第48話:進化と旅立ち
熔鉄団の工房は、夜通し響く金属音と火花で燃えていた。鉄を打つ鋭い音が耳を劈き、焦げた魔鋼の匂いが鼻を刺す。タクミがストームライダーのコックピットを開け、汗に濡れた手で魔鋼パーツを握る。ガイストのAIコアが青白く光を放ち、作業台に映る火花が彼の顔を照らす。
「ガイスト、反応速度を上げるには内部システムをぶち壊して再構築だ。魔脈感知も最大にしろ。貴族の動きを逃さねえぜ!」
ガイストの冷静な声が響く。
「了解、タクミ。魔脈回路を最適化し、反応速度を30%向上させる。魔脈感知範囲を拡大、敵の動向をリアルタイムで捕捉可能だ。作業を急げ。」
タクミが新たな魔鋼剣を手に持つ。刃に触れると冷たい金属の感触が指を這い、彼が唸る。
「ゼノスの脅威に匹敵する力が必要だ。このままじゃまだ足りねえぜ!」
工房の隅では、リアが風魔コアをテーブルに置き、タクミが設計した増幅装置の取り付けを見守る。コアの表面が微かに震え、魔脈結晶を嵌め込むタクミの手元から火花が散る。
「リア、この改造で風魔コアは全魔法をカバーして増大する。フレア・テンペストもアイシクル・ストームも、サンダー・ウェーブも、今まで以上の威力になるぜ。」
リアがコアを見つめ、掠れた声で呟く。
「兄ちゃんの禁忌魔法…私なら制御できるよね?」
不安が声に滲む。タクミが作業の手を止め、リアの肩を力強く抱く。
「バカ! そんな危ねえもんに手出すな! お前はもう十分だ。レオンが使った禁忌魔法は命を削る。お前にはお前だけの力がある。それで俺たちを支えてくれ!」
リアがタクミの手を握り返し、涙を堪えて頷く。
「うん…タクミ、ありがとう。私、兄ちゃんの分まで頑張るよ。」
工房の外、冷たい夜風が木々を揺らし、草の匂いが漂う。バルドが「デュアル・ヴォルティス」を磨き、刃に映る星空を見上げる。雷が双剣に走り、ビリビリと空気を震わせる。彼が静かに唸る。
「雷嵐双刃…俺の剣は仲間の復讐だ。レオンも見てろ。貴族を斬るまで、俺は止まらねえ。」
カザンが熔鉄団の戦士たちに号令をかけ、工房の周囲で準備を進める。
「貴族を灰にしろ! 熔鉄団は次の大陸でも戦う。レオンの墓に誓ってな!」
戦士たちが拳を掲げ、カザンの豪快な声に吼え応える。馬蹄の音と槍の擦れる音が夜に響く。
緑の大陸、貴族が奴隷を苦しめた鉱山は、タクミたちの猛攻で灰と化した。ストームライダーの魔鋼剣が砦を切り裂き、金属が砕ける鋭い音が響き渡る。リアが風魔コアを掲げ、叫ぶ。
「全精霊よ、我が声に応え、絆を束ねよ——オール・エレメント・ユニゾン!」
彼女の周囲に巨大な魔法陣が広がり、炎、氷、雷、風、地、光が渦を巻く。熱風が頬を焦がし、冷気が髪を凍らせ、雷鳴が耳を聾する。その力が魔鋼剣に流れ込み、タクミが吼える。
「トリニティ・ヴォルテクス!」
剣が唸り、貴族の守備隊を一掃。炎と氷と雷が渦巻き、血と硝煙が戦場を包む。バルドの「サンダーストーム・スラッシュ」が騎士を両断し、血飛沫が彼の顔を濡らす。カザンの熔雷槌が城門を粉砕し、大地が震え、崩れる石の音が轟く。貴族の残党が逃げ惑い、ヴェルディア大陸は解放された。
戦いの後、レオンの墓前にタクミ、リア、バルド、カザンが集まる。野花の香りが風に乗り、月光が石碑を静かに照らす。リアが墓に花を置き、涙をこぼす。
「兄ちゃん、私頑張るから…。ヴェルディアは解放できたよ。貴族を倒すまで、私、負けないからね…。」
風が花びらを舞い上げ、星空に運ぶ。墓の石碑が輝き、静寂が仲間たちを包む。
タクミが墓を見下ろし、拳を握り潰す。
「ゼノスに対抗するには、ストームライダーを次の段階に進化させる。大陸を旅して、素材と神殿を探すぜ。リアの魔法を上級魔法書で強化して、バルドの装備もアップグレードする!」
ガイストが補足する。
「提案だ。5神殿——風、火、水、地、雷——を巡り、魔脈技術の遺産を収集しろ。各神殿には上級魔法書や魔鋼素材が存在する可能性が高い。旅の間に貴族の動向も監視できる。」
タクミが頷き、仲間たちを見渡す。
「よし、次の大陸へ出発だ。レオンの仇を討つためにも、俺たちは強くなるぜ!」
バルドが双剣を鞘に収め、冷たく言う。
「剣を極める。貴族を刺すためにな。」
カザンが熔雷槌を肩に担ぎ、豪快に笑う。
「熔鉄団はどこまでも共に行く。貴族の鉄を溶かすまでな!」
リアが風魔コアを握り、星空を見上げる。
「兄ちゃん、見てて。私、もっと強くなるよ…。」
夜明け前、熔鉄団の工房からタクミたちが旅立つ。ストームライダーのエンジンが咆哮し、空を切り裂く。馬車に乗り込んだ熔鉄団が大地を進み、車輪が土を蹴る音が響く。タクミが遠くの地平線を見つめ、熱く呟く。
「ゼノス…貴族…全部潰す。レオンのためにも、俺たちのためにもな。」
星空にレオンの星が輝き続け、タクミたちの旅が始まる。新たな冒険が彼らを待っていた。




