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鬼は外、布団が内  作者: 吾桜紫苑
第10章 新人教育とか帰りたい
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険悪な気配が吹っ飛んだのはありがたいのです

 そんな理不尽な目に遭っているうちに、冥府へと到着した。……もうちょい早く到着したかった、既に超帰りたい。


「やっと来たわね。時間にルーズすぎない?」

「恨みごと言うくらいならいつも通り、時間管理すら出来ない無能を部下に選んだ自分の見る目のなさを恨むんだな、女狐」

「……」


 そして開幕このやりとりだよ、ホント帰りたい。


「るーい」

「もうやだマジで帰りたい……」


 そっとその場から逃げようとした気配を察知した竜胆に、首根っこを捕まれた。ついいつも通りの口癖をこぼしたところで、思いっきり疾を睨みつけていたフレア様が深々と溜息をついた。


「……もういいわ。今日あなたたちに早く来てもらったのは──」

「断る」

「……せめて内容を聞いてから断りなさい」

「受ける前から手続き済ませてるような輩相手に、んな誠実さを示してやる義理がどこにあるっつうんだ、阿呆くせえ。手前勝手にしか物を考えられねえ無能が長を名乗るな」


 わあい、絶好調ですね疾さん。フレア様がとっても引き攣った顔をしてますよ、帰りたい。


「こっちにもこっちの事情があったのよ」

「へーえ、事前説明無く決定事項として手続きしなきゃなんねえ事情なあ。一体全体どんな不手際と見通しの甘さと連携不足が重なれば、んなくっだらねえ言い分が出てくるのかいっそ興味が湧いてきたな」


 楽しげに目を細め、疾は軽く首を傾げた。


「言ってみろよ、女狐。私はこんな要領の悪い仕事を普段からこなしていますって、1から10まで俺に洗いざらい晒しきれば、その恥知らずな蛮勇と殊勝さに免じて、今回の要件くらいは聞いてやるとも」


 勿論受けるかどうかは別問題だけどな、とか付け加えてる疾さん、気付いてて言ってる? さっきからフレア様、もはや無表情なんだけど分かってる? ……気付いてるし分かってるよな、ホントこいつってその気にさせると性格悪すぎる。


「……貴方という人は、本当に」

「何だ? 仕事の不手際も謝罪できないダメ局長」

「……っ」


 せせら笑う疾に、ついにフレア様が立ち上がった。あやっべ、これ話し合いどころじゃなくなるやつだ。


「竜胆、帰ろう。巻き込まれる前にマジで」

「瑠依、あのなあ……」


 非常に真っ当な訴えだというのに盛大に溜息をついてくださったおかんは、けどそこでふと瞬いた。


「お」



「いつまで私を待たせるんですかフレア様! 先輩がたに紹介してくださるんでしょう!?」



 ばあん! と気前よく扉が開かれる音と共に、元気の良い声が聞こえてきた。……ん? この声、聞き覚えあるんじゃね?


「私が1番輝けるよう、鬼狩りとしての技能を与えてくれる優秀な先輩がたはどこ……に……」

「……やっぱりか」


 竜胆が額を押さえて呻く。うん、俺も頭痛くらいはする。この流れでこう来るとは思ってなかった。……あれ、やっぱりってなんぞ。


「優秀な先輩、ねえ」


 嘲るように繰り返し、疾は声の主に目を向けないまま局長に言い放った。


「脳みその湧いた輩に教えてやることなんざあるかよ」

「な……なんで、あんたがここに──」


 呆然と言葉を漏らした声の主──茶味がかった髪の毛を耳の下で纏めた、愛らしさと明るさが同居したような女の子は、そこで言葉を言いさした。大きく息を呑んで、疾を指差す。


 おい、やめとけ? こいつに喧嘩売るのは無理だって、散々酷い目にあって分かったろ? ……学校で。


「す、すがのさ──」

「──喋ったぁ!!???」

「そこ!?」


 どうやら、プライドをへし折る勢いで叩きのめしてきた相手が同業者だったことよりも、今の今までシカトしてた疾が喋ったことの方が衝撃的だったらしい。……ホント何なんだろうな、学校とその他での態度の使い分けっぷりは俺でも別人格疑うし。


 というか。


「てか……なんで菅野さんがここに……?」


 最近うちのクラスでもっとも熱い転入生さんが、どうして鬼狩り局にいるわけ?


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