「私待つわ」 (ショートショート)
私は結婚35年目の主婦である。夫は既に定年を迎え、私も今年還暦を迎える。
子供たちもそれぞれに独立し、とうとう夫婦二人きりになってしまった。
正直に言うと、夫との暮らしにはうんざりしている。今では話をするのも億劫な程だ。
とは言え、これからも私の人生は続くのだ。 『どうしよう? あ~ぁ、一緒に生活するの嫌だなぁ~、この際いっその事離婚しようか? でもそううなると、その後の暮らしが金銭的に困ってしまうし、、。何処かで交通事故に遭い記憶喪失にでもなっちゃえ、でもって行方不明、、なぁ~んてそう都合良くいく筈もないし、、。』
そんな事を考えていたら~何故かふと、天下名だたる武将達を表現したフレーズが、思わず頭に浮かんだ。
『鳴かずんば~○○〇〇○○〇~不如帰』
ん? もし私なら~~!?
「嫌ならば~失くしてしまえ~不如帰」 (殺人?)
「嫌ならば~終わしてしまえ~不如帰」 (離婚?)
「嫌ならば~亡く(なる)まで待とう~不如帰」(死亡?)
思わずひとりでに吹き出してしまった。
さて~どうしたものだろう~? とは言えやはりここは賢く~結果として天下を取った【徳川家康】に倣うのが一番!
なので~『鳴くまで待とう』「亡く(なる)まで待とう」にする事にした!
仕方がない~先立つものがない以上、選択の余地はない!
っとそこへ、「ただいま」っと夫が帰ってきた。
私の笑っている顔を見て、「何か良いことあったのか?」と言うので、
「ええ、とっても素敵な夢を見てたのよ!」と改めて夫を、今まで一度も見せた事のない極上の微笑みで迎えた。
主婦がこんな風に考えるのは、それ程珍しい事では無いのでは?と思って書いてみました。
そして本日5月5日(アップしたのは4月29日です。)少々手直しをし~より理解し易く致しました。
楽しんで頂けたら幸いに思います。