最初のお話
某県の少し有名な建造物の近くの山。
その中のキャンプ場でキャンプファイヤーをしている一団がいた。全員十字が書かれた半袖のシャツを着ている。
「火の神よー、ははぁー」
「「「ははぁー」」」
その一団は火に向かって片手を上げ、ひれ伏していた。
別に何かを召喚しようとかいうわけではない。ちょっとした風習のようなものだ。
その中にいる少年、森元誠は大きくあくびをした。
(長いな……)
この儀式のようなものを退屈に感じながら誠は思う。
(神様が本当にいるなら、なんだってこんな世界作ったんだか)
全てが不平等にして不条理。仲間意識の低い人類が地球の覇者を名乗り、環境を破壊していくような世界を。
そう思いながらも、誠の中では予想はできていた。
神様は、わざとこんな世界を作ったんだろうと。
そして思う。わざわざこんなゴミみたいな世界を作ったのはきっと、何かを作りたかったからだ。
この世界は工場のようなもので、作られた製品を何処かへ運んでいくのだ。
(……中二病おつおつ)
そんな馬鹿なことを考えてもいるうちに、儀式は終わりそうになっていた。最後に全員である言葉を叫べば終わりらしい。
ようやく終わることに安堵を覚えながら誠は儀式の終わりの言葉を口にする。
「コントラクト!」
力強く叫んで、やれやれと身体を楽な姿勢にする誠を周りの人が驚いた顔で見ていた。
「え? な、なんですか?」
誠はまったく気づいてないが、誠の身体は仄かな光りに包まれていた。
「あのー、皆さんこっちを見るだけじゃなくて何かいっ」
光りが輝きを増し、周りの人の視界を殺した。
光りが消えた時、誠も光りと共に消えていた。
「てくれません――か!?」
誠がいるのは丘の上だった。
綺麗な花が咲いた丘で誠が見たのは、ファンタジーで見たような竜。
「……あ、あれ? 俺麻薬とかやってたっけ?」
顔をバシバシ叩き、目を強く閉じてからもう一度見る。
竜が青白い炎を吐いていた。
「……あははは、知らないうちに麻薬中毒になってたのかー」
乾いた笑い声を出しながら、誠は現実離れした光景に耐えきれずに気絶した。