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ルナの怒りと小さな怪物

以前の場所へ向かって歩きながら、ルナの中に憤懣が渦巻いていた。その表情は怒りでめちゃくちゃになり、か細い声で悪態をつく。

「あのスケベでクソな先生!イケメンをちょっと見ただけですぐに我慢できなくなるなんて……」


「最悪!!むかつく。」


道に面して座っていたエイリンは、不意に、不機嫌そうな表情で歩いてくるルナの姿に気づいた。

「ルナ姉さん……?」


彼女は素早く立ち上がり、ルナに駆け寄った。その顔には、好奇の色が浮かんでいる。

「ルナ姉さん……どうしたの? ……なんでそんなに怒った顔をしてるの?」


ルナは多くの言葉を語らず、エイリンの手を乱暴に引いた。その声は冷たい。

「ここから離れるわよ、エイリン。」


エイリンは状況が理解できず、戸惑っていた。その可愛らしい小さな体は、ルナの大きな歩幅に無理やりついていくしかない。引きずられながら、彼女は不満を漏らした。

「ルナ姉さん……もうちょっとゆっくり歩いてよ、手が痛い!」


ルナはエイリンの訴えを無視した。店に着くと、彼女はすぐにルネルに向かって叫んだ。

「ルネル!」


食事をしていたルネルが顔を向けた。口は食べ物でいっぱいで、頬にはパンのかけらがくっついており、その表情はどこか愛らしい。

「んむっ!?」


ルナは妹の隣の空席に目をやったが、そこにレイヴンの姿はなかった。

「ルネル、マスター・レイヴンはどこ?」


ルネルは口いっぱいに食べ物を頬張ったまま、まるで気にしていないかのように平然とした顔で、何かを呟いた。

「んー……んー……んー。」


ルナの眉がぴくりと動き、困惑した表情がはっきりと顔に浮かんだ。

「はぁ……!?」


ルネルはようやく食べ物をゆっくりと飲み込み、平坦な顔で言った。

「知らないって言ったの。」


「はんっ!」

ルネルは、残っていたパンを悪びれもせずに、再び夢中で食べ始めた。


ルナは苛立ちを隠さず、声を荒げた。

「そんなの分かるわけないでしょ!」


ルネルは相変わらず平然とした顔で、もぐもぐと咀嚼を続けながら何かを呟いている。

「んー……んー……んー。」


ますます常軌を逸していく妹の態度に、ルナは拳を握りしめた。その顔は怒りで赤くなっている。考えるより先に、彼女はルネルの手からパンをひったくった。その目は怒りに燃え、鋭い声で妹を叱りつける。

「人が話しかけてる時は、食べるのをやめなさいって言ってるの!」


ルネルはようやく口の中のものを飲み込んだ。その表情は相変わらず平然としており、罪悪感など微塵も感じさせない。その口調は落ち着いていて、まるで彼女の論理が反論不可能であるかのようだった。

「姉さんこそ、私が食べてるの分かってるくせに……どうして話しかけてくるの?」


ルナは一瞬言葉に詰まり、その顔は羞恥と怒りで真っ赤になった。彼女は拳を握りしめ、頂点に達しそうな感情を必死に抑えようとした。その声は、怒りで震えていた。

「こ、この……!」


それから間もなく、ルナは燃え盛る感情のままに、ルネルを一人残して足早に去っていった。店から遠ざかる際、自分がまだエイリンの手を握りしめていることには気づいていない。


ルナの姿が見えなくなると、ちょうどそこにレイヴンがルネルの前に現れた。その声は、困惑に満ちている。

「ルナのやつ、どうしたんだ、ルネル?」


ルネルはゆっくりとレイヴンの方を向いた。口はまだ食べ物でいっぱいで、表情は平坦だ。

「んー……んー……んー。」


レイヴンは、驚きに満ちた表情で、思わず声を上げた。

「はぁっ!?」


ルネルは再び唇を動かし、何かを伝えようとしている。

「んー……んー……」


レイヴンは眉をひそめた。

「何て言ってるんだ? 全然分かんねえよ」


ルネルは、ゆっくりと食べ物を飲み込んだ。

「知らないって言ったんだよ……」


レイヴンは不満げに言った。

「だから、食べながら話されても、意味が分かんないんだって!」


突然、ルナが彼らの近くに再び現れた。その顔には、まだ収まらない感情が浮かんでいる。レイヴンは、ちらりと彼女の方を見た。


ルナは彼を短く見つめた。

「マスター……。私についてきてください。」


彼女はレイヴンの手を優しく引き、まるで何か重要なメッセージを伝えたいかのように、青年を静かな場所へと連れて行った。二人が立ち止まると、その目は鋭くレイヴンを射抜いた。

