自分探し中?
この物語はフィクションです。
タグに恋愛とありますが、少女漫画のようにどっぷり恋愛していません。またボーイズラブともありますが、設定というだけでどっぷりBLしておりません。
じゃあ何なんだよこれ!と興味を持っていただけた方は無理せず読んでいただければ幸いです。
「なんだよ…やっぱり遊びだったんじゃないか!」
「ちょっと待て、お前が勝手に…」
夜の繁華街で何やらもめている二人の男
涙を流しながら大声で叫んでいるのは小柄な美少年だ
「俺ばっかり好きで祥吾さんは俺の事なんて何とも思ってなかったんでしょ!?」
辺りを気にしながら少年をなだめようとする男が少年の質問に口ごもる
「やっぱり…。バイバイ…祥吾さん、俺は大好きだったよ」
会話の内容からして、どうやらその二人は男性同士でありながら、恋愛関係にあったらしい。
別れを告げると少年は祥吾の前から走り去っていった
走り去る背中を見送った後、祥吾は深いため息を吐くと近くにあった酒場へと足を向ける
洒落た店内ではテーブルに酔いつぶれたサラリーマンやいちゃつくカップル…。カウンターには見るからに仕事が出来そうなスーツ姿の女性が一人静かに酒を飲んでいる
祥吾は女性の隣に腰かけた
「マスター、なんでもいいから強いのちょーだい」
「はいよ」
椅子はいくらでも空いているのに・と不審に思ったのかちらりと視線を向ける女性
「一人?」
視線を向けられるのを待っていたかのように、にっこりと笑顔を向けて話しかける祥吾。だが女性はその質問に冷たい視線を返した後、グラスへと手を伸ばした
「うっわ、冷た!なぁ~話すくらいイイじゃん。俺今振られたばっかで超寂しいの~」
どこからどう見たら寂しい男に見えるのか…。尚も無視を続ける女性を前に本当に寂しくなってきた祥吾は奥の手を使うことに…
「そんな警戒しなくても大丈夫だって~俺女に興味ないし」
それを聞いて女性の手が止まる
「…へぇ…あんたゲイなの?」
「やっと口開いてくれた!と思ったら直球ですねぇ」
女性は無表情のままグラスに視線を落とす
「まぁそーだけどさ」
祥吾は口を尖らせて出されたグラスに手を伸ばした
「それで?…男に振られたの?」
「ん?…あぁ~そっ!道のど真ん中で!大声で叫ばれて大変だったよ。しかも俺が悪いみたいに言われてさぁ~」
「…あんたが悪いんでしょ?」
「うっ…おねーさん、一々言葉がストーレート過ぎるんですけど…」
「女に興味がないと言っても別れてすぐにこうやって女と話してるような奴のどこにいい人がいるの?」
「う~~ちょっとくらい慰めてくれてもいいんじゃない~?」
「慰めてほしいの?」
「…はぁ、負けました…あんた彼氏いないだろ…」
酒が進み、たわいもない世間話や愚痴だの、ほぼ祥吾の一方的な話で二時間程がたった…
祥吾が酔いつぶれている横で女性はグラスに残った最後の一口を飲み干すとマスターに金を支払う
「まいど…っと、この人も連れ出してくれないか?知り合いなんだろ?もぅ店を閉める時間なんだよ」
マスターに頼まれ、男とは初対面だったが、常連でもあった女性は後腐れの無いように仕方なく了承する
「この人が飲んだ金額は?」
聞きながら祥吾のポケットから財布を抜き取る
祥吾の財布を広げるもその中身はほぼ零に近かった…
結局足りない分を払い、祥吾を引きずるように店を出る
祥吾を道端にほおり、自分の財布の中身を見てため息を吐くと、どうしたものかと祥吾に目を向ける
「んあ…あれ…俺いつの間に寝て…どこだここ?」
見覚えのない天井に驚き身体を起こす祥吾。辺りを見回すも、やはり知らない部屋だ。清潔感の漂う色で統一されている。ドアの向こうからテレビの音が聞こえてきた
恐る恐るドアを開けるも人影はない。テーブルに置かれたおいしそうなパンとコーヒーの臭いに釣られ手を伸ばした
「本当、しつけのなってない人…」
驚いて伸ばした手を急いで引っ込める。声のした方に向き直るとそこには昨日の女性が
「ビックリしたぁ~って、え?ここあんたん家?」
「…お金、返してもらうから」
つかつかと寄って来たと思うと目の前に一枚の紙を向けられる
「は?」
領収書だ。そこには祥吾の財布では払いきれなかった分の金額が書かれていた
「酔いつぶれたあんたを道端に捨てていこうかとも思ったけど、額が額だから…私もそこまで寛大な人間じゃないの」
捨てていこうと考えた時点でちっとも寛大ではないが…
「マジか~俺こんなに飲んでたぁ~?」
「仕事は?何をしてるの?」
「え~と…自分探し中?」
「は?」
「目的が無いよりかいいだろ?」
にっこりと笑ってみせる祥吾
「つまり…無職ってこと?」
「そーとも言いますね…」
大きなため息を吐きながら頭を抱える女性
「長くなりそう…利子つけたいくらい」
ぼそりと独り言をつぶやく女性に向かって更なる追い討ちをかける祥吾
「あとさ~俺家無しなんだよねぇ~」
「…」
