表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼は外、布団が内  作者: 吾桜紫苑
第7章 魔王襲撃なんておっかないから帰りたい
71/116

やっぱおかんには感謝してます

 ひとしきり楽しくない勉強をさせられた後、お袋様に呼ばれて夕飯の時間。……ステーキっていくら何でも常葉を甘やかしすぎじゃないですかね、お袋様。


「ごめんね常葉ちゃん、うちの瑠依がいつも迷惑かけて」

「こんな美味しいステーキもらっておいて文句言いませーん! 幸せー♪」


 見られないレベルに顔をだらしないものにした常葉が、肉にがっついてるのをしらっとした目で見ながら、俺は自分の分の肉を頬張った。


「……てか、ねーちゃんまで出てくるとか、母さん張り切りすぎ」

「ダメ息子が迷惑かけてるんだから、これくらい当たり前よ」

「……瑠依は、要領が悪すぎる」

「ねーちゃんと同じレベルを求められても困るっての」


 100点以外取った事無いよーな人と比べられても困る、疾じゃあるまいし。……ん? ねーちゃんって実は疾みたいな人間やめてる勢?


「瑠依はサボりすぎるんだよー。もうちょっとコツコツやっておけばなんとかなるよう」

「そこで頑張ってオフトゥンが減るのは困る」

「拓君達みたいに、お布団の中でお勉強すればー?」

「オフトゥンの中ではゲームかマンガだろ!」

「瑠依?」

「ひっ」


 お袋様、その冷ややかに笑うのやめて。超おっかない帰りたい。


「……じゃあ、机に向かって勉強する。私だって最低限は講義出てる」

「最低限で帰れるねーちゃん超羨ましい」

「るーいー、今の状態じゃあ大学進学なんて夢のまた夢だよー?」

「常葉ちゃんの言う通りね」


 ……なんてこった、俺の味方が一切いない。帰りたい。


「大学か……来年受験になんのな」

 竜胆がぽつんと呟いた。耳敏く常葉が反応する。


「竜胆君はどこに進学するのー?」

「え、あ、いや、俺は考えてないよ」

「えー、なんで?」

「いや、なんでって……」


 竜胆が困ったように頬をかいた。助けを求めるように俺に視線を向けてくるから、軽く頷き返す。


「どっか行けるとこ受験すればいんじゃね? 紅晴市って大学ふたつだよな?」

「おい!?」


 竜胆が目を剥いたけど、え、何か変なこと言った?


「うん。付属中高持った私立の大学とー、公立の紅晴大学だね。紅晴大はかーなーりレベル高いから、瑠依には雲の上だけど」

「うっせ」

「あ、ちなみに、雛さんは紅晴大だね。しかも主席!」

「ん。でも入学式の挨拶は断った。参加義務無いものは行かない」

「あれは勿体なかったわねぇ……」

「はあ。……いや、じゃなくて」

「私立の方は学力はそこそこで済むけどー、入学金がっぽり稼いでるよー。中高から通ってると免除ぽいけど、そもそもあそこお金持ち高校だもんねー」

「あー」


 そういやそんなとこあったな。お袋様がのっけから私立なしって言い切ったから、公立1本で受験させられたけども。


「とはいえ、大学は奨学金もあるからー、私も最悪はお父さんに泣きついて私立行くよー。このまま頑張ればギリ紅晴大行けそうだけどね」

「常葉ちゃんは成績が良くて羨ましいわ。瑠依にも見習って欲しいわね」

「あーあーキコエナイ!」

「いや聞けよ……つかそうじゃなくてな。俺は大学行けるわけねえだろ、瑠依」

「へ?」


 いきなりぶった切るように低い声で変な事言いだした竜胆。どした、オフトゥン足りない? 勉強しすぎ?


「何故に?」

「そうだよー、瑠依よりはずっとずっと可能性あるよ?」

「そうねえ、瑠依は高卒就職も覚悟しているけれど、竜胆君ならどこか行けそう」

「ちょっと!?」


 いつの間にか2年後社畜の危険がちらついてる!? 冗談じゃない18から働いて堪るか!


「いや……学費も生活費も、流石にそこまで世話になれませんよ」

「あら、別に良いのよそのくらい。瑠依がお世話になっているもの」

「割に合わなくないですか!?」


 目を剥いてる竜胆に対し、お袋様、常葉、姉ちゃんが同時に首を横に振った。


「だって、この瑠依のお世話だもの」

「十分すぎるくらい大変だよねー。竜胆君、すっごい面倒見良いし、鬼狩りの仕事でも迷惑かけてそうだし」

「ん。どう考えても、逆に割に合わない」

「理不尽!!」


 何故俺がそこまでボロカス言われなきゃならないの!? そりゃ竜胆は超面倒見の良いおかんだけども!


「いや、でも」

「それに、何度も言っているけど、お母さんで良いのよ? こんな良い子がうちの子になってくれるなら大歓迎だわ」

「……何なら瑠依と取り替えで」

「姉ちゃん!?」


 しれっと勘当されそうになってる! 扱い酷すぎね!?


「あ、じゃあじゃあウチに来る!? 私のお兄ちゃんやってくれるなら大歓迎♪」

「お前身内を言い訳にセクハラしまくる気だろ!? 却下!」


 手をわきわきさせて妄想すんじゃねえ変態!


「いやあの、それはちょっと……」

「えー」


 流石の竜胆も身の危険を感じたのか、たじたじとお断り。残念そうな変態あほは無視して、竜胆にきりっと向き直る。


「とゆーわけだ竜胆。我が家的には普通に問題ねえし、進学考えてみれば?」

「…………」


 竜胆が頭を抱えた。諦めろよ、うち親父様もこんな感じだぜ。


「何考えてんだか……」

「帰りたい欲求さえあれば人類みな家族!」

「ねえよんなもん!?」


 そんなまさか、冗談は要らないぞ竜胆? ホラ今帰りたい気分だろ?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