2 私と剣(2)
私は地面に剣をつけたが、遠くに飛ばされてしまった。先程簡単に飛ばされた剣は私が勢いよく重みをつけたもの。しかもカウンターとなれば、魔法をかけるのに遅れて普通は負傷をする。
なのに、フード男は易々とそれを腕で受け止めた上に弾き返された……。
明らかな実力差。でもまだ負けたわけじゃない!
そして助走をつける。次こそは、と剣思いっきりかざす……フリをして剣を思いっきり投げる。
このフェイントは流石に距離的にもよけられないはず!
そう思ったのは一瞬だった。フード男はその場から消え、他の場所へ転移する。
魔法か!しかもこの飛行魔法を扱いながらの空間転移は消費魔力量が相当多いはず……!
持久戦に持ち込めばこっちにもある!
「君、甘いねぇ。この子を助けるには力不足、でもこの子よりはマシだったかもね! 剣だけだったのに凄いよぉちょっとかすっちゃった。戦闘で頭が使える人なんだね♪」
「あなたと違って剣は強いんですよ私は......!」
身体中を感じて息を吐いて、魔力を一気に放出……!強化魔法を使おうと思ったがやっぱりダメか。
「うっ……」
やっぱり魔力を一気に放出すると頭が痛くなる……!
フード男はニヤリと笑い、
「君凄いねぇ。流石、目をつけられてるだけあるよぉー!僕もっと戦いたくなっちゃった♪」
と言った瞬間、フード男表情が一変し、先ほどまで微塵も感じられなかった背筋が凍るくらいの魔力が放たれる。
「さぁ、もっと遊ぼっかぁ♪」
そして上空にあったフード男が一瞬にして空気になる。
また、転移魔法か……!
持久戦に持ち込めれば勝てるなど甘い考えだったと今更感じる。
そしてフード男は真後ろに転移する。
そして素手で攻撃してきたので剣を私の手に戻し防御するが、やはり鉄というぐらいに硬い、速い、そして隙がない。
転移しながらの攻撃は目で追うのは困難だった。
でも、感覚で追いつける……!
防御でせいいっぱいだが、きっと隙は開くはず。それまでじっと攻撃を耐え続ける。
「やっぱり君は素晴らしい! でも、防御だけなのが寂しいなぁ! もっと攻撃をしてくれても……」
いきなりピタッと言葉が止まったかと思うと、フード男は慌ててお腹を見る。そこには少し刺さっている剣の姿がある。
「私の方が一枚上手だね」
フード男はニヤリと笑う。
「そうだ、それでいいんだよ。君の魔法は素晴らしい! でも、惜しいなぁ!」
そう言いながらフード男は私の頭をコツンッと叩く。
優しく叩かれた……はずなのに頭の中がグワングワンし、ノイズが走り視界が歪む。
「また会おうね......しらかみさん♪」
そう言って満足そうにフード男は空中を飛んで空へ帰ってしまった。
「待て」と言おうと思っても言葉をかける力もなく、同時に体の力が一気に抜け、地面にバタッと倒れ込む。その時足音がした。また、敵か......
「大丈夫?」
走って黒髪の長髪の人が駆け寄ってくる。
私はその声に驚き立ち上った。頭がまだちょっとグワングワンするがその人の顔を見ると見覚えがある。
あ、この人は。
どこかで見たことあると思ったが、最初フード男と戦っていた黒髪の長髪の人だ。戦いにのめり込みすぎて人がいるのを忘れていた。とりあえず敵じゃ無さそうで安心する。
「全然大丈夫です。ただいきなり筋肉を使って力が抜けちゃっただけです!」
「私には剣撃とか見えなくて怪我してるか分からないからなんとも言えないんだけど嘘とか無しに正直に言って欲しい」
「そちらは大丈夫ですか? 私よりも先に戦っていたので」
最初に来た時、腕を押さえて戦っていたので心配の声をかける。
「魔法でもう治したわ。それよりもあなたよ」
心配そうに彼女は私の顔を覗くが、あまり探られたくないので少し話を逸らす。
「所でこんな暗い中ここで何をしてるんですか?」
「王にここを見張……ゴホッ。たまたまここに調査に来てたら戦いになったのよ。そういえば、あなたこそこんな夜遅くにどうしたのよ?」
やっぱり、聞かれるか。
事情はあまり言いたくないので自立したと言うことにしよう。
「今日、集落から家を出たんですけど王国の場所が分かんなくて。そしたら魔法の音が聞こえたのでここへ来た感じです」
「私、今から王国へ帰るけど一緒に行く?道なら知ってるわよ。それに、助けて貰った恩人を置いて行くわけには行かないから」
思わぬ収穫でつい「本当ですか?!」と言ってしまう。彼女は頷いて「じゃあ着いてきて」と私に手招きをする。
しばらく歩くとそこには馬車があり、その高級な馬車を目の前に後退りをする。外見は金色で中の椅子は赤で随分とオシャレだ。
「どうしたの? もしかして馬車初めて?」
「初めてですけど、こんな高そうな物に私が座っていいのかと」
彼女はニコっと笑って「フード男と戦ってる所で助けてくれたんだし当たり前よ」そう言って彼女は馬車に乗り込む。
おいでと手招きされたので今更断る理由もなく私も乗り込んで、椅子に座った。
目を開けると目の前には煌びやかな王国が見え、私は彼女の肩を枕にしていた。
慌てて肩から顔を上げ、
「え、あれ。ごめんなさい! 私あなたを枕代わりに!」
「いえ、全然大丈夫よ。それよりあなたに大事が無くて良かった」
彼女はそう言って優しい笑顔でニコッと笑う。
どうやら馬車に乗った瞬間、私は倒れてしまったらしく、馬車の中は横たわることも出来ないので肩に乗せてくれたらしい。
この人優しいんだな、そう思った時、馬車は王国に迎えられるように輝きに包まれた。
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