「今まではその~恋人の家に住んでたから~」
女性の表情がずんと暗くなる
「バイトして金は返すからさぁ~あっあと、恋人出来たらすぐ移るし!…お願い!監視下に置いとくと思って!ね?」
顔の前で両手を合わせ上目遣い&うるうるの瞳を向ける祥吾
「はぁ、分かった…働いてお金を貯めるよりも金持ちの男を早く見つけてくれる方に期待する」
「あぁ~その方が早いかも~さっすが!頭イ~」
そんな態度に苛立ち睨みをきかせる女性
「わぁ、ゴメンナサイ…」
祥吾が朝食を済ませた頃、女性はスーツに身を包み時間を気にしながら玄関へと向かう
「ここに置いとくから、スペアキー」
玄関の棚の上に何の飾りっ気もないカギが置かれる
「わざわざ作ったの?」
椅子に座ったまま、少し身体を後ろに倒しながら聞いてみる
「そんな訳無いでしょ、それじゃ私会社行くから…」
振り返る事無く靴を履く、出て行こうとノブに手を置いた瞬間、祥吾が話しかけてきた
「あ、ねぇ名前…俺、祥吾!黒田祥吾」
「…守川結衣…」
テキパキと仕事をこなす結衣。そこに一人の男性社員が結衣の肩をポンと叩き休憩に誘う。結衣と同期入社にして成績優秀かつイケメンだけどちょっと口下手な木村だ
コーヒーの入った紙コップを手に外の景色を眺めながら壁に寄りかかる
「神田マーケティングのアポ取れたんだって?」
「まぁ、なんとかね」
「守川さんは凄いな…女性なのにどんな仕事でもテキパキこなすし」
「…」
「俺も見習わなきゃな」
そう笑いながら結衣に目を向ける
「そんな事、前の会議での木村君のプレゼン、とても良かった」
「あれは、守川さんが一緒に考えてくれたから…」
「まぁ、お互いライバルとしてこれからも頑張らないと」
結衣が微笑み木村のもとを立ち去ろうとした瞬間
「あの、今夜…夕食でも一緒にどうかな?」
その時、祥吾の顔が浮かんだ
「…ごめんなさい」
「そっか、じゃぁまた今度」
小さく頷くと結衣は部署へと戻っていった
結衣が仕事を終え、マンションへと戻ってきた。カギを刺すと空いていることに気づく
「あ、おかえり~」
入ると奥から祥吾が明るく手を振る。返事をすることなく部屋へ入るとそれは見るも無残な状態に…。ちらかった部屋を見て愕然とする結衣
「ちょっと…何これ」
「へ?」
「今日一日何してたの?仕事は?見つかったの?」
「え~と…明日!」
プッチンと何かが切れる音が聞こえたような
「あんたの大事なモノ切り落とされたくなかったらさっさと片付けて!」
「はいっっ!!」
祥吾は股下を隠しながら飛び起きるとそそくさと片付け始めた。部屋が綺麗に片付くとほぼ同時に結衣が夕食を作り終えた
「わぁ~うっまそ~」
何も言わずに先に食べ始めている結衣の前に腰を下ろす祥吾
「いっただっきま~す」
結衣はいちいちテンションの高い祥吾に見向きもせず、器用にパスタを絡め取ると口に運び、テレビに目を向けている
「うまっ!やっぱ料理は女だよな~」
その時ピクリと結衣の手が止まる
「今までの恋人なんて誰も料理できなかったもんな~」
食べかけのまま立ち上がり皿を持ち上げようとする結衣
「え?なに、もぉ食べないの?」
「…」
「食べる!俺食べていい!?」
結衣は何も言わずに手を皿から離し寝室へと入っていった
「は?怒ってる?え?」
少し経って、寝室から出てみると祥吾はテレビの前で横になり眠っていた。食器も全て洗われている
「んあ…あれ、寝てた…?」
目を覚ますといつの間にか布がかけられている…カタカタと音がする方をみると、机の上にノートパソコンを広げている結衣の姿があった
「結衣…」
「…何?」
「え?…あっ、えっと…」
無意識に名前を呼んでしまった…
「…シャワー、先に入ってきたら?」
「…うん。仕事?」
「まぁ…」
「そぉだ!俺なんか手伝ってあげようか?」
「いい」
「…」
一度も目を合わせる事無くもくもくと何かを打ち込んでいる。話していても邪魔になるだけだと思った祥吾は風呂場へ向かう
「あ、結衣!」
「何?」
「布、かけてくれてありがとう」
結衣の手が止まる。祥吾は少年の様な笑顔でそう言い残すとすぐに浴室へと入って行った
日付が変わる頃、シャワーから上がった祥吾はつまらないテレビ番組に飽き飽きしながら虚ろな目で結衣を見る。今だPCを閉じる気配のない結衣、それほど仕事が溜まっているのか…
「う~俺先寝るね~?」
返事をする事無くキーボードをカタカタと鳴らしている
祥吾が目を擦りながら寝室へと向かう。パタンと扉が閉まった瞬間結衣の手が止まる
「ちょっと!?」
勢いよく寝室の扉を開く結衣
「ふぇ~?なに?」
「なに?じゃないでしょ!?何で当たり前のようにベッドに横になってるの!?」
「だって眠いも~ん」
「…っ!?」
「いいじゃ~ん。俺、女に興味無いって言ったでしょ~何もしないって~」
横になったまま腕を上げ、ひらひらと振ってみせる。腹も立つがこの様子じゃ時間の無駄だと思い、少し力を込めてドアを閉めた