3 アンダース王国
「これがアンダース王国よ」
街を見上げると凄い大きなお城が目の前に聳え立っていて、周りが明かりに照らされ星のように一つ一つ輝いている。
「うわあ、凄い......!」
これがアンダース王国か! 感心しながら周りをキョロキョロ見渡す。
「あなた子供みたいね」
王女は笑いながらそう言うと
「それよりあなた、これから行くあてはあるの?」
と、聞いてきた。私はハッと表情を変える。
私、お金とか何も持ってきてなかったような......
急に集落を出たので当然ながらここまで手ぶらで来た。お金はもちろん他の荷物など何も持ってきていない。でも、自立したって事にしちゃったから今更言えるわけがない。その時彼女が口を開く。
「何か事情がありそうだし、家に泊めてあげようか」
私は申し訳ないとは思いながら目を輝かせ首を縦に振るのだった。
彼女の家へと案内で向かっているのだが、さっきのお城のような王宮の周りをずっとグルグルしている。心配になり「本当にこっちなんですか」と聞こうと思った時彼女は足を止め、王宮の塀に顔を向け黙る。
しばらくするとお城の塀からいきなりしゃがんで通れるくらいの小さなドアが出現する。
「ごめんなさい。夜は正門からじゃ無くて裏口から行く決まりなの」
そんな決まりあるんだ、と感心しているっていうか、何このドア。そして、ふと疑問が浮かぶ。もしかして彼女の家はここなんじゃあないかって言う事。
「あの......もしかしてこのお城が家なんて事ありますか?」
「ありますよ」
「ありますよねぇ。って......えっ本当にここが家〜?!」
そして開いた扉をくぐり、王宮に入るとキラキラなシャンデリア、肖像画や花瓶、小物。どれもゴージャスだ。そして、同じ格好をしている人が多数いる。
こ、これがお金持ちの家......!?
「なんでこんなに同じ格好をしている人多くいるんですか?」
気になったので彼女に聞くと
「ここ、王立学園の生徒の寮としても使っているから人が多いのよ。その上警備も厳重だからね。あとはメイドや、執事かな」
「あのー寮ってなんですか?」
彼女はビックリした顔をする。寮......ってそんな馴染み深い物なのか。
「えっあなた寮も知らないの?何しに王国にきたのよ......寮はね学生のためのみんなで暮らす家みたいなものよ」
広いからこの王宮を貸していると言うことか。
そして通りすがりの人達は私たちに向かってみんなお辞儀をする。
彼女は「あっ」とポツリと呟くと
「そういえばあなたの名前聞いてなかったわ。名前はなんて言うの?」
「私はアムロアって言います。あなたの名前は?」
彼女はこっちを向いて、
「あ、結構私の顔と名前知られているから知っていると思っていたけど知らなかったのね。私の名前はフィーリアよ。フィリアでもいいわ」
そう言って彼女は自己紹介をする。「結構知られている」と言うのを聞いて、だからさっき通りすがりの人達からお辞儀をされていたのかと一人で納得する。
「改めましてよろしくお願いします」
そう私もお辞儀をした。
そして王宮のメインホールのような場所に着くとフィーリアは「ちょっと待ってて」と言って受付のような場所へ向かう。
王宮ってこんなに広くて綺麗なんだなぁ。
周りを見渡すと無数の部屋、床には赤のカーペットが敷いてある。まるで夢の中の想像を詰め込んだみたい。豪華で派手な色の景色を眺めていると、彼女が戻ってくる。
「ごめんやっぱ全部の部屋を学生に寮として貸していて部屋がないのよ。そしてこんな真夜中にあなたを外に出すのは流石にダメだから、私の部屋で寝ましょう。来て」
そう言って彼女は私の意見も聞かずに強引に私の手を引いて、歩き出す。
「え、ちょっと流石に......!」
今日会ったばかりなのに彼女の人の部屋に泊まるのは流石に遠慮してしまう。
「助けた私の勝手よ。いいから来なさい」
そう言って前を振り向く。連れられていると、金髪の髪が短い青い瞳の男が話しかけてくる。
「フィーリア!今日もお元気そうで何よりだ」
フィーリアはため息をつき、
「はいはい、元気よ元気。そろそろ敬意ってものを学んで欲しいわ」
そう言って軽くあしらった。この二人は友達なんだろうか。
「まあ、別に良いじゃないか」
その男は分からないとでも言うようにジェスチャーをする。
彼女はまたため息を漏らした。
「そういえばその隣の子は?」
「ああ、この子はアムロアよ。今日はここに泊まるのよ」
「あ、どうも」
簡単に会釈をする。
「そうなんだな。今の時期にこの城に来るのは珍しい。俺はジェニだ。今後とも会う機会があればよろしくな」
なんだがこの人から怖い空気を感じるが、そう言って丁寧に挨拶する。
「よろしくお願いします」
私も丁寧に頭を下げる。
「それじゃあ、私達はもう行くから」
「もう、行ってしまうのか。残念だな、でも、俺もこれから用事があるんでな」
そう言って会釈すると彼は前を向いて走って行ってしまう。なんか独特な人だったな。そう思いながら彼の背中を見ていると彼女が「何よ、あの騎士」そうポツリと言うと小走りで私をまた連れて行く。
「また会おう、王女様」