第78話:結界の礎と1週間の奮闘
ヴェールウッドの戦場に静寂が戻り、タクミ一行は貴族と魔獣の脅威が緑の大陸と炎の大陸(焔嵐)を壊滅させる危機を感じていた。朝陽が木々の間から差し込み、焼け跡から立ち上る薄い煙が漂う中、タクミはストームライダーのコックピットに座り、埃と油にまみれた手でレバーを握る。
「このままじゃヴェールウッドも熔鉄団の本拠地も貴族にやられる。ガイスト、大陸を守る方法を計算しろ!」
ガイストの電子音が響き、コンソールのデータが点滅する。
「ヴェルディア大陸の魔脈ラインを活用した結界が最適解。必要な条件は魔脈エネルギーの増幅装置。素材は風魔の結晶、水神の杯、地神の種。ストームライダーから魔脈エネルギーを抽出すれば素材を維持可能。大陸全域への展開は神殿と祠を結ぶネットワークで、所要時間は約1週間だ。」
タクミがコックピットから飛び降り、泥だらけの地面に膝をつく。ポケットから紙とペンを取り出し、設計図を書き始める。汗が額を伝い、紙に落ちる。
「魔脈増幅装置だ。風魔の結晶と水神の杯はストームライダーに必要だから、機体から魔脈エネルギーを抽出して転用する。地神の種は注入核に使う。塔の高さ20m、基盤は熔鉄団の熔嵐合金で補強。ガイスト、熱伝導率と応力分布を確認しろ!」
ガイストが即座に応じる。
「熱伝導率0.9W/m・K、応力分布は最大荷重400kNで安定。魔脈抽出効率87%、設計図の完成度95%だ、タクミ。」
タクミが設計図をカザンに渡す。紙には細かい数値と図形がびっしり描かれ、インクが滲んでいる。
「カザン、熔鉄団の技術でこれを鋳造してくれ。ヴェールウッドと焔嵐大陸を守る結界の礎だ。1週間で神殿と祠に装置を設置する。俺の計算に間違いはない!」
カザンが図面を受け取り、目を輝かせる。熔鉄団の炉から漂う熱風が彼の髪を揺らす。
「熔鉄団の鉄が家族と大陸を守る! この塔、1週間で完璧に仕上げてやるぜ!」
熔鉄団の戦士たちが動き出し、炉に薪をくべ、熔嵐合金を溶かし始める。鉄槌が響き合い、赤い火花が宙を舞う。
エリナが村の中心で焼け焦げた木材を抱え、タクミに近づく。煤で黒くなった手が震える。
「タクミ、この村を再建してくれてありがとう。でも貴族がまた来たら…結界、本当に間に合う?」
タクミがエリナの手を握り、力を込める。
「間に合わせるよ、エリナ。ヴェールウッドは俺たちの拠点だ。絶対に守る。」
セリカが木の陰から現れ、軽やかに跳ねながら笑う。服に森の葉が引っかかっている。
「情報屋の出番だね。大陸の神殿と祠の位置、貴族の動き、私が調べてくるよ。結界装置を運んで設置するから、効率よくやれる!」
タクミがセリカに小型の結界起動装置——熔鉄団が予備で作った手のひらサイズの金属塊——を手渡す。
「これを持って神殿と祠に設置してくれ。1週間で頼む!」
セリカが装置を受け取り、森の奥へと消える。
タクミはストームライダーの改良に取り掛かる。コックピットの工具箱からレンチを取り出し、カザンに指示を出す。
「カザン、風魔の結晶用のエネルギー変換器を鋳造してくれ。推進効率を上げるパーツだ。直径50cm、厚さ10cm、熔嵐合金で頼む!」
炉が唸り、熔けた合金が型に流し込まれる。冷えたパーツをタクミが受け取り、機体の下部に取り付ける。ボルトを締める音が響く。
「ガイスト、変換器に風魔の結晶を組み込め。出力20%アップだ。」
ガイストが配線を調整し、結晶が青く光る。
「電圧変換効率1.3倍に向上。エネルギー残量85%で安定、出力25%増。」
次にタクミが熔鉄団に冷却パイプを頼む。
「水神の杯用の冷却コアだ。長さ2m、径15cm、合金で補強。熱負荷を25%減らせ!」
火花が飛び散り、パイプが完成。タクミがエンジン部に取り付け、杯を接続する。
「ガイスト、冷却システムを統合しろ。」
「冷却効率、毎秒6kWの熱放散が可能。ドリル稼働率95%に到達。」
最後に「地神の種」の魔脈を装甲に接続するパーツを鋳造。
「装甲補強用の動的調整プレートだ。30cm四方、5枚作れ!」
熔鉄団がプレートを仕上げ、タクミが装甲に固定。緑の光が走る。
「ガイスト、魔脈でリアルタイム調整だ。耐久力40%増!」
「装甲応力耐性、最大600kN。エネルギー効率8%向上、ドリル稼働率97%、出力30%増。改良完了だ、タクミ。」
カザンが熔鉄団を率い、ヴェールウッドの再建と装置の鋳造を進める。焼けた木材が新しい柱に変わり、結界装置の塔が形を成す。ジンが竪琴を奏でて祠の位置を特定する。
「癒しの水よ、詩の調べに舞え…! アクエリア、降臨せよ!」
アクエリアが現れ、水流が魔脈を浮かび上がらせる。
リアが神殿へ向かい、魔脈を活性化する。
「炎よ、魔脈を照らせ!」
炎が魔脈ラインを焼き、位置を明確にする。
7日目、セリカが戻り、腕に疲れを滲ませて報告する。
「神殿と祠に結界起動装置、全部設置してきたよ。貴族はまだ動いてないけど、時間の問題だね。」
セシルが塔に「地神の種」を嵌め、バルドとリアから魔脈エネルギーを抽出する。
「地よ、大陸を護れ!」
緑の光が空を覆う。リアが力を注ぎ込む。
「雷よ、結界を強化しろ!」
雷が結界に走り、ジンのアクエリアが魔脈を安定させる。
ヴェルディア大陸を包む結界が完成。タクミが強化されたストームライダーから仲間を見回す。
「1週間でやり遂げた。ヴェルディアは守れた。次は焔嵐大陸だ。俺の設計とみんなの力があれば、貴族なんかに負けねえ!」
エリナが微笑み、カザンが肩を叩く。
「家族の拠点を守る塔だ。焔嵐も俺が再建するぜ!」
セリカが軽く跳ねて言う。
「焔嵐の情報も集めておくよ。準備万端にね!」
一行は焔嵐大陸への旅路を見据え、次なる戦いに備えるのだった。




