第80話:雷神の神殿とゼノスの咆哮
焔嵐大陸の焼け焦げた大地を後に、タクミ一行は王都大陸へと急いだ。ストームライダーのエンジンが低く唸り、熔嵐合金の装甲が湿った風を切り裂く。コックピットでタクミがレバーを握り締め、窓の外では木々が風圧に震え、遠くに雷雲が渦巻く雷の神殿が黒い影となって浮かんでいた。雨粒がガラスを叩き、雷鳴が地平を揺らす。
「ゼノスがそこにいるなら、急ぐしかねえ。貴族の切り札をここで叩く!」タクミの声がコックピットに響き、決意が鋼のように硬い。
ストームライダーが森を飛び越え、雷雲の下に突入する。空気が重く沈み、湿った風が機体を叩きつける。ガイストの警告音が鋭く鳴り、コンソールの赤い光が点滅した。
「ゼノス反応確認。距離50メートル、接近速度15m/s。魔脈波動が急上昇中、タクミ!」
タクミが歯を食いしばり、レバーをさらに押し込む。
「迎え撃つぞ、ガイスト!」
神殿前の荒野に降り立つと、貴族の魔獣軍が咆哮を上げて待ち構えていた。熔けた溶岩を纏う「ヴォルガノス」が地面を焦がし、ドロドロと流れる赤熱が空気を歪ませる。雷を帯びた「テンペスタ」が翼を広げ、空を切り裂くたび雷撃が炸裂し、焼けた土の匂いが鼻を刺す。大地を揺らす「ガイアロス」が巨足を踏み鳴らし、土煙が視界を覆った。
タクミが叫ぶ。「貴族の切り札だ! 今だ!」
ガンランチャーが火を噴き、弾丸がヴォルガノスの群れを牽制する。熔けた岩が飛び散り、熱風がタクミの顔を焼いた。ガイストが即座に声を張る。
「エネルギー残量84%。ヴォルガノス正面30度、溶岩弾がトルク450N・mで接近! 右10度旋回で回避可能!」
タクミが機体を鋭く旋回させ、ドリルアームを唸らせてテンペスタに突進する。雷が装甲を掠め、金属が焦げる鋭い音が響き渡った。
その時、森の影から影脈会の残党が乱入してきた。ガレンが剣を振り上げ、風が彼のマントをなびかせる。
「タクミたちの援護だ! 貴族を叩き潰すぞ!」
影脈会の風魔法が吹き荒れ、鋭い風刃がガイアロスの装甲を切り裂く。ザインが短剣を手にテンペスタに飛びかかり、素早い動きで雷を帯びた翼に斬りつけた。ミラが後方で杖を掲げ、淡い光の回復魔法が仲間を包む。風と雷が混じり合い、戦場が混乱の渦に呑まれた。
神殿の入り口からセリカが駆け出し、雨に濡れた声で叫ぶ。服は泥と雷雨にまみれ、髪が顔に張り付いている。
「神殿がゼノスの心臓だよ! 急がないと…!」
雷撃が彼女の足元に落ち、土が弾け飛び、セリカがよろめく。タクミが彼女を一瞥し、拳を握り締めた。
「ゼノスの心臓か…。雷神の槍を奪うぞ、みんな!」
カザンが熔雷槌を地面に叩きつけ、雷鳴に負けない咆哮を上げた。
「熔鉄団の鉄は家族を護る盾だ! 魔獣なんざぶち抜いてやる!」
雷を帯びたハンマーがガイアロスに叩き込まれ、大地が震え、魔獣の巨体が膝をつく。土塊が飛び散り、カザンの笑い声が雷雲を切り裂いた。
リアがエーテル・ノヴァを握り、雷雨の中を進む。足元に魔法陣が輝き、濡れた髪が風に乱れた。
「炎の精霊よ、我が声に応え、敵を焼き尽くせ——フレア・インフェルノ!」
魔法陣から炎の柱が天を突き、ヴォルガノスの群れを飲み込む。鱗が溶け落ち、熱風が戦場を焦がし、焼けた肉の匂いが雨に混じった。リアが息を切らし、「みんなを守るよ」と呟く。
ジンが竪琴をかき鳴らし、雷雲の下で声を張り上げた。弦に雨が滴り、指が震える。
「癒しの水よ、詩の調べに舞え…! 水神アクエリア、降臨せよ!」
光が渦巻き、アクエリアが現れる。巨大な水流がテンペスタを包み、雷を纏う鱗が侵食され、結晶が剥き出しに。アクエリアの槍がそれを貫き、魔獣が悲鳴を上げて崩れ落ちた。水しぶきが戦場に降り注ぎ、ジンが叫ぶ。「詩の力だ!」
バルドが「嵐の双剣」を手に雷撃を切り裂く。雨が鎧を叩き、雷霆の鎧が鈍く光った。
「堅き大地よ、詩の調べに響け…! テラノス、降臨せよ!」
テラノスが実体化し、巨腕がガイアロスを叩き潰す。土煙が上がり、雷が巨躯を照らす。
セシルが「エアリスウィスパー」を振り、風魔法を放つ。雨と雷に髪が濡れ、声が戦場に響いた。
「風よ、詩の調べに刃となれ…! ウィンド・テンペスタ・ブレイク!」
魔法陣が輝き、風刃が魔獣の群れを襲う。テンペスタが悲鳴を上げて墜落し、地面に叩きつけられた音が雷鳴に混じる。セシルが息を整え、「仲間と共に」と呟く。
戦場が雷鳴と咆哮に包まれる中、タクミが「風神の眼」でゼノスの位置を睨む。左目が青白く光り、神殿の奥から低く響く咆哮が空気を震わせた。雨が機体を叩き、雷が大地を焦がす。
「ゼノスが近い…。貴族をぶっ潰して、雷神の槍を奪う! 仲間と共に大陸を守るぞ!」
一行は雷の神殿へと突き進む。雨と雷撃の中を駆け抜け、ゼノスの心臓が近づくにつれ、戦場の混乱がさらに深まった。神殿の石扉が軋み、暗闇の中から巨大な影が蠢き始める——。




