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はじめて会ったのは、謎めいた案内人ルナだった

まばゆい光の中で目を覚ましたその瞬間、すべてが変わった。

気づけば、ゲームの舞台だったはずの都市「カルテリオン」の真ん中に立っていた。

でもこれはただのゲームじゃない。痛みも、恐怖も、死すらも現実だ。


そして現れたのは、ゲームの中で使っていた美少女キャラ「ルナ」

「ようこそ、エコーテラへ。マスター」

おい、待て。なんで俺が操作してたキャラに、いきなりマスターって呼ばれてるんだよ!?


魔法と科学が交差する異世界「エコーテラ」で始まる、生き残りをかけた冒険

これは、最弱プレイヤーとしてログインしてしまった一人の青年が

予測不能な運命と、美少女パーティーに振り回されながらも

なんとか生き延びようと足掻く、そんな物語である


まばゆい白い光に視界が遮られた。瞬きをしたが、前の世界の影は消えていた。大きな声が耳にこだました。なぜか、何もかもが心地よく感じられた。まるで…自分がいる場所ではないような。


目を開けると同時に、私は小さく呟いた。


「え、私…ここはどこ?」


私はゆっくりと立ち上がった。視線を辺りに走らせた。奇妙だ。何もかもが奇妙だった。私は、混雑した市場の真ん中、壮麗な都市の中心にいた。カルテリオン…その名前がゆっくりと頭に浮かんだ。しかし、なぜそれを知っているのか、私自身も分からなかった。


エコテラの世界では、七つの主要都市が文明の基軸となっていた。それぞれの都市は空路、陸路、そして魔法の道で結ばれていた。それぞれの都市は、政治、経済、そして魔力といった重要な機能を持っていた。


魔法と知識の都市、カルテリオン。エルティラ山脈の谷間に位置し、空中図書館と、今も燃え続ける古い魔法の塔に囲まれていた。魔法使い、学者、そして時の守護者たちが住む街。ゲーム世界の舞台であるはずの場所…今私が立っている場所ではない。


背後から、柔らかな声が聞こえた。耳にこだまする声が、背筋を凍らせるように震え上がった。


「マスター!エコーテラへようこそ。」


思わず顔を向けた。


「き、き、君…!」


人差し指を立て、目の前に立つ人物を指差した。反射的に二歩後ずさりした。目を見開き、体が硬直した。これは…理解できない。


彼女はそこに立っていた。上品な銀の刺繍が施された濃い紫色のドレスを着ていた。光沢のある灰色の髪が、背中を美しく流れていた。サファイアブルーの瞳は、鋭くも柔らかで…普通の人間とは思えないほど完璧だった。


彼女は威厳に満ち、丁寧に頭を下げた。その動作は、まるでゲームのカットシーンのキャラクターのように優雅だった。


「はい、マスター。私は『DNX: Echoes Of Magic』でマスターが操作するキャラクター、ルナです。改めて、エコテラへようこそ。この世界でマスターにお会いできて光栄です。どうかご指導、ご協力をお願いいたします。」


私は凍りついた。驚きだけでなく…別の理由もあった。ルナが頭を下げたとき、私は思わず彼女の胸元をちらりと見てしまったのだ。反射的に、この視覚的な誘惑がどれほど…不快なものか、すぐに悟った。


ルナは体を起こしたが、不適切な場所で止まった私の視線を一瞥した。


「あらあら!マスター、あなたは変態ね。」


顔がみるみる熱くなった。目をそらし、地面が裂けて生きたまま飲み込まれてくれればいいのにと思った。


ルナはくすくす笑った。なぜか、私のぎこちない反応を楽しんでいるようだった。


私はプライドを保とうとした。声は小さく、ほとんど聞こえないほどだった。


「ところで…私はどうしてここにいるの?」


「マスターはまだ、なぜこの世界に飛ばされたのか理由を知らないのですか?」


私は慌てて首を横に振った。


「知っていたら、聞かなかったのに!」


「あ…!その通りです、マスター」


彼は恥ずかしそうに微笑み、片手で口を覆った。可笑しい…でも、ゲームキャラクターのネタにされているなんて、自分でも首を絞めたくなった。


私が返事をする前に、別の声が聞こえてきた。


「ルナ姉さん!」


私たちは一緒に顔を向けた。


小さな女の子がこちらに向かって走ってきた。短い水色の髪がなびき、緑色の瞳は情熱に輝いていた。ウサギ柄のローブを着て、羽根のついたペンダントを揺らしながら走っていた。ゲームの中で一番好きなキャラクターの一人だ。でも、彼女を見た瞬間…


