第79話:結界の安息と焔嵐の足音
ヴェールウッドでの1週間の奮闘の末、タクミ一行はヴェルディア大陸と焔嵐大陸を包む結界を完成させた。貴族の魔獣軍がゼノスと共に後退し、緑の大陸と炎の大陸に一時的な平穏が戻った。朝陽が木々の間から差し込み、焼け跡の村に穏やかな光を投げかける。
タクミがストームライダーのそばで泥だらけの手を拭い、仲間を見回す。
「ヴェルディアも焔嵐も守れた。結界のおかげで貴族の動きが止まったみたいだな。」
ガイストがコックピットから冷静に報告する。
「結界の魔脈エネルギー、安定稼働中。ヴェルディアと焔嵐大陸の神殿・祠ネットワーク、異常なし。エネルギー残量84%、次の戦いに備えられるぞ、タクミ。」
その時、セリカが緊迫した声で割り込む。走ってきた様子の彼女の息が荒い。
「王都大陸の雷の神殿が貴族の軍事施設の拠点だよ。ゼノスはそこに…!」
ジンが竪琴を手に、煤がこびりついた指で弦を弾き、低く歌い始める。
「1000年前、雷神トーラスがエアリスの心臓だった。貴族が裏切り、ゼノスを生んだ。エアリスの歌がその歴史を伝える…。」
その声が熱を帯び、風に揺れる。
セリカがさらに続ける。手が震え、髪が乱れる。
「雷神の槍が神殿に隠されてる。ゼノスの弱点だよ。急がないと…!」
タクミが拳を握り、エリナの姿が脳裏をよぎる。
「エリナがヴェールウッドを守ってくれてる。雷の神殿か…ゼノスを倒す鍵がそこにあるなら、行くしかねえ!」
カザンが地面を叩き、熱風に負けじと吼える。
「熔鉄団の鉄で家族を守る! ゼノスなんざぶち抜いてやるぜ!」
タクミが力強く言う。
「次は雷の神殿へ向かう。ゼノスを倒し、大陸の未来を俺たちの手で掴むぞ!」
一行が雷の神殿への決意を固めた後、村では休息の時間が訪れる。
カザンが熔鉄団の仲間と一緒に炉の火を弱め、笑い声を上げる。
「熔鉄団の鉄で大陸を守ったぜ! こんな日は腹いっぱい食うしかねえな!」
彼が焼けた木材を手に持ち火を起こし始め、熔鉄団の戦士たちが肉や野菜を運び込んでくる。鉄板が熱され、ジュウジュウと肉が焼ける音が響き、香ばしい匂いが村に広がる。
エリナが木のテーブルに新鮮な果物を並べ、タクミに微笑む。
「タクミ、結界のおかげでひとまず安心だな。みんなでこうやって笑えるなんて…ありがとう。」
タクミがエリナの肩に軽く手を置き、笑う。
「俺たち全員の力だよ、エリナ。少しは休んで楽しもうぜ。」
リアが木の枝に刺した肉を火に近づけ、目を輝かせる。
「バーベキューだ! みんなで食べると美味しいね!」
セシルが「地神の種」をそっとポケットにしまい、リアの隣で野菜を焼く。
「私もこういう時間が嬉しいよ。みんなと笑いたい。」
ジンが竪琴を軽く爪弾き、穏やかな旋律を響かせる。
「腹が減ったぜ、肉まだか?」
カザンが焼けた肉をジンに放り投げ、豪快に笑う。
「詩人なら歌いながら食え! 熔鉄団の肉は最高だろ!」
バルドが静かに肉を焼く。
「シンダーリーヴスでも、こんな風を感じながら仲間と過ごしたかった。今はヴェールウッドがその場所になってる。」
セリカが木の陰から飛び出し、果物を手に軽やかに跳ねる。
「情報屋も休息が必要だよ! こうやってみんなと食べるのも大事だね。」
タクミが焼けた肉を頬張り、仲間を見渡す。
「結界ができたおかげで、初めて全員で息をつける。」
熔鉄団の戦士たちが鉄板を囲み、村人たちも加わって笑い声が響き合う。火のそばで肉が焼ける音と、風が木々を揺らす音が混じり合い、ヴェールウッドに温かな時間が流れる。
だがその夜、森の奥から不穏な魔脈の波動が微かに感じられた。タクミがストームライダーのそばで立ち上がり、目を細める。
「ガイスト、魔脈反応をチェックしろ。何か来てる。」
ガイストが即座に解析を始める。
「微弱な魔脈波動、王都大陸方向から検出。貴族の新たな動きの可能性あり。結界は安定してるが、警戒が必要だ、タクミ。」
タクミが仲間を見回し、力強く頷く。
「結界で守った大陸を、俺たちの手で未来に繋げる。貴族の動きが何だろうと、次の戦いに備えるぞ!」
一行は雷の神殿への旅路を見据え、バーベキューの温かな余韻を胸に、次なる戦いに備えるのだった。




