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鬼は外、布団が内  作者: 吾桜紫苑
第4章 何でこんな主なんだろう。
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はぐらかされた気もするけど、まあ良いか。

「で? いつまでも黙ってるわけにはいかねえだろ。どうするんだ」

「あー……」

「しばらく言う気はなさそうだな」


 言葉を濁しただけで見抜かれ、疾に呆れた眼差しで射貫かれた。黙って苦笑いを返す。



「なら、狂うな」



「は……?」

 何を言い出すのかと見返せば、疾はつまらなそうに手元で何かを弄っていた。


「瑠依が寿命を迎えるか、契約を解くか。そのどっちかまで狂うな。それで済むだろ」

「……そりゃ、そう出来たら1番だけど」

「つーか狂って殺されるの前提でモノ考えてるから狂うんじゃねえの。真っ当に生きて死ぬと思えば良いし、何より——死ってのは存外、間近に存在するもんだぜ」

「え?」

「任務中に殉職する可能性を考えた事もねえのかよ……それで死ぬのが怖いとかよく言うぜ」

「……あ」


 命懸けと呼ばれる鬼狩りならば死にかねないだろうと、そう言われてはっとする。全く考えてなかった。


「……疾は、考えてるのか?」

「たりめーだろ。趣味含め、いつどの瞬間で死ぬか分からねえって覚悟も決めないで、戦いの場に身を置くかよ。馬鹿るいじゃあるまいし」


 あっさりと言いきられて、息を呑む。そんな俺を横目で見て、疾はにやりと笑う。


「ま、簡単にくたばってやるつもりはねえがな。まだまだ面白いもん見てねえしよ」

「面白いもん?」

「こっちの話。で? いつ狂って殺されるかって怯えて毎日を過ごす方が、いつ殉職するか分からねえって覚悟決めて生きようとするより楽しいってマゾかお前」

「え、いやそれは……なんかやだな」


 自然と出て来た答えに、自分で驚く。疾がにいっと、何とも腹の立つ笑いを浮かべた。


「ならそれでいいだろ。それでも狂って、あの馬鹿が動けねえなら、俺が馬鹿の尻蹴飛ばして契約者の努め果たさせるから安心しろ」

「え、そこは疾がやるんじゃねえの」

「道具の使い潰しみてえな真似を、人間相手にする趣味は俺にはねえ」

「はあっ!?」


 驚愕に目を向くと、疾は怪訝そうな顔をした。いや、これは言わせろ。


「おま、あれだけ瑠依と瑠依を庇う俺を囮にしておいてそれを言うか!? 魔術師の注意を逸らすのに利用して危険な目に合わせといて何言ってんだよ!?」


 この間瑠依を庇うの、結構大変だったんだぞ。そう言うも疾の表情は小揺るぎもしなかった。


「阿呆。俺にとって道具ってのは、ボロボロになるまで徹底的に使い尽くし、最後は爆破して敵へのダメージにする代物だ。リユースリサイクルをし尽くして爆破処理なんて搾取を人間相手にするほど外道極めてねえし、そもそもそういう輩が気に食わなくて研究所破壊してんだぞ」


 その言葉に、目を見開く。それは、つまり。


「……一応死なねえギリギリは見極めてる、のか?」

「お前本当に俺を何だと……。100パー死ぬ状況で利用はしねえよ、無駄死にさせる趣味はねえ。例外は俺の身が危なくて見捨てるくらいだな。人間誰だって自分の身の方が可愛いだろ、せいぜい自衛しろよ」

「っははは!」


 潔すぎる発言に堪えきれず噴き出した。ここまで堂々と見捨てる宣言するとか、普通ありえねえだろ。


「すっげ、言い切るかよんな事」

「事前に言って実行したって文句を言う馬鹿が後を絶たないからな。有言実行の何が悪い」

「実行内容の問題だろ」

「知るか、都合の良い方向に考えるてめえが悪い」


 悪びれもせずそう言って、疾は俺に背を向けた。


「さて、ここでの訓練も無駄話も終わりだ。まっすぐ帰るか? それとも」

「お、体動かすの付き合う気あるのか」

「竜胆次第だな。気の迷いが動きに出たらはっ倒すぞ」


 不敵な笑みを浮かべた疾に、獰猛に笑って見せる。


「誰に向かって言ってるんだ? ぶっ飛ばすぞ」


「はっ、やってみろ」

 不敵に言い放った疾の後を追って、俺は総合闘技場へと足を向けた。


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