私は凍りついた。私の反応はちょっと…場違いだったかもしれない。


ルナはすぐに私を見て、いたずらっぽい笑みを浮かべた。


「あら!一人の獲物がやってきたわ。ごちそうさまを楽しんでね、マスター!」


顔面蒼白になった。


「え、えーん…」


頭の中の混乱を鎮めようと、小さく咳払いをした。


ルーナはくすくす笑った。


「マスター、あなたは本当にロリコンですね」


刺された。本当に刺された。


少女は息を切らしながら、私たちの前に立ち止まった。


「ルーナ姉さん…」


彼女の短い髪は乱れ、顔はパニックに満ちていた。


「どうしたの、エイリン?」


ルーナは二人の身長に合わせてしゃがみ込んだ。


エイリンは深呼吸をして、ようやく口を開いた。


「やばい!ネクサリアの中心部がサブボス級モンスターのグラヴェリンチに襲われている!」


ドキドキ。心臓が震えた。


ネクサリア。エコーテラのテクノロジーの心臓部。防護ドーム、クリスタルAIシステム、反重力車両、仮想市場。未来都市は今、破壊されつつある。


そして、グレイヴリンチ…高レベル帯でのみ出現するモンスターが…この世界に現れたのか?


「ルネル姉さんはもう耐えられない――」


エイリンの言葉は途切れた。私を見た途端、彼女の目は凍りついた。まるで私の存在に気づいたかのようだった。


ルーナもエイリンの表情の変化に気づいたが、集中力は失わなかった。


「他の皆は?まだ生き残れるの?」


エイリンは頭を下げた。ほとんど囁くような声だった。


「他の皆は…グレイヴリンチに喰われて死んだ。あそこで生き残っているのはルネルお嬢様だけよ」


ルーナは拳を握りしめた。真剣な表情になった。


「連れて行って、エイリン」


私は…ただ黙って彼らを見つめることしかできなかった。体が硬直し、心臓が止まりそうだった。


じゃあ…ここで私も死んだら…元の世界には戻れないの?


私は英雄じゃない。戦士じゃない。私は…この世界で生きていく術さえ知らない、ただの弱い人間です。


わ、私は…


足がふらつき、体が地面に倒れた。視界は真っ白になった。かつて感じたことのない恐怖に、心が沈んだ。


「マスター!……マスター!!」


ルーナの声は不安げだった。彼女の手が私の体を揺すり、名前を呼んだ。しかし、私は返事ができなかった。周りの世界が遠く感じられた。暗く、空虚だった。


エイリンは心配そうな顔でルーナのドレスの裾を引っ張った。


「ルーナ姉さん。もう時間がないの。手遅れになる前に、今すぐルーネルさんのところに行かなきゃ。」


私はゆっくりと頭を回した。視線は虚ろだった。恐怖が心全体を掴んだ。これは現実だった。この世界は現実だった。痛みも、死も、すべてが現実だった。私は逃げることができなかった。


「家に帰りたい…家に帰りたい…」


でも、時間は繰り返せない。そして、私は…ここに閉じ込められているという事実を受け入れなければならない。


ルーナは多くを語らずに頷いた。彼女は立ち上がり、両手を空に掲げた。青い光が彼女の指の周りを渦巻き始めた。


「アストララインヴェール ― フェイズゲート!」


魔法の渦が巻き起こり、輝くポータルが出現し、戦場へと繋がった。


---


ネクサリア北部に到着すると…


私は弱々しく座り込んだ。息が詰まった。壮麗であったはずの街は…今や瓦礫と煙に覆われている。


倒壊した建物。市民の叫び声。辺りに転がる死体。地面は血に染まっている。まるで…地獄のようだ。


エイリンは後ずさりし、ルーナの後ろに隠れた。


遠くに、グレイヴリンチと必死に戦うルネルの姿が見えた。


ルーナは私とエイリンの方を向いた。


「エイリン!レイヴン師匠をあなたに託します。どうか彼を大事にしてください。戦いが終わったら、ルネルと私は戻ります。」


エイリンは頷いた。顔面蒼白だった。


ルーナは手を挙げ、呪文を唱えた。


「アストラライン・ヴェール ― フェイズ・ゲート!」


再びポータルが開いた。エイリンは重力魔法を使って、まだぐったりとした私の体を運んでくれた。


しかし、ポータルを通過する前に…私は呟いた。


「ルーク…助けて。この世界から抜け出すのを手伝って。永遠にここに閉じ込められたくはない。怖い…この世界で愚かな死に方なんてしたくない。お願い…助けて、ルーク…」

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


市場で目を覚ましたと思ったら、いきなり「マスター」と呼ばれ、

そのまま「ロリコン」と言われ、モンスターに囲まれて…心の準備もゼロ。


どうしてこんな目に…いや、何がどうなってるのか全然わからない。


だけど、私はまだ生きている。

そして、ここがただのゲームの世界じゃないことも、もう理解している。


続きを読んでくれる皆さんと一緒に、この奇妙で壮大な物語を進めていけたら嬉しいです。

次の章で、またお会いしましょう。


エコテラにて、お待ちしています。

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