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鬼は外、布団が内  作者: 吾桜紫苑
第7章 魔王襲撃なんておっかないから帰りたい
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相変わらず無茶苦茶です

「うぅ……オフトゥン……オフトゥン……」

「瑠依がうぜえ……」


 街の惨状を踏みしめて歩けば、オフトゥンの末期は想像に容易い。嘆き続ける俺に、竜胆が冷淡すぎる反応を示すのが納得いかない。


「竜胆のオフトゥンもなくなったんだぞ、なんでそんな冷静なの?」

「あー、菫さんに再購入の負担をおわせるのは心苦しい」

「竜胆真面目すぎね?」


 俺の周りで1番真っ当な感性してるっちゃしてるんだけど、何この真面目さ。


「いや、普通だろ」

「えー。ここまで来たら流石に災害なんだし、仕方なくね?」

「そうじゃなくてなあ……ったく、瑠依は菫さんに甘えすぎ」

「えー」


 ぐだぐだと会話しながら、中央の山付近にある病院を目指す。何気に遠い、帰りたい。今家がないけど。


「あぁ……俺のオフトゥン……」

「話が振り出しに戻った……うっぜえ」

「竜胆が酷い……帰りたい」

 くすんと鼻を鳴らしたその時。


 ボン! と大きな音がした。 


「爆発!?」

「瑠依、上だ!」


 ばっと振り仰げば、飛行船が炎上していた。


 ボン! ボン! ボン!


 しかも、次々とあちこちから炎が吹き上がっていく。


「何してんのあいつ!?」


 乗り込んだ本人の仕業なのは疑う余地もない、というか他にいてたまるかこんな訳分かんない奴!


「自分が乗り込んどいて爆破!? 街の真上で!? 被害考えないにも程がない!?」

「大いに同感だけど言ってる場合か瑠依! 俺達も無事とは思えないぞ、結界は!?」

「竜胆がお袋様達が心配だから置いてけって言ったんだよ!?」

 呪術具半ば取り上げるようにして置いてかせたくせに!


 ぐちぐち言いながらも、確かにやべーので再度結界構築。てか、そろそろ俺も疲れてきたんだけど、神力足りるか……?


「えーと、これとあれとこれをこーして、なんとなくあっちをああやったら……お、出来た」

 なんとか足りたっぽい。ほっとして見上げると、



 ──ドォオオオオオン!



「自重ないな!」

「ホントにな……」


 大爆発して落下してくる飛行船に吠えつつ、結界にお祈り。どうか強度が足りますように……!


 そんな俺の切実な祈りは、幸いにも試されることはなかった。


「なんだあれ?」

「魔法陣……? 何か変だな」


 竜胆の言う通り、飛行船は巨大な魔法陣に受け止められていたんだけど、その魔法陣が何か変だ。文字がぐるぐる溢れて渦巻いてる……うーん、なんかきしょい。


 とはいえ、受け止めてくれるのは有り難い。何かゆったりと移動してるし、あれなら落ちないですむっぽい。


「良かったー……」

「けど、誰だろうな。あれだけの質量を受け止めるなんか、そうそう出来なさそうだけど」


 竜胆が首を傾げてるけど、そんなの俺にはどうだって良い。俺の結界強度を試さないで済んだなら万事解決。


「という訳で竜胆、さっさと病院行こうぜ」

「……ったく」


 促すと、竜胆は諦めたように止めていた足を進めた。並んで歩きながら、ふと思いだして担がれてる2人を覗き込む。

 うっわ、すっげーぼろぼろ。あちこち傷だらけだし、特に足とかずったずた。


「よくこれで逃げてきたなー」

 揺れるだけでもめっちゃ痛いんじゃね、と呟くと、竜胆が首を横に振った。


「足はともかく、他は見た目が派手なばかりでそう深くねえ。血の臭いも然程しねえし」

「え、そうなの?」

「まあ……飛行船にいたっつうから、……人質兼尋問じゃねえか」

「うえ……」


 んな物騒な。血なまぐさい話苦手だってのにもー。


「えー……治した方が良いやつ?」

「出来るならそうしてやれば?」


 あんまり関わりたくないけど、一応出来なくも……あ、ダメだ。


「神力厳しいかも……」

「……珍しいな?」

「結界って持続型だから消耗するんだって」


 久々に大規模な結界張ったら、ペース配分間違ったのかもな。微妙に疲れてる感じあるし、へたばってもなんだから諦めよう。


「つーわけで、プロにお任せで」

「だな」


 うだうだと歩いていた俺らは、次の瞬間視界がふわっと明るくなった。


「へ?」

「なんだ?」

 思わず顔を上げて、目を疑う。

「何あれ!?」


 空を覆い尽くす、幾つもの光の筋。空に向けて打ち上がるようなそれが、次から次へと終わりなく吹き上がっていく。


「……あの時の、魔術使い」

「え?」

「ほら、砲撃防いだ」

「…………は?」


 ぱかっと口を開けると、竜胆も唖然とした顔で空を見上げていた。


「いや、臭いが一緒なんだよ……」

「…………いや、え? ありえなくね?」


 あの防御魔術だって大概訳分かんなかったよ? その後更にこの魔術? 魔力切れで何回死んでも追いつかなくね?



「君達もそう思う? 本当に、彼の魔力量は規格外だよね」



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