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当て馬姫の頑張り②

「ねぇ、エファニエル。やっぱり私、いつも通りの格好をしてきた方が良かったんじゃないかしら。」

「まぁ、なんでそんなことを言うの?もしかしてメルクに何か言われた?」

悲しそうな顔でうつむきながら歩くユリアーデを心配したエファニエルはその場に立ち止まって、ユリアーデの頬に手を添える。

「ねぇ、ユリアーデ。私の顔を見てちょうだい。」

エファニエルに懇願されたユリアーデはゆっくりと顔を上げる。

「ねぇ、いつものあなたも素敵だけど、今日はもっともっと素敵なのよ。こんな美しい人は初めて見るぐらいだわ。」

「…そんなの言いすぎよ。」

自分に自信が持てないユリアーデは苦笑して首を横に振る。

「あなた、私の言うことが信じられないの?」

「ひゃっ!」

意地悪く笑ったエファニエルがユリアーデの頬を軽く摘まんだ。

「あなたの親友のこの私が太鼓判を押しているのよ。大丈夫、あなた自身のことが信じられないのなら、私を信じなさい。今日のあなたは美しいわ。あなたは胸を張って堂々としていればいいのよ。」

エファニエルがにっこりと笑って、ユリアーデの体を優しく抱きしめる。

「…ありがとう、エファニエル。」

少しだけ自信を取り戻したユリアーデはエファニエルを抱きしめ返した。

「さぁ、行くわよ!あの男を美しさで骨抜きにしてやりなさい!」

エファニエルはユリアーデの手をとって、ずんずんと廊下を進んだ。


「まぁ、なんて綺麗なお庭なんでしょう。」

ユリアーデは、エファニエルとともに庭園へ到着した。その庭の美しさにユリアーデはもちろん、エファニエルも目を丸くしている。綺麗に整えられた芝生の広場のあちらこちらには桃色の小花が満開となった花木が植えられていて、その枝にはガス灯がかけられて、庭園を暖かい光で照らしてる。その間を縫うように真っ白なテーブルクロスがかけられた机が置かれていて、その上には美しい花瓶の中に色とりどりの花が活けられていた。音楽隊も準備されていて、ゆっくりとしたワルツにあわせて、ダンスを踊っている男女もいる。

「食事もとてもおいしそうよ!ルイスにしてはやるじゃない!」

会場に用意されたビッフェ形式のごちそうに目を輝かせたエファニエルが興奮気味に絶賛した。

「さぁ、ユリアーデ!まずは食事をしましょう。ガルシアン卿はまだ来ていないみたいだし!」

「え、でも、私そんな気分じゃ…。」

せっかくの誘いだが断ろうと思ったが、強引にエファニエルに手を引かれてしまい、そのまま連れて行かれてしまう。

「あぁ、これもおいしそう。これもね。」

「エファニエル、あまりとりすぎてはだめよ。」

調理をしているシェフに対して、無邪気に注文するエファニエルを見て、ユリアーデがクスリと笑う。

「半分は私が食べるわ。」

まだまだ注文を続けようとするエファニエルのお皿を取り上げて、ユリアーデは席へと歩き出す。

「あぁ、まだ食べたいものが!」

「これを全部食べてからよ。」

しょんぼりと肩を落とすエファニエルの可愛らしさに、ユリアーデが思わずにっこりと笑う。それと同時に回りにいる貴婦人や紳士から一斉に大きなため息が聞こえてきた。

(一体どうしたのかしら?)

ユリアーデが無表情に戻って、周囲を見まわすと、特に男性が顔を赤らめていて、ユリアーデと目が合うと、急いで視線を逸らしてきた。

(まるでメルク卿みたい…。)

先ほどのメルクの態度を思い出して、また落ち込みそうになったユリアーデだったが、庭園の入り口から大きな歓声が上がったのを聞いて、そちらに意識を向けた。

「あっ…。」

入口にいたのは、ガルシアン卿だった。相変わらずの色男で、今日は髪を三つ編みにして、リボンで結んでいる。あっという間に周囲に群がってくる貴婦人に甘い笑顔を向けつつ、耳元に口を寄せ楽しそうに談笑していた。

「あぁ、来たのね。…来なければ良かったのに。」

「そんなこと言わないで。」

ユリアーデは仏頂面で、口に食事を放り込むエファニエルの頭を優しく撫でた。

(さぁ、とうとうやって来たわよユリアーデ。しっかりしなさい!)

そうこうしているうちに、ガルシアンは女性を引き連れたまま、パーティー会場の中心へと進み、食事やお酒を楽しみ始めた。

「よし、行ってくるわエファニエル。」

勇気を出すために、あまり飲みなれないワインを少しだけ口にしたユリアーデは頬を少し赤らめながらエファニエルに言った。

「分かったわ。…応援してるわ、頑張りなさい!」

エファニエルから頬にキスを受けたユリアーデはガルシアンの下へと歩き出した。


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