【プロローグ sideB】ここから始まる夢物語
――友達が欲しかった。
いっぱい話がしたかった。
一緒に笑って、泣いて、喜びたかった。
会いたいあの人はどこに居るのだろう。
同じ時間を同じように過ごしたい、そう思ってはいけないのでしょうか――。
――元々暗い性格だった私は、中学生になってから他の生徒達と馴染めずに孤立していた。
ただ退屈な日々を過ごして、何も得る物もないまま中学三年に進級してしまった。
もう、この退屈な生活も後少しで終わるのだと思う、それと同時に何もせず、何の目標も持たずに過ごしてきたことに焦燥感を感じてもいる。
今私の居るクラスメイト達は私の遥か先を歩いているかのようにも見える。
そして今日もまた、ただ空虚な一日を過ごした……。
――一人、学校から家に帰る。他のクラスメイトはわいわいと楽しそうに数人で集まり、帰っていく。
早い部活だと、もう引退しているものも多かった。
私は元々何も部活にも入っておらず、いつも真っ先に学校から帰っていた。
すれ違い様に私を見る先生の悲しそうな、憐れむような表情がなんだか嫌だった。
――そんな私にも、最近になって趣味が出来ていた。
夜、こっそりと家を抜け出して、近所の海辺まで行って、砂浜に身体を預けるのだ。
この辺りは明りが少ない。それに加えて夜は人通りがほとんど無い。
つまり、星空がすごく綺麗に見えるのだ。満天に広がる星空に波の音がとても心地良い。
私はこの時間がすっかり好きになっていた。昼間の学校に居る時間よりもずっと。
――数ヶ月後、私はクラスメイトが進路の話をしているのを横目に、帰路につく。
私の一日は変わらなかった。進路はまだ決まっていない。もう受験先をとっくに決めている人さえいるというのに。
私が夜に星空を見上げながら想うことはいつだって同じだ。
この退屈な日々を変えてほしい。【友達】が欲しい……。
だから私は、その日空を横切った流れ星にとっさに願った。
「私に、笑って、泣いて、喜び合える程の友達を、ください」と。
――この時の私は寂しくて、こんなことを願ってしまったけれど、きっと本当の友達は願って手に入れるものじゃない。
私はそれをきっと、後々、知ることになる。
それでも、本心から出てきたこの気持ちを、偽りだとは思わない。
だって、私とあの人が出会ったのは、流れ星が起こした奇跡。
――中学最後の年、流れ星を見て、願い事を一つした私は、その日からある夢を見るようになる。
あの人との出会いは、私の中でとても大切な思い出だ。
季節は初夏、私の、初めての友達との少しだけ物悲しい、夢物語。
いつもよりも少し視点が低いように見える私の目の前には、少し痩せている私よりも年上に見える男子。
「――貴方は誰? ここは一体どこ?」
真っ白な服を着て、真っ白な部屋で、私のことをキョトンと見つめていた……。