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第44話:裂けた絆の再会

鉄都ガルザードの城壁前、戦場は魔獣の咆哮と熔鉄団の叫びで埋め尽くされる。焦げた鉄と血の匂いが鼻を刺し、溶岩の熱が頬を焼く。ストームライダーが空を切り裂き、タクミが魔脈ライフル改をぶっ放す。青白い光がヴォルガノスの群れを薙ぎ払い、爆音が耳を聾する。地上ではカザンが熔雷槌で大地を震わせ、バルドの双剣がテンペスタの翼を切り裂く。貴族の内紛で崩れかけた城壁が、混乱の渦をさらに煽る。


その時、風が不気味にうねり、新たな影が戦場に割り込んだ。黒いローブを纏った影脈会の集団が現れ、先頭に立つレオンが骨の杖を掲げる。冷たい風が彼のローブをはためかせ、憎しみに燃える瞳が朝陽を突き刺す。彼の声が戦場を切り裂いた。

「この時をどれだけ待ったことか…!貴族を俺が潰す!」

杖を振り下ろすと、闇魔法がうなりを上げ、黒い霧がヴォルガノスとテンペスタを飲み込む。魔獣の目が赤く輝き、動きが一変——貴族の城壁へ猛進し、石を砕く咆哮が響き渡る。


馬車の荷台から飛び降りたリアが、その姿を捉える。風魔コアを握り潰し、涙が熱く頬を伝う。

「兄ちゃん!」

駆け寄ろうとするが、レオンが鋭く叫び返す。

「近づくな、リア! 俺はもう…!」

その瞬間、彼の体が異様に震え、腕から黒いひび割れが広がる。禁忌魔法——命を削り、魂を闇に捧げる代償だ。レオンが膝をつき、掠れた声で吐き出す。

「貴族に両親を殺され、お前を失った。あの日から俺は死んでた…。」

彼の声は風に震え、苦しみが戦場の喧騒を貫く。


リアの目から涙が溢れ、叫びが喉を裂く。

「私、生きてるよ! 兄ちゃん、私を置いて死なないで! 一緒に帰ろう!」

その声は、魔獣の咆哮を越えてレオンの耳に突き刺さる。だが、黒いひび割れが首まで這い上がり、彼の体は崩れ落ちそうに震える。


タクミはストームライダーのコックピットで歯を食いしばり、汗が目を滲ませる。ガイストの冷静な声が響く。

「タクミ、レオンの魔脈反応が崩壊中。禁忌魔法の代償だ。このままでは死ぬ。」

「分かってる! レオンを止めるぜ、ガイスト!」

「了解。魔脈ライフル改の出力を調整。魔獣を一掃しつつ、レオンに接近しろ。」

タクミが機体を急降下させ、魔獣の群れに突っ込む。右腕のライフルが光を放ち、テンペスタを薙ぎ払う。左腕のブレードが唸り、ヴォルガノスの首を切り裂く。溶岩が飛び散り、熱風が顔を焦がす。タクミが吼える。

「レオン、お前が死んだらリアが泣くぞ! 目を覚ませ!」


レオンが顔を上げ、タクミの言葉に瞳が揺らぐ。視界に映るのは、涙に濡れたリアの顔。

「リア…お前が…」

その時、彼の目から一筋の涙がこぼれ、頬を冷たく濡らす。だが、禁忌魔法の代償は止まらず、黒いひび割れが顔に広がる。杖を握る手が震え、彼の息が途切れそうになる。


リアが風魔コアを掲げ、全力で叫ぶ。

「風よ、兄ちゃんを守って——ストームシェルター!」

風が咆哮し、優しい渦がレオンを包む。冷たい風が彼の頬を撫で、闇魔法の崩壊を一瞬だけ押しとどめる。リアがレオンの前に立ち、泣きながら叫ぶ。

「兄ちゃん、私を置いて行かないで! シルヴァレーで約束したよね、私を守るって! 私だって兄ちゃんを守りたいよ!」


その言葉が、レオンの記憶を抉る。シルヴァレーの川辺で、幼いリアを背中に乗せて笑った日々。貴族に村を焼かれ、炎の中でリアを森に隠し、追っ手を引きつけたあの夜。そして先日、森での再会——リアが生きていると知った衝撃、喜び、そして憎しみに飲み込まれた自分への悔恨。

「リア…俺は…」

声が震え、杖が地面に落ちる。乾いた音が戦場に響き、彼の涙が大地に染みる。


タクミがストームライダーをレオンの傍に着地させ、コックピットから飛び降りる。魔獣が再び襲いかかるが、カザンが熔雷槌を振り下ろし、雷撃で一頭を粉砕。

バルドが双剣を閃かせ、テンペスタの爪を切り裂く。


タクミがレオンに駆け寄り、肩を掴んで叫ぶ。

「レオン、貴族は俺たちで潰す。お前はリアと生きろ!」

ガイストが冷静に補足する。

「レオンの魔脈崩壊は進行中だが、禁忌魔法を解除すれば間に合う。リアの風が時間を稼いでいる。今だ。」


レオンがリアを見つめ、涙を流しながら呟く。

「お前が生きてて…よかった…。」

彼が膝をつき、闇魔法を解き放つ。黒い霧が消え、ひび割れが止まる。だが、力を使い果たしたレオンは意識を失い、倒れる。


リアが駆け寄り、レオンを抱きしめる。涙が彼の顔に滴り、熱い雫が頬を濡らす。

「兄ちゃん! 起きて、私と一緒に帰ろう!」

彼女の声が戦場に響き、レオンの瞼がわずかに動く。微かな息が彼の胸を震わせ、リアの涙が止まらない。


その時、城壁の上から貴族長ドルザードの冷たい声が降る。

「虫けらどもが…家族だと?」

彼の杖が振られ、残る魔獣が熔鉄団へ突進する。だが、タクミがストームライダーに跳び乗り、ガイストに叫ぶ。

「魔獣を片付けるぜ! 貴族もまとめてな!」

「了解、タクミ。魔脈ライフル改、フルチャージ完了。全力をぶつけろ。」


ストームライダーが上昇し、青白い光が戦場を照らす。一撃が放たれ、魔獣の群れが爆散。衝撃波が風を巻き上げ、硝煙と血の匂いが空に溶ける。カザンが熔雷槌を掲げ、吼える。

「家族は守る! 貴族なんざぶっ潰すぜ!」

バルドが双剣を構え、冷たく呟く。

「終わりだ。」


戦場の喧騒の中、リアはレオンを抱きしめ続ける。タクミと仲間たちがその背を守り、風が二人の絆を優しく包む。レオンの微かな息とリアの涙が、新たな希望を灯していた。





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