ピント
僕たちの関係はいつまで経っても平行線のまま。
決して交わることはない。
幼稚園の頃からの長い付き合いではあるが、関係性は何も変わることはない。
僕が必死にムードを用意しようとも、君は気づいていないようで、ただ茶化すだけ。
未だに君への思いを打ち明けられずにいる。
カッコがつかないままの現状だ。
もう何年も君に対して演じているんだ。
親友としての立ち位置を。
昔から距離感はとても良いと思う。
なんでも話し合える仲でもあるし。
でもこの現状は本音を言えば、とても、とても辛い。
君は僕に相談しやすいって言ってくれる。
だけど、その言葉を発する時は決まって君の恋愛トーク。
このなんとも形容し難い心の中を、バレないように隠し続けるている。
僕の瞳の奥に映る、この笑顔を僕だけのものしたいんだ。
どうすれば、この笑顔を僕のフィルムに焼き付けることができるの?
そっと君の心にピントを合わせてみる。
想像よりも君は、もっと、ずっと遠くに居るように感じたんだ。
このままだと君はいつか、僕ではない誰かと二人で消えてしまうのではないだろうか?
湧き上がる不安に僕はそっと目を背けた。
ユラユラと揺れる陽炎の中で、あいも変わらず立ち尽くすだけのボンクラ。
こんなぼやけている世界だとしても、君の姿だけは歪むことがない。
僕の今の状況は、まるで迷宮の中に閉じ込められたかのように、親友という立ち位置から脱出できない。
脱出できないというよりも、抜け出そうとしていない。
この日常が変わるのが怖いから踏み出せないまま。
食べようとしていたはずのかき氷。
気付いたら原型がわからないくらいに溶けきっていたんだ。
時間は僕を待ってくれることはない。
僕は今、君に会いたいんだ。
すぐにでも。
らしくないけれど、いつにないくらい真面目な声で君を誘ってみるよ。
そしてそのまま君を遠くへ連れ去ってしまいたい。
そしたら、長い間抱え続けていたこの思いも、勢いで伝えることができるかもしれない。
もう一度、君の心にピントを合わせた時に、手が届きそうなほど近くに君が見えたら良いな。
君といれば、どんな些細な一瞬だって煌めいてみえるよ。
幸せは増えたとしても減っていくものではないから。
僕は君と生きていきたい。