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鬼は外、布団が内  作者: 吾桜紫苑
第7章 魔王襲撃なんておっかないから帰りたい
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オフトゥンは独占したい派なのです

 オフトゥンというのは、本来独占されるべきものだと、俺は思う。


 だってそうだろ? オフトゥンを堪能するってのは、ゴロゴロうだうだ、思う存分手足を伸ばし寝返りを打って満喫することを言うんだ。


 仮に2人で共有するとする。どちらか1人でも寝相が悪ければ、片方は蹴られ殴られ、最悪愛しのベッドから蹴落とされる。最悪だろ?

 そうでなくたって暑苦しいし、何より狭い。手足を伸ばしても互いにぶつからないようなでっかいベッドがあればいいのかもしんねえけど、そんな高級ベッドとこの先縁があるとも思えないし、何より、俺は狭くても良いから独占したい。



 だから、俺は思う。



「うーん、竜胆君ってば、もの少ないねー。瑠依のものをぽいってして、てきとーに置いちゃえばいいのにー」

「い……いや、俺も一応間借りしてる身だから、そういう訳にもいかねえし……」

「まじめだなー♪」



 この我が物顔で人のベッドに転がるこの幼馴染(常葉)、誰か引きずり出してくれと。



「……常葉」

「なーに?」

「出てけ!」

「やーだ♪」

「ざけんな!? せめて俺のオフトゥン返せ!」

「だが断るっ」


 めっちゃ楽しそうだなおい、良い度胸じゃないか。俺からお布団を取ることが如何に怖ろしい事なのか、思い知らせてくれる……!


 ぐいと腕まくりする俺を、竜胆が押さえ込む。溜息をつくなおかん、俺の戦いはここからだ!


「瑠依が悪い」

「何故に!?」

「……何で﨑原さんがうちにいるか、言ってみろ」

「ぅぐっ」

「瑠依が赤点取りまくって、お母さん怒らせたからー♪」

「うっせ!!」


 その通りだけど! せめてオブラートに包んで!


「あっそうだ竜胆君、私のうちにあるダンベルあげるっ! 竜胆君って前腕の筋肉と上腕の筋肉のバランスがときたま崩れてるから、運動後に調整するといいと思うんだ♪」

「い、いや、いいよ」

「遠慮しないでー! ついでにあれもあげるよう、ハンドグリップ! にぎにぎして握力鍛える奴! あれもすっごくいいから♪ 竜胆君なら40キロくらい余裕だよねー!」

「お前もう帰れよ!?」


 かと思ったら竜胆に情熱に任せて迫ってるし! 何を筋トレさせて更に自分の理想に近づけさせようとしてやがる!?


「ハウス!」

「私の今のハウスはこの微妙に汗臭いベッドだもん!」

「男子高校生だからある程度は仕方ねえだろ! てか臭いなら出てけ!!」


 微妙に気になるような事言うんじゃねえ!?


「ああもう帰れよ常葉! 俺がオフトゥン出来ない!」

「「させないためにいるんだろ(でしょー)」」

「ちくしょう!!」


 こんな時ばっか声を揃えてくんなよ帰りたくなる!



 ……そろそろお分かりの通り、俺の点数が、お袋様にばれた。


 一応今回はすれすれで全教科赤点じゃなかったんだけど、それでも「すれすれ」なことには変わりなし。……しょうがねーじゃん、物理とか平均が50点未満だぞ? どうやって赤点回避するの、ばかなの?


 って主張したけど聞き入れて貰えず、しばらくは勉強をしなきゃお小遣いなし。俺のゲーム代……。

 で、俺が勉強をちゃんとするようにって見張り要員、かつ報酬としてご飯ご招待として、常葉がうちにいるってわけだ。


「あぁもう……テストまでまだまだ時間あるのに……」

「まだまだって、もう1月後だよー? 早い子なんてそろそろ問題集に手を付けてるんだから、瑠依みたいなお馬鹿さんは尚更やらなきゃ」

「馬鹿じゃねえし。やればうちの高校受かる程度には出来るし。帰りたいだけで」

「言い訳ここに極まれり、だなあ」


 竜胆が呆れ返った声で言うけど、俺はそんなんより帰りたい。


「そうだよ瑠依? 彰君も拓君も言ってたじゃん、『オフトゥンするためには如何に最短時間でやるべき事を済ませてオフトゥンを手に入れるかが大事かだ』ってさー。もうちょっと普段からこつこつやってれば、少なくとも赤点補習は回避出来て、おうち帰れるよー?」

「それはそれですげえ理由だな……瑠依の親戚って……」

「その分テスト勉強に時間費やしてたらプラマイマイナスじゃん、俺は俺がうだうだしたい時にうだうだするんだ」

「瑠依がうだうだしたい時にうだうだ出来るのって、ほとんどないんじゃないのー?」

「……確かに」

「うっせ!?」


 納得するな竜胆、確かに最近鬼狩り関連というか疾関連というか、とにかく帰れない日々が続いてるけど……!


「というかー、瑠依のお母さんが「最低限の勉強しないと何もさせない」って言ってる以上ー、私も瑠依にお勉強教えないといけないんだよ? 瑠依だってお小遣い0円生活だし、スマホ買ってもらえないんでしょー?」

「うぐぬぅ……」


 ……ぶっ壊れたスマホ、修理に出したけどまた直ぐ壊れやがったんだよ。新規買い換えは次回のテスト結果が赤点回避するまで禁止とか無茶言われた、帰りたい。


「だからほーら、お勉強しないと♪ 特別に今回は次回のテストのヤマ張りまでやってあげるからー、ちょっとぐらい瑠依も頑張ってよう」

「……瑠依。流石にここで﨑原さんの厚意をフイにしたら、今度こそベッド叩き壊すぞ」

「鬼!?」


 なんか竜胆がとんでもねえ脅しを覚えちまって、辛い。俺の安穏は一体どこに……。


「瑠依の自業自得ー。あ、でもでも、竜胆君がベッド壊すならそれまではしなくてもいーよ♪ それはそれですっごく見たい!」

「見たいのか!?」

「もう黙れよ変態!?」


 少なくともこの変態が幼馴染みな限り、精神的な平和は保たれない気がする。マジで、誰か見た目が良ければ何でも許せちゃう幼馴染みの女の子といちゃらぶしたい系男子、俺と変わって?


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