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鬼は外、布団が内  作者: 吾桜紫苑
第7章 魔王襲撃なんておっかないから帰りたい
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魔王にも色々あるようです

「ほわっつ!?」

 真っ黒な炎って何!? 


「怖いわ! こんなの防げねーよ!?」

 ぎゃあと叫ぶ俺を無視して、竜胆は真剣な目でその炎を見つめている。しばらくして、鋭く息を吐きだした。


「……これも、白蟻と近い力の臭いがするな」

「え」


 何、まだ魔王が湧いて出たの? 馬鹿じゃないの?


「もうやだ帰りたい……」

「今帰ったら確実に死ぬな……ん?」


 竜胆が目を見開いて街を凝視する。なんだろと思って望遠鏡モドキを覗き込むと、白蟻が綺麗さっぱり消えていた。


「へ……なんで?」

「あの炎が、燃やしたんだろうけどよ……」


 魔王が魔王を蹴散らしたって? 何それ仲間割れ?


「意味ワカンネー」

 もう考えるのも疲れてきた。棒読みで呟いた時、周囲には寝てる人しかいないのに、耳慣れない声での会話が。


「これでいいの、レランジェ?」

「はい、あとはこの街の人間たちで対処安定です」


 振り返ると、魔女のような黒衣を風にはためかせる金髪の少女とメイド服の女性が立っていた。メイド服の方はなんか口調がへんてこだな。


 ……ってか、いつからいたんだこの2人。結界張る関係上、この辺りには意識張り巡らせてたよ? 全然気付かなかったんだけど?


 俺らの視線に構うことなく、金髪の子のほうがふわりと欠伸をした。ホラ見ろ、やっぱ眠いよなこんなの。

「ふわぁ……じゃあ帰るわよ」

「了解安定です」

 恭しく頭を下げる、メイド服。なんか……時代感ちがくね? 今、王様とかそういう時代じゃないよ? それともコスプレ?


「待った」


 鋭い声が横から発された。女の子達が、同時に振り返る。メイド服の方が、いきなり身構えた。……あぁうん、竜胆めっちゃぴりぴりしてるもんな。


「そっちの金髪……魔王だな?」

「違うわ。魔帝で最強よ」


 そう言ってウインクする女の子。血のように赤い瞳が異様な感じだけど、よくよく見たら可愛い顔してるなーこの子。


 ……ってか、魔帝ってなんぞや?


「魔帝って何だ?」

「魔王の中でも1番凄いって事よ。燃やしてみせる?」

「やめて!?」


 急におっかない事言い出したので思わず悲鳴を上げる。楽しそうな嗜虐的な笑みが誰かさんを思い出させるよこの子おっかねえ。


 竜胆が一瞬ものすげえ微妙な顔をしたけど、敢えて触れずに会話を続けた。

「……。白蟻を燃やしたって事は、あんたらは味方しないんだな」

「あのような雑魚をマスターが相手にするわけない安定です」

「レージなら、魔王連合だからって警戒するかもしれないわね。でも私はどうでもいい」

「れんごう?」


 なんかまたわけ分かんないのきた。何、魔王って複数いるだけじゃなくてチーム組んでるの? よく世界滅びないな。


「あれを見る安定です」

 指差されたのは、飛行船だった。


「赤地に三日月状に欠けた黒い太陽の旗。あれを掲げているのが魔王連合安定です。もう1つの旗は、魔王の持つ紋章安定です」


「へー」

「……そういや、聞いた事あるな。やっぱり魔王だったのか」


 竜胆が呟いてた。なるほど、おかんメモリにはそんな事まで入ってるのか。すげー。


「今回は、ちょっと手を貸してってレランジェにお願いされたから。これ以上は何もせずに帰るわ」

「それで、はいそうですかって言えると思うか?」

 うん、俺もまあ、魔王がどっかその辺に住んでるって知って、気分は良くないけどな。


 竜胆の険しい態度を見て取ったのか、金髪の子が楽しそうに笑い、メイドが無表情で身構えた。ビリビリと空気が痺れる。


「あら、私と遊んでくれるの?」

「この様な雑魚相手、レランジェ1人で安定です」


「……」

 竜胆が目元を険しくする。緊張した感じは、多分、言う通り魔王相手とか無理ゲーだからだろう。


 ので、俺はきっぱり言った。



「いや、俺はオフトゥン出来ればそれで良いんで。どーぞお帰りください」



「……」

「……」

「……」


 勝ち目のない相手に突っ込んで大怪我するなんて、帰りたい病患者の名折れだ。ここはスルーして俺の安眠を勝ち取るべき。


 ごくごく当たり前な結論──てかこれ2回目じゃん──を口にしたってのに、何故かしらっとした目を向けられた。何故。


「なーんだ、お前つまんない」

「呼び止めておいて無礼不安定です」

「瑠依……お前なあ……」

「なんだよ!?」


 なんで俺が悪いみたいな空気になるかな!? 俺悪くないだろ!


「ふわぁ……眠い。もういいや。帰りましょ、レランジェ」

「了解安定です」


 気の抜けたようにまた欠伸した女の子とメイドのやり取り後、黒い炎が2人を包み込んだ。


「ひっ!?」

 悲鳴を上げかけた俺の目の前で、直ぐに炎が消えた。2人の姿も跡形もない。


「……何あれ」

「……ま、敵じゃねえっぽいのが幸いだな。多分、滅茶苦茶強いぞあの子」

「じゃあなんで呼び止めたし」


 じとっと見上げると、竜胆が深々と溜息をついた。何故。


 そんなよく分からないやり取りが終わって、一息つく暇も無く。



 極太の魔力砲が、街へと一直線に降り注いだ。



「おふとぉおおおおおおおおおん!?」



 今回登場した2人「魔帝」リーゼロッテとレランジェは、夙多史さまの許可を得てお借りしております。

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