「マスター!」


レイヴンの声は、緊張で上ずっていた。

「は、はい!?」


彼は俯き、ルナの手に視線を落とした。そこには、エイリンのものと思しき、小さな手が握られている。ルナのサファイアブルーの瞳は、美しく燃えながら、毅然とした声で言った。

「マスターにお伝えしなければならないことがあります。」


レイヴンはどもりながら、まだその小さな手に視線を固定していた。

「えっと……る、ルナ。」


「君が話し始める前に……一つ、聞いてもいいか?」


ルナの声は、きっぱりとしていた。

「もちろんです、マスター! どうぞ。」


レイヴンは、その手をそっと指差した。

「君の左手にあるの、誰の手だ?」


ルナは不思議そうに呟き、自分の左手へと視線を落とした。

「んん?」


その手が引かれると、小さなエイリンの姿が現れた。少女は今、唇を尖らせて立っており、その表情は明らかに、感情を抑え込んだ苛立ちを示している。


エイリンの顔には、無理やり作ったような不敵な笑みが浮かんでいた。抑えられた感情が、そこにはっきりと見て取れる。

「こんにちは、ルナ姉さん。お二人の時間のお邪魔をして、申し訳ありませんこと。」


心の中で、レイヴンは諦めた顔でただ愚痴ることしかできなかった。

『終わった……! また俺がやられる番だ。』


エイリンの出現に、ルナの顔は驚きで固まった。

「え、エイリン!!! い、いつからそこに!?」


エイリンは俯き、目を閉じ、両手を体の横で固く握りしめた。

「いつからって……」


彼女は、毅然とした態度で歯を食いしばった。途端に、黒いオーラが彼女の周りに立ち上り、辺りの空気を重く、息苦しいものに変えていく。

「……姉さんが店で私の手を引いた時からよ!」


二度も同じ目に遭うのはごめんだと、レイヴンはこっそりと、ゆっくりと後ずさり、安全な隠れ場所を探し始めた。しかし、その動きはすぐにエイリンに察知され、彼の歩みは止められた。彼女は鋭く振り返る。

「どこへ行く気!?」


レイヴンはその場で凍りついた。左足はまだ上がったままで、一歩踏み出そうとするポーズで固まり、右足が少し前かがみになった体を支えている。両手は胸の高さまで上がり、指は硬直して下を向き、まるで逃げるか降伏するかの選択肢の間で体が囚われてしまったかのようだ。

「えっと……?」


彼の体はゆっくりと元に戻り、直立する。その表情は恐怖に満ち、反射的に、明らかに痒くもない頭を掻いた。その目はパニックに陥り、周りを見回して言い訳を探している。

「俺は……」


視界が何かを捉えると、彼は偽りの熱意を込めて、すぐさまそれを指差した。

「あ、あの新聞が欲しくて……! そうだ! 扇代わりにするんだ。だって……ここ、すごく暑いからな! はぁーっ!」


彼は、その嘘を信じ込ませるために、大げさな身振りで、手のひらで顔を扇いだ。


エイリンはゆっくりと振り返った。その歩みは静かだが、圧力に満ちており、視線を逸らさずにレイヴンに近づいていく。


心の中で、レイヴンはパニックに陥り始めていた。冷や汗がこめかみを伝う。

『神様! どうか奇跡を……なんでもいい……この小さな怪物から逃れられるなら!』


その祈りは、聞き届けられた。エイリンがレイヴンまであと数歩というところで、一つの声が空中の緊張を断ち切った。キラの声は、鋭く、威厳に満ちていた。

「エイリン!」


エイリンの肩が、驚きでわずかに跳ねた。その歩みが、ぴたりと止まる。

「えっ!?」


キラの目は、エイリンをまっすぐに見据え、揺るぎない。その脅しは、断固としていた。

「その子に触れるな……。もし触れてみろ、罰を与えるわよ!」


レイヴンは、心の中で即座に感謝した。

「神様、ありがとうございます……」


エイリンの表情は、劇的に変わった。先ほどまでの威圧的な声のトーンはたちまち小さくなる。

「き、キラ姉さん!」


彼女の体はわずかに後退した。周りの黒いオーラは一瞬で消え去り、代わりに、悪戯がばれたばかりの子供特有の、無垢な表情へと変わる。彼女は、まるで何もなかったかのように、子供のモードに戻っていた。

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