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第41話:影と焔の覚悟

焔嵐大陸の夜が熔鉄団の工房を包み、星空が窓辺に冷たく広がる。炉の火が微かに唸り、熔けた鉄の焦げた匂いが静寂に漂う。タクミが作業台に設計図を広げ、煤けた手で紙を押さえる。ストームライダーの改良案——風魔冷却システムの強化と、新たに構想する「魔脈ライフル改」のスケッチが、星明かりに照らされて浮かび上がる。彼の目は鋭く、遠くの貴族の鉄都ガルザードを睨むように夜空を貫く。

「次はお前らが終わりだ。」

その言葉が、設計図に刻むように重く響き、工房の空気を震わせる。


隣に立つリアが、風魔コアをぎゅっと握り締める。彼女の指が白くなるほど力を込め、瞳には兄レオンへの想いと貴族への憎しみが渦巻く。

「私、魔法を制御するよ。兄ちゃんのために…貴族を倒して、家族を取り戻すんだ!」

その声は震えながらも力強く、タクミの耳に熱く届く。彼女の胸には、この間の再会と葛藤が疼き、涙を堪えた決意が宿る。タクミがリアを一瞥し、口の端を軽く上げて頷く。

「お前ならできるさ。俺が信じてる。」

その静かな笑みに、仲間への信頼が滲む。


工房の隅で、「デュアル・ヴォルティス」を磨いていたバルドが立ち上がる。刃を擦る金属音が静寂を切り裂き、彼が双剣を手に持ったまま低く言う。

「剣で道を切り開く。貴族だろうが魔獣だろうが、俺が斬り刻む。」

その声に、冷たい執念とシンダーリーヴスの復讐が宿り、熔鉄団の戦士たちが一斉に頷く。槍や斧を手に持つ音が響き合い、工房に戦意が満ちる。


カザンが熔雷槌を肩に担ぎ、豪快に喉を鳴らす。

「熔鉄団の鉄はお前らと共にある! 貴族の城だろうが何だろうが、俺がぶっ壊してやるぜ!」

その笑い声が工房に轟き、戦士たちの拳が打ち鳴らされ、熱気が炉の火を越えて広がる。熔鉄団の魂が、タクミたちの決意に呼応する。


タクミが設計図から目を上げ、窓に映るストームライダーのシルエットを見やる。星空に溶岩の煙が混じる中、彼が静かに呟く。

「家族を守る戦い…始めるぞ。」

その言葉が夜風に乗り、工房を包む。レオンの影が脳裏をよぎるが、リアを支える覚悟がそれを押し退ける。


一方、貴族の鉄都ガルザードでは、不穏な空気が渦巻いていた。城の最上階、冷たい石造りの謁見の間に騎士団長ガルザークが立つ。黒鉄の鎧が月光に鈍く輝き、彼の背後には鎖に繋がれた巨大な魔獣の檻が並ぶ。ヴォルガノス——先日の戦いで熔鉄団のアジトを襲った魔獣王——の赤い目が暗闇で燃え、新たな影、テンペスタの鱗が風を切り裂く音を立てる。低く唸る咆哮が石壁を震わせ、鎖が軋む不気味な音が響く。


ガルザークが冷酷に命じる。

「魔獣を全て放て。」

その声は刃のように鋭く、謁見の間に凍りつくような緊張を刻む。重臣の一人が震えながら進言する。

「しかし、団長…魔獣を一度に解き放てば、街にも被害が——」

その言葉を遮り、ガルザークが剣を抜き、床に突き立てる。金属が石を砕く鋭い音が響き、重臣の顔が青ざめる。

「黙れ。奴らが近づく前に叩き潰す。それが貴族の意志だ。」

その瞳に容赦ない殺意が宿り、重臣たちは顔を見合わせ、ただ黙って頭を下げるしかなかった。


暗闇の中、城の外壁に沿って影が動く。影脈会の仮面をかぶった男たちの中に、レオンが立つ。彼の手には魔獣の骨の杖が握られ、赤い髪が夜風に揺れる。瞳には妹への想いと禁忌に染まった自責が揺らぎ、彼が小さく呟く。

「リア…俺の道は…ここでいいのか?」

その声が風に消えると、影脈会の1人が冷たく笑う。

「貴族とゼノスの力を奪う。それが我々の目的だ。お前の妹が何をしようと、関係ない。」

その声に、氷のような無情さが響く。レオンが杖を握り直し、目を閉じる。

「俺は…貴族を潰す。それでいい。」

その声は小さく、深い決意と葛藤が秘められていた。


翌朝、熔鉄団の工房は戦いの準備で活気づく。鉄を打つ音、戦士たちの叫びが響き合い、朝陽が工房を熱く照らす。タクミがストームライダーのコックピットに乗り込み、改良された風魔冷却システムを起動させる。冷気がコックピットに流れ込み、ガイストの声がスピーカーから響く。

「風魔コア出力、安定。魔脈ライフル改のチャージも完了だ。タクミ、準備はいいか?」

その合成音に、冷静な信頼と微かな昂ぶりが混じる。タクミがレバーを握り、ニヤリと笑う。

「相棒、いつでも行けるぜ。貴族の城に突っ込んで、木っ端微塵にしてやる。」

その軽い口調に、決戦への興奮が滾る。


リアが風魔コアを手に、タクミの隣に立つ。彼女が深呼吸し、風魔法を制御する準備を整える。

「私も行くよ、タクミ。兄ちゃんに会って、ちゃんと話したい…貴族を倒して、兄ちゃんを連れ戻す!」

その声に、前回の制御練習と兄への葛藤を越えた成長が宿る。タクミがリアの肩に手を置き、静かに言う。

「お前ならできる。俺とガイストで支えるから、レオンにお前の声を届けてこい。」

その言葉に、仲間への信頼とレオンへの願いが滲む。


バルドが双剣を構え、刃が朝陽に鋭く光る。

「道は俺が開く。貴族の血でこの剣を染めるぜ。」

その声に、冷たい決意が響き、カザンが熔雷槌を手に持つ。

「熔鉄団の力、見せてやるぜ! 貴族の城だろうが叩き潰す!」

二人がタクミを見やり、頷き合う。熔鉄団の戦士たちが槍を掲げ、地面を踏み鳴らす音が大地を震わせる。


その時、遠くで轟音が響いた。鉄都ガルザードの門が軋みながら開き、ヴォルガノスとテンペスタが解き放たれる。巨大な魔獣たちの咆哮が焔嵐大陸を震わせ、熔鉄団の耳に届く。ヴォルガノスの溶岩が地面を焦がし、テンペスタの風が木々を切り裂く。タクミがストームライダーのエンジンを全開にし、叫ぶ。

「行くぞ、みんな! 貴族の城を落とす!」

ストームライダーが風を切り裂き、青白い光が空を貫く。熔鉄団の戦士たちが吼えながら突進し、星空の下に広がる焔嵐大陸の森が、戦いの幕開けを見守っていた。遠くでレオンの影が動く中、タクミたちの絆が貴族との決戦へと突き進む。


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