少し先の話。
それは、少し先の話。
携帯のアラーム音が鳴り響く。
めんどくさくて止める気にもならない。
少し目を開けると日差しがまぶしかった、思いっきり布団を被ると安心感と温もりに包まれた。
もうこのまま寝たままでいたい。
「ヒロキ。」
きっと今日は休みの日だ、間違いない。
「おいヒロキ。」
そうだ、今日はたくさん寝て、起きたらスペシャルなご飯をアカラギに作ってやろう、だからお願いだ起こさないでくださ「起きろ赤羅魏弘樹!!!!」
毛布を引っ張り返される。
途端に寒さと眩しさ、そして頭痛にみやまられる。
「さ、さむい…毛布…毛布が欲しい…」
「お前授業サボるだなんて言うつもりかよ。」
「え?今日って授業あったっけ?」
あ、そういえばついさっきアラームの音が聞こえてた気がする。
アキトからもらったメガネをかけ、時計を見ると起きる予定の時間からかなりすぎていた。
ああ、これはアキトがそろそろくる時間だ。
「アキトが来てるぞ。」
「やばい、何も支度してない。」
アカラギの後ろからひょこりとのぞく誰かを見た、アキトだ。
「ヒロキはやくしないと遅刻するよ。」
「わ、わかってる…あ、ご飯!」
「作ってからとっとと行け。」
タンスから適当なパーカーとスウェットを取り出し着る。
焼かれたパンを飲み込みリュックを背負った。
「ほら、ヒロキ行こう!」
「うん!」
アカラギの方を振り向き笑ってみせる。
「アカラギ、いってきます!」
「いってらっしゃい。」
父さんに別れを告げ、俺は家をあとにした。
アキトとは同じ大学に入る事ができ、今こうして一緒の大学へと行く生活を送っている。
なお、正式に俺はアカラギを親として生きる事にした。
アカラギという言い方は抜けないが。
「ヒロキさ随分そのメガネ変えてないけど度はあってるの?」
「あぁ、あってないよ?」
かなり見えなくなってきている。
メガネをかけると目が悪くなっていくというのは本当だったんだなと実感している。
「え、なんで変えないんだよ!」
「せっかくアキトにもらったのに、変えたくないからだよ。」
誕生日に親友に初めてもらった、最高のプレゼントだ。
生涯大切にしたい。
「じゃあまた新しいの買ってやるよ、もうすぐだろ?誕生日。」
「えへへ、覚えててくれてるんだ。」
「忘れるわけないだろ、泣いて喜ばれたんだから。」
恥ずかしいからそれは忘れてほしい。
アキトは中学の時よりも更にハルトに似てきた気がする。
それを本人に言うとあまり嬉しそうな顔はしなさそうだから言わないでおこう。
でも、前よりは打ち解けているらしい。
素直に良かったと思う。
「アキトの気持ちは嬉しいけど、やっぱこれが良いんだ。」
「同じの買えばいいだろ、度だけ変えて。」
「わかってないなぁ。」
少しバカにしてみせる。
「はあ?…あ、先生きた、授業はじまるな。」
「うん、そうだね。」
シャーペンを指の上でくるくると回してみせる。
アカラギに恩返しをしてみせたいんだ。
そのために僕は今日も、勉強をする。
そんな未来が待っている。