第77話:絆の証明と情熱の防衛戦
ヴェールウッドの村に戻ったタクミ一行は、戦いの疲れを癒すため木々の間で休息を取っていた。朝陽が葉の隙間から差し込み、穏やかな風が吹き抜ける中、タクミはストームライダーのそばで機体の点検に没頭していた。ガイストがコックピットから報告を始める。
「タクミ、地の神殿での戦闘データを解析した。セシルの裏切り時、彼女の目が緑に光った瞬間、魔脈反応が異常値を示してる。外部からの干渉が検出された可能性が高い。」
タクミが手を止め、目を細める。
「そういえば…『風神の眼』で見た時、セシルの魔脈が乱れてた。不自然な流れだった。あれは彼女の意思じゃなかったのかも。」
その会話を聞きつけたセシルが木陰から近づいてくる。顔を伏せ、静かに呟く。
「裏切る前、頭が痛くて…頭の中で声が響いた。『仲間を灰にしろ』って。私の意志を押さえつける何かがあった気がする。」
リアがセシルの手を取り、心配そうに覗き込む。
「セシル、そんなことがあったの? どうして言わなかったの?」
セシルが小さく首を振る。
「自分でも分からなくて…あの時、私じゃないみたいだった。」
バルドが立ち上がり、静かに言う。
「なら、確かめてみるか。」
彼がテラノスを呼び出す言葉を響かせる。
「我が堅き大地に誓い、生命を護りし絆を結ばん——テラノス!」
地面が震え、テラノスが巨躯を現す。岩石と樹木を纏った守護者が一行を見下ろすと、幻の声が響く。
「セシルの裏切りは貴族の魔導師の仕業だ。心を操り、汝らの絆を壊そうとした。仲間を捨てぬ意志がその闇を打ち破った。」
一同が息を呑む中、タクミがテラノスを見上げる。
「やっぱりそうか。セシル、お前は裏切ってなかったんだ。」
セシルが目を潤ませ、微笑む。
「タクミ…みんな…ありがとう。私、ちゃんと仲間でいられるよ。」
カザンが肩を叩いて豪快に笑う。
「熔鉄団の鉄もそんな操りなんかに負けねえぜ。次は貴族をぶっ潰す番だな!」
ジンが竪琴を奏で、穏やかな音色を響かせる。
「エアリスの歌が真実を証明した。絆があれば、何だって乗り越えられる。」
タクミが仲間を見回し、力強く言う。
「地の神殿を越えた俺たちなら、次の神殿も制覇できる。戦争を終わらせる準備を——」
その言葉を遮るように、森の奥から轟音が轟き渡る。貴族の魔獣軍と影脈会残党がヴェールウッドを襲撃してきた。熔けた溶岩を纏う「ヴォルガノス」、風を切り裂く「シエルフィス」、雷を帯びた「テンペスタ」が群れを成して進軍し、木々が倒れ、地面が焦げる。村人たちの悲鳴が響き、静寂が一瞬で戦場へと変わる。
タクミがストームライダーに飛び乗り、熱く吼える。
「セシル、地の種で村を守れ! 俺たちの絆を貴族なんかに壊させねえ!」
セシルが「地神の種」を高く掲げると、緑の魔脈が爆発的に溢れ出し、村全体を包む巨大な結界が展開する。光が木々を貫き、ヴォルガノスの溶岩弾が結界にぶつかって砕け散る。「エアリスウィスパー」を手に持つ彼女が叫ぶ。
「風よ、敵を切り裂け!」
鋭い風刃がシエルフィスの群れを襲い、羽根が散って魔獣が墜落する。セシルが燃える瞳で続ける。
「私の仲間を傷つけるなら、貴族だろうが魔獣だろうが粉々にしてみせる!」
ストームライダーが空に舞い上がり、タクミが「風神の眼」を発動。200メートル先にゼノスの巨体が浮かび上がる。
「200m先…貴族の切り札が来た! 大陸間戦争、ここで決めるぜ!」
ガンランチャーを手に持つ彼が連続で火を噴き、ヴォルガノスの群れを吹き飛ばす。ガイストが叫ぶ。
「エネルギー残量75%! ヴォルガノス、正面30度から溶岩弾接近。左15度旋回で回避、ゼノスは10m/sで接近中!」
タクミが機体を旋回させ、ドリルアームを手に持ってテンペスタに突進。
「俺たちの村だ! お前らなんかに渡すかよ!」
バルドが「嵐の双剣」を手に地面に立ち、咆哮する。
「堅き大地よ、詩の調べに響け…! テラノス、降臨せよ!」
テラノスが現れ、巨腕がヴォルガノスを叩き潰す。双剣を手に持つバルドが雷と風を放ち、テンペスタを両断する。
「試練を越えた絆は、どんな敵も蹴散らす! 村は俺が守る!」
リアがエーテル・ノヴァを手に持つ仕草で前に進み出る。足元に魔法陣が輝き、全属性の魔力が渦を巻く。
「炎よ、敵を焼き尽くせ!」
炎の柱が天を突き、ヴォルガノスの群れを包み込む。続けて彼女が叫ぶ。
「氷よ、敵を凍てつかせ!」
氷の嵐がシエルフィスを襲い、魔獣が墜落する。リアが涙をこぼしながら吼える。
「私の仲間を守るためだ! 貴族なんかに負けない!」
ジンが竪琴を激しくかき鳴らし、熱く叫ぶ。
「癒しの水よ、詩の調べに舞え…! アクエリア、降臨せよ!」
アクエリアが現れ、巨大な水流がテンペスタを包み込み、雷の装甲を侵食する。竪琴を手に持つジンが水の槍で結晶を貫き、魔獣が膝をつく。
「エアリスの歌は俺たちの魂だ! この村を、仲間を、絶対に守り抜く!」
カザンが熔雷槌を手に持つ勢いで突進する。
「熔鉄団の鉄は燃え尽きねえ! 家族のためにぶち抜くぜ!」
雷を帯びたハンマーがテンペスタを粉砕し、衝撃波がシエルフィスを吹き飛ばす。
戦場が熱狂に包まれる中、タクミがゼノスを睨み、仲間を見回す。
「セシルの結界、バルドのテラノス、リアの魔法、ジンのアクエリア、カザンの鉄——俺たちの絆があれば、ゼノスだって倒せる! 大陸の未来をここで守るぞ!」
結界が魔獣を弾き、ストームライダーが空を切り裂く。テンペスタが最後の断末魔を上げ、シエルフィスが地面に墜落し、ヴォルガノスの溶岩が冷え固まる。魔獣が全て倒され、戦場に一瞬の静寂が訪れる。その時、200メートル先でゼノスの巨体が低く唸り、ゆっくりと後退を始める。鉄の足音が遠ざかり、朝霧の中にその影が溶けるように消えていく。
タクミがストームライダーのコックピットからゼノスの背中を見据え、息をつく。
「また後退か…貴族の切り札も、俺たちの絆には手が出せねえってことだ。」
ゼノスの咆哮が遠くでかすかに響き、タクミ一行は情熱と絆を胸に、戦争の決着へと挑む準備を整えるのだった。




