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当て馬姫の恋④

「あら、あなたのドレスを作るのに私がその場にいないなんておかしいでしょ?」

エファニエルが仕立て屋に次の生地を出すように指示しながらユリアーデに笑いかけた。

「そっ、そうなのかしら?」

「そうよ!あ、じゃあ次にこの色を当ててみてちょうだい。」

ユリアーデはエファニエルに言われるまま、自室の鏡の前に立ち、生地を体に当てる。

「あぁ、その新緑色も似合うわ。ドレスの形はやっぱり前回のように大人っぽいデザインがいいわね。メメリもそうおもうでしょ?」

エファニエルが思案顔のまま、メメリに話をふった。

「そうですね、前回のマーメイドドレスはお嬢様に非常にお似合いでした。でも同じデザインですと、少し代わり映えがしない気もいたします。」

メメリが仕立て屋にいろいろと指示を出しながら返事をする。

「確かにそうね…。」

どうしようかしらとエファニエルとメメリが黙り込んでいると、仕立て屋の女性がおずおずと片手を上げてきた。

「あら、何か名案があるのかしら?」

エファニエルが真顔で詰め寄ると、「ひっ!」と小さな悲鳴を上げた。

「エファニエル、仕立て屋の方を怖がらせないでちょうだい。」

ユリアーデが忠告すると、エファニエルが少しだけバツの悪い顔をした。

「ごめんなさいね、何かご意見があられるのならぜひお聞きしたいわ。」

ユリアーデが微笑みながら言うと、仕立て屋も安心したように少しだけはにかんだ。

「あ、あのマーメイドドレスではなく、こちらはいかがでしょうか?体のラインははっきりとは出ませんが、その分、より上品に見えられるかと。甘めのデザインも逆にユリアーデ様の美しさを強調いたします。」

仕立て屋の女性は持参した衣装ケースの中から、ローズピンクのエンパイアドレスを取り出した。胸元には繊細な花の刺繍が施されていて、胸の下のあたりにリボンがあり、そこから切り替わっている。そこから下はふんわりと足元まで幾重にも重なったレースが広がっていた。

「まぁ…素敵。」

ユリアーデはその美しいドレスにうっとりと見とれる。

「本当に綺麗なドレスね…。」

「エンパイアドレスはお嬢様もお持ちになっておりますが、色やデザインが違うとこんなにも華やかになるのですね…。」

エファニエルとメメリが感心したように頷いている。

「ぜひ、一度着てみてはいかがでしょうか?」

仕立て屋も自信のあるドレスだったのか、ユリアーデにしきりに試着を勧めてくる。

「そうね、ユリアーデ一度着てみなさいよ。」

「そうです、お嬢様。私がお手伝いさせていただきますので!」

「あ、ちょ、ちょっと。」

ユリアーデはあっという間に肌着姿にされてしまった。

「ほら、お嬢様!」

「…分かったわ。」

苦笑したユリアーデは仕立て屋が差し出してきたドレスを受け取って、ゆっくりとドレスに自分の体を滑り込ませる。

「あぁ、お嬢様、素晴らしいです。」

「ほんとに似合ってるわよ、ユリアーデ。そのドレスにしましょう!」

メメリとエファニエルがお互いに手を合わせて喜びながら、ユリアーデに提案してきた。

(確かにとても素晴らしいドレスだわ。)

ユリアーデは鏡に映る自分の姿を見ながら考える。上品なドレスはユリアーデの体にしっくりと馴染んでいる。ローズピンクの優しい色合いのドレスに白銀色の髪。そのおかげでコバルトブルーの瞳と真っ赤な唇が非常に色鮮やかに見えた。

「いいドレスだけれど、少し丈が足りないわ。」

「「あら。」」

ユリアーデがくるりと振り返って困ったように笑いながら、ドレスを持ち上げる。確かにドレスはユリアーデのくるぶしより少し上の長さしかなかった。

「お、お任せください!すぐに新しい生地を使ってドレスを仕立てさせていただきます!」

目を爛々と輝かせた仕立て屋が自分の胸を軽く叩く。

「で、でも10日間でなんてそんな無理をさせる訳には…。」

「いいえ!こんなに美しくこのドレスを着こなしてくださるなんて、本当にうれしい限りです!どうか私にやらせていただけませんか?」

土下座せんばかりの勢いの仕立て屋にユリアーデが困惑していると、メメリが前に出てくる。

「…報酬は倍以上払います。お願いできますか?」

「もちろんでございます!それでは!サイズを測らせていただきますね!」

カバンからメジャーを取り出して、仕立て屋は勢いよく返事をした。

「じゃ、じゃあお願いしようかしら。」

その勢いに押されて、ユリアーデはドレスの仕立てをお願いした。そしてパーティーの2日前に見事なドレスがユリアーデの屋敷に届けられたのだった。


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