相変わらず無茶苦茶です
「うぅ……オフトゥン……オフトゥン……」
「瑠依がうぜえ……」
街の惨状を踏みしめて歩けば、オフトゥンの末期は想像に容易い。嘆き続ける俺に、竜胆が冷淡すぎる反応を示すのが納得いかない。
「竜胆のオフトゥンもなくなったんだぞ、なんでそんな冷静なの?」
「あー、菫さんに再購入の負担をおわせるのは心苦しい」
「竜胆真面目すぎね?」
俺の周りで1番真っ当な感性してるっちゃしてるんだけど、何この真面目さ。
「いや、普通だろ」
「えー。ここまで来たら流石に災害なんだし、仕方なくね?」
「そうじゃなくてなあ……ったく、瑠依は菫さんに甘えすぎ」
「えー」
ぐだぐだと会話しながら、中央の山付近にある病院を目指す。何気に遠い、帰りたい。今家がないけど。
「あぁ……俺のオフトゥン……」
「話が振り出しに戻った……うっぜえ」
「竜胆が酷い……帰りたい」
くすんと鼻を鳴らしたその時。
ボン! と大きな音がした。
「爆発!?」
「瑠依、上だ!」
ばっと振り仰げば、飛行船が炎上していた。
ボン! ボン! ボン!
しかも、次々とあちこちから炎が吹き上がっていく。
「何してんのあいつ!?」
乗り込んだ本人の仕業なのは疑う余地もない、というか他にいてたまるかこんな訳分かんない奴!
「自分が乗り込んどいて爆破!? 街の真上で!? 被害考えないにも程がない!?」
「大いに同感だけど言ってる場合か瑠依! 俺達も無事とは思えないぞ、結界は!?」
「竜胆がお袋様達が心配だから置いてけって言ったんだよ!?」
呪術具半ば取り上げるようにして置いてかせたくせに!
ぐちぐち言いながらも、確かにやべーので再度結界構築。てか、そろそろ俺も疲れてきたんだけど、神力足りるか……?
「えーと、これとあれとこれをこーして、なんとなくあっちをああやったら……お、出来た」
なんとか足りたっぽい。ほっとして見上げると、
──ドォオオオオオン!
「自重ないな!」
「ホントにな……」
大爆発して落下してくる飛行船に吠えつつ、結界にお祈り。どうか強度が足りますように……!
そんな俺の切実な祈りは、幸いにも試されることはなかった。
「なんだあれ?」
「魔法陣……? 何か変だな」
竜胆の言う通り、飛行船は巨大な魔法陣に受け止められていたんだけど、その魔法陣が何か変だ。文字がぐるぐる溢れて渦巻いてる……うーん、なんかきしょい。
とはいえ、受け止めてくれるのは有り難い。何かゆったりと移動してるし、あれなら落ちないですむっぽい。
「良かったー……」
「けど、誰だろうな。あれだけの質量を受け止めるなんか、そうそう出来なさそうだけど」
竜胆が首を傾げてるけど、そんなの俺にはどうだって良い。俺の結界強度を試さないで済んだなら万事解決。
「という訳で竜胆、さっさと病院行こうぜ」
「……ったく」
促すと、竜胆は諦めたように止めていた足を進めた。並んで歩きながら、ふと思いだして担がれてる2人を覗き込む。
うっわ、すっげーぼろぼろ。あちこち傷だらけだし、特に足とかずったずた。
「よくこれで逃げてきたなー」
揺れるだけでもめっちゃ痛いんじゃね、と呟くと、竜胆が首を横に振った。
「足はともかく、他は見た目が派手なばかりでそう深くねえ。血の臭いも然程しねえし」
「え、そうなの?」
「まあ……飛行船にいたっつうから、……人質兼尋問じゃねえか」
「うえ……」
んな物騒な。血なまぐさい話苦手だってのにもー。
「えー……治した方が良いやつ?」
「出来るならそうしてやれば?」
あんまり関わりたくないけど、一応出来なくも……あ、ダメだ。
「神力厳しいかも……」
「……珍しいな?」
「結界って持続型だから消耗するんだって」
久々に大規模な結界張ったら、ペース配分間違ったのかもな。微妙に疲れてる感じあるし、へたばってもなんだから諦めよう。
「つーわけで、プロにお任せで」
「だな」
うだうだと歩いていた俺らは、次の瞬間視界がふわっと明るくなった。
「へ?」
「なんだ?」
思わず顔を上げて、目を疑う。
「何あれ!?」
空を覆い尽くす、幾つもの光の筋。空に向けて打ち上がるようなそれが、次から次へと終わりなく吹き上がっていく。
「……あの時の、魔術使い」
「え?」
「ほら、砲撃防いだ」
「…………は?」
ぱかっと口を開けると、竜胆も唖然とした顔で空を見上げていた。
「いや、臭いが一緒なんだよ……」
「…………いや、え? ありえなくね?」
あの防御魔術だって大概訳分かんなかったよ? その後更にこの魔術? 魔力切れで何回死んでも追いつかなくね?
「君達もそう思う? 本当に、彼の魔力量は規格外だよね」