黄昏の光の舞手
朝が来て、空は晴れ渡っていた。サンクタム・アルカナムから直接派遣された魔道騎士団が、中枢タワーに入った。
「こちらです、皆様」
衛兵たちが、魔道士たちをモンスターの檻へと案内し始める。彼らの後ろを、アーシェンが落ち着いた傲岸な態度でついて行った。
そこに到着すると、彼らはあまりに巨大で恐ろしいモンスターの姿に言葉を失った。
探知魔法によれば、この生物を瞬時に駆除するのは不可能だと示している。しかし、アーシェンが強制的な口調で絶えず急き立てるため、彼らはついに駆除を実行することになった。大きなリスクが伴うと知りながらも。
「駆除を始めてください、魔道士殿。」
アーシェンの顔に歪んだ笑みが浮かぶ。その視線は、有無を言わせぬ圧力があった。
「我々を待たせて疲れさせないでいただきたい。」
「は……はい、アーシェン様……」
封印術師のチームが、イラセスの檻の前に座り始めた。そのうちの一人が、封印のシンボルが描かれた紙片を投げつける。
まもなく、呪文が一斉に唱えられ始めた。
「ドラヴカエルよ、我が怨念を聞け。
古き石よ、我が名の下に砕けよ。
汝が血を呼び、汝が影を焼く。
スルズ・モルヴァンティス……絶対的破壊の門を開け!」
青白い光が、ゆっくりと紙から放たれ始める。
イラセスの駆除は順調に進んだ。何の障害もなかった。
「素晴らしい!」
アーシェンは満足げな顔で手を叩いた。本当は、心の奥底では、そのモンスターが消滅することを全く望んでいなかったにもかかわらず。
「では、次の場所へ移動しましょう。」
魔道士たちはただ俯くだけだった。彼らは抗議することなく、アーシェンの指示に従った。
グラヴェリンチの場所はイラセスの檻から遠くなかったため、彼らはすぐに到着した。二度目に、彼らの顔は再び緊張でこわばった。
「あ……閣下……!」
震える声が、魔道士の一人から漏れた。
「こいつは……我々も、容易に成功する保証はできかねます。」
「構いませんよ……」
アーシェンは体の前で両手をこすり合わせた。その笑みは、さらに不気味さを増している。
「私の命じた通りにやればいいのです。」
誰も逆らう勇気はなかった。彼らは固唾をのむ。
「儀式を始めなさい。そして私を待たせて疲れさせないように。」
その声は鋭く、隠された脅威をはらんでいた。
彼らは再び同じことを繰り返した。封印の紙が投げられ、呪文が唱えられる。
しかし、封印が解かれた瞬間、グラヴェリンチは猛り狂った。負の魔法存在がその体から爆発し、周囲を残酷に浸食していく。
「閣下……申し訳ありま――」
魔道士の長の一人が振り返った。だが、そこにアーシェンの姿はなかった。
「く……そっ!! ハメられたか。」
数秒のうちに、グラヴェリンチの檻は完全に破壊された。壁はたやすく崩れ落ちる。壮麗だった中枢タワーは、今や瓦礫の山と化した。
外では、活動していた住民たちが、最初はただのショーだと思っていた。だが時間が経つにつれ、パニックが広がり始める。
悲鳴、また悲鳴が響き渡る。グラヴェリンチは凶暴にネクサリアの建物を蹂躙していく。
人々は命からがら逃げ惑った。だが、間に合わなかった者もいた。彼らは犠牲となった。
グラヴェリンチは誰彼構わず無慈悲に喰らい尽くす。攻撃が繰り返され、犠牲者は増え続けた。ネクサリアは地獄と化した。
その混沌のさなか、一人の女性が毅然と立っていた。ダークブルーの髪が風に舞い、額には人目を引く赤い鉢金が飾られている。舞い上がる塵芥と瓦礫の中、その体は微動だにしない。眼差しは鋭く、静寂に満ちていた。
背中には金縁の濃紫のマント。腰の鞘には長剣が収められている。胸には金の縁取りが施された青い宝石。その戦闘服は、深いエメラルドグリーンだった。
彼女は多くを語らない。行動を好む。その顔は穏やかだが、感情がないわけではない。ルネルだ。
「ル……ルネルお姉ちゃん! こ、怖いよ!」
エイリンは体を震わせて立っていた。その目は涙で潤んでいる。
ルネルはしゃがみ込み、エイリンと目線を合わせると、優しく妹の髪を撫でた。
「あなたは援軍を呼びに行って。この化け物は、私が一人で相手をするから。」
「で……でも……」
エイリンの言葉が途切れる。彼女の目は、ルネルの背後を見つめて大きく見開かれていた。
ルネルは振り返る必要はなかった。その恐ろしい気配は、すでに感じ取っていたからだ。
「エイリン……」
その眼差しは優しく、しかし断固としていた。言葉なく、エイリンは頷くとすぐに駆け出した。ルネルはその背中を目で追い、妹が安全に遠ざかるのを確認する。そして、体を温め始めた。
エイリンの姿が見えなくなると、ルネルは身を翻した。
「待たせてしまって、申し訳ない。」
その声は落ち着いていた。ほとんど感情が乗っていない。
「始めようか。」
彼女は構えを取り、目を閉じ、呪文を唱え始めた。
「Lux carves through dusk...」
声は平坦だが明瞭だった。呪文の頂点に達すると、彼女は声を張り上げた。
「ソルスティス・スラッシュ!!」
シュオッ!
ルネルが突撃する。その剣はまばゆく輝き、魔法の力でグラヴェリンチの体を切り裂いた。一太刀、また一太刀と、巨大な体に傷が刻まれていく。しかし、ルネルが頭部を狙って斬りかかった時、剣は鈍った。
グラヴェリンチはその隙を見逃さなかった。素早く尾を叩きつける。
ルネルの体は激しく吹き飛ばされ、建物の壁を突き破った。唇の端から血が流れる。
「ルーメン……ガー……ド……」
か細い声が唇から漏れた。体は痛みに震えている。
「ウィル・オブ・ザ・ダスクブレイド!」
ティン!
盾の形をした薄緑の光が灯る。彼女のパッシブ能力が発動したのだ。速度が上昇し、HPが5パーセント回復する。
ブズズッ!!
グラヴェリンチの口から黄色の光が現れ、それと共に電流が流れる。攻撃がルネルに向かって吐き出された。
体が完全に回復する間もなく、再び攻撃が襲う。前回の攻撃ほどではなかったが、彼女を麻痺させるには十分だった。
もはや、その体は立ち上がることができない。グラヴェリンチが近づき、彼女を喰らおうと身構える。
「あ……ぁっ! ……私の力も、ここまで、か。」
ルネルの声は、吐息にほとんどかき消されそうだった。
しかし、絶望のさなか、彼女は微笑んだ。甘く、純粋で、悲劇的な笑み。
「さようなら、伝えられなかった想い人。……さようなら、私の最高に厄介なお姉ちゃん、ルナ姉さん。」
その囁きは、風に託されたかのようだった。
「誰が厄介ですって!?」
その声は、怒りと心配に満ちて爆発した。彼女がよく知る声。
ルネルは息をのんだ。残った力を振り絞り、ゆっくりと振り返る。
「ルナ……姉……さん……」
か細く、そう呟いた。絶望の笑みが再び浮かぶ。そして次の瞬間、彼女の目は閉じられた。意識を失ったのだ。