第74話:地の神殿と裏切りの瘴気
緑の大陸の森の奥深く、タクミ一行は地の神殿に辿り着いた。苔むした石造りの神殿は長い年月を経て自然と一体化し、地の魔脈が青緑色の光を放ちながら石壁を這っている。入口の壁画には「地神テラノス」が描かれ、森を守る神官たちと共に大地を育む姿が薄れた色彩で残っていた。
ジンが竪琴を手に軽く弦を弾きながら森を見回す。
「1300年前、エアリス文明が地の魔脈で森を育ててた。貴族が略奪して隠された歴史が、ここに眠ってるんだ。」
その穏やかな音色が森のざわめきと溶け合う。エリナが壁画に目をやり、手を震わせる。
「ヴェールウッドの祖先は神官だったんだね。貴族に滅ぼされて、私たちが逃げ延びた…その罪がまだここにある。」
タクミがストームライダーのそばで拳を握る。
「貴族が壊したエアリスの調和だ。俺たちが取り戻すよ、エリナ。」
仲間たちが頷き合い、神殿内部へと足を踏み入れる。
鉄都ガルザードでは、貴族の幹部が巨大な鉄塔の司令室で苛立ちを募らせていた。熔けた鋼が流れる炉の熱気が窓を曇らせ、床に散らばる魔導装置の残骸が不気味に光る。幹部が部下——セリカと影で繋がる貴族——に目を向け、怒りを叩きつける。
「またしても神殿で奴らを仕留められなかったのか!しかも召喚精霊まで奴らに味方するとは! あの獣人族の女は何をしている!」
部下が額に汗を浮かべ、慌てて頭を下げる。
「セリカには次の場所へ誘導するよう伝えてあります。ヴェールウッドの地の神殿に強力な魔獣を配置しました。必ず…!」
幹部が冷たく笑い、鉄の杖を床に叩きつける。
「失敗は許さん。次で奴らを潰せ。アレの準備が整うまでの時間稼ぎは十分だ。」
神殿の内部はひんやりと湿り、魔脈の光が通路を照らしていた。突然、ガイストの警告音がストームライダーのコックピットに響く。
「魔獣反応、距離50メートル。複数体接近中、タクミ!」
地響きと共に中ボス「ガルドラス」——鋼鉄の装甲を纏った巨獣が姿を現す。鋭い鋼の爪が魔脈の光を反射し、背後には大地を揺らす「ガイアロス」3体が咆哮を上げる。貴族の魔導技術で強化された魔獣たちは、制御装置の赤い輝きを放ち、神殿を震わせる地震波を繰り出す。
タクミがレバーを握り、左目の「風神の眼」を発動させる。
「弱点を捉える! ガイスト、分析頼む!」
ガイストが即座に応じる。
「ガルドラス、正面20度から鋼爪攻撃。ガイアロス、後方10度から地震波。左に15度旋回して前進5mでガルドラスの制御装置が露出する!」
ストームライダーが旋回し、鋼爪が空を切り、地震波が足元を掠める。タクミがドリルアームを構える。
「フル稼働だ!」
ドリルが唸り、ガルドラスの装甲を貫くが、鋼獣は咆哮を上げて反撃に転じる。
バルドが「嵐の双剣」を抜き、ガイアロスに飛びかかる。風と雷を帯びた双刃が装甲を切り裂きながらバルドが叫ぶ。
「村を壊す気か! みんなの平和をお前らには渡さん!」
リアがエーテル・ノヴァを掲げ、炎の渦を放つ。
「仲間を守るよ! 絶対に!」
炎がガイアロスを包み、動きを鈍らせる。
その時、空気が重くなり、暗い瘴気が神殿に広がった。セシルが「エアリスウィスパー」を手にタクミたちに向け、黒い魔力が渦を巻く。毒脈瘴気が一行を襲い、彼女が冷たく笑う。
「貴族を倒すなら禁忌が必要だ。お前たちの正義じゃ足りないよ。」
エリナが目を丸くして叫ぶ。
「セシル、何!? どうしてこんなことするの!?」
タクミがストームライダーを盾に瘴気を防ぎ、声を荒げる。
「セシル、裏切る気か! お前はもう仲間だろうが!」
ガイストが分析を続ける。
「瘴気濃度上昇中。右45度から拡散、後退10mで回避可能。セシルの魔脈反応が異常だ、タクミ!」
バルドがセシルに剣を向け、怒りを込める。
「お前がそんな奴なら、俺が止める!」
リアが杖を握り直し、涙を堪える。
「セシル、私たち仲間じゃないの…?」
セシルが一瞬目を伏せるが、セシルの目が緑色に光る、すぐに杖を振り上げる。
「貴族の罪は償えない。お前たちには分からないさ。」
瘴気が濃くなり、神殿の壁が腐食し始める。ガルドラスとガイアロスがその隙に咆哮を上げ、再び襲いかかる。
タクミが歯を食いしばり、ストームライダーを動かす。
「ガイスト、セシルの弱点を! 魔獣と一緒に叩くぞ!」
「セシルの魔脈、杖に集中。左30度から接近して杖を破壊すれば瘴気が止まる!」
戦場が混沌と化す中、タクミ一行は魔獣と裏切りの影に立ち向かう。地の神殿の試練は、新たな危機と共に彼らの絆を試していた。




