助けてください!
あ、あーーーー!!」
「お願いだから私の子供を誰か助けて!」
「お母さん!、助けてー!」
「いやーーーー!!!!!」
街は悲鳴で溢れていた
豊かな風は街に放たれた火を豪火にし、今は火の海となってしまった
しかし、この国の一部の若者は勇者を志し、このような脅威を鎮圧していた
この街にも1人の勇者がおりこの大虐殺を止めようとしている
その勇者の名前はジョシュア・クライステス
2つ名は外道の勇者
その、あまりにも容赦のない、非人道的な戦い方からその二つ名は付けられた
「へへへ、大人しくしろよ
大人しくすれば痛くはしねえさ」
「お父さん助けてーー!」
「ユーリ!!」
「騒ぐな!
騒ぐとどんどん痛くなっていくぞ」
「痛い死に方をするのはお前の方だ
残念だったな」
先程まで女の子を殺そうとしていた男はゾッとした
自分の胸にその勇者の腕が回され、首には短刀が突きつけられていたのだ
「お前は・・・!」
次の言葉を発するまもなくその男は首を掻き切られた
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
少し担当の入りが浅かったようだ
そしてトドメに胸元をグサリとさし、大量の血しぶきと共に男はその場に崩れ落ちた
女の子は助かったが、あまりにもショッキングなシーンを目の前で見せられたせいか、気を失っている
それを気にすることも無く、また次の虐殺者を残酷に倒して回った
あまりにも酷い倒し方なのでもうどちらが虐殺者なのかもわからない状態になっている
「ローラ!!!!」
「お母さん!!!!
嫌だ!
離してよ!」
街の隅では母親の目の前で若い娘が虐殺者から強姦を受けていた
「クソ!
綺麗な顔しながら可愛くない女だぜ!
大人しくしやがれ!」
「嫌だ!
誰か助けて!
お願い!!!」
「こんな所で誰かの助けが来るとでも思ったか!」
「・・・っ!」
「それが来ちゃうんだな〜
おっさん」
そのセリフと同時に強姦しようとしていた虐殺者の左腕がボロっと落ちて血飛沫が出る
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
俺の腕がー!」
首元にナイフを突きつけながら、ジョシュアは虐殺者に尋ねた
「貴様らのボスはどこだ
教えてくれれば命だけは助けてやらなれるかもしれんぞ?」
虐殺者は大量に出血したせいか意識が朦朧としてきたらしいが、命が惜しいらしく弱々しい声で答えた
「・・・街の西の森の中だ」
「え?
どこだって?
済まないがこの街には来たばかりでね
右も左も分からないから案内してくれよ」
「・・・あ、あぁ」
「よっしゃ、行こうぜ」
ヨタヨタと虐殺者が歩き出したが5mくらいした所で背中からブスっとナイフで虐殺者の心臓付近を刺した
「だいたい分かったから、やっぱりあんたは用済みだわ」
虐殺者は即死らしい
その場で崩れ落ち、ピクリともしなかった
「ボスの場所は分かった
でも西の森の中って、反対側じゃねえかよ」
「勇者様!」
先程襲われていた若い娘の、ローラだ
「本当にありがとうございました!」
ジョシュアは驚いた
ロクな殺し方していないから、礼を言われたことなど1度もなかったのだ
「こんな殺し方するやつに言えるなんて大した度胸だな
じゃあな」
本当はかなり嬉しかったが口には出せなかった
ローラは深々と頭を下げていたが、一瞥もくれくこと無く西へ急いだ