第33話:焔魔の財宝と覚醒の鼓動
貴族の洞窟「焔魔の財庫」の通路は、魔脈鉱石の青白い光に薄暗く照らされていた。湿った空気が頬を撫で、鉱石の脈打つ音が耳に微かに響く。タクミがガイストMk-I改を牽き、魔脈感知機を手に先頭を進む。機体の車輪が石畳を軋ませ、金属の擦れる音が反響する。リアが風魔コアを握り、隣で軽く跳ねるように歩き、バルドが双剣を手に黙々と後ろを進む。熔鉄団の頭領カザンと戦士ゴランが槍を握り、周囲の闇を睨みながら続く。通路の空気が重くなり、ガイストの声がコックピットから鋭く響く。
「魔脈波動、増大中。敵性反応複数、距離50メートル以内。宝物庫が近い。」
タクミが魔振剣を手に持つと、刃が微かに唸る。
「やっと着いたか。貴族の財宝を奪うぜ。」
その声に、決意と僅かな興奮が滲む。
カザンが通路の奥を睨み、低く喉を鳴らす。
「熔鉄団の古い話じゃ、この先に貴族の最高の宝が眠ってる。だが、守りが固い。覚悟しろよ、タクミ。」
彼の声は岩のように重く、熔嵐谷の記憶が裏に潜む。
リアが目をキラキラさせてカザンに振り返る。
「最高の宝って…何かすごい魔法とかあるかな?私、もっと強くなりたいから、ドキドキしてるよ!」
彼女の声が弾み、コアを握る手に力がこもる。
バルドが静かに割り込む。声は低く、鋭い。
「魔法より剣だ。故郷の仇を討つ刃が手に入れば、それで十分。」
双剣の柄を握る手が微かに震え、復讐の重さが滲み出る。
タクミが笑いながら二人を見やる。
「お前ら、魔法だ剣だって落ち着けよ。ストームライダーの素材が最優先だ。」
そしてカザンとゴランに目を移す。
「熔鉄団も頼むぜ、カザン、ゴラン。」
その口調に、仲間への信頼が乗る。
ゴランが槍を手に軽く鼻を鳴らし、笑う。
「熔嵐谷の仇もかかってるからな。タクミ、俺たちゃ遊びじゃねえよ。」
彼の声には粗野な熱が宿り、槍の先が微かに揺れる。
通路の突き当たりに巨大な鉄扉が現れる。魔脈鉱石が埋め込まれ、扉全体が青く脈打ち、冷たい光が一行の顔を照らす。タクミが機体のドリルアームで扉を叩く。軋む音が洞窟に響き、鉄が軋んで開く。宝物庫が姿を現す。広大な部屋に金塊と魔鋼が山積みされ、埃っぽい空気が鼻を刺す。中央に巨大な宝箱が魔脈の光を放ち、部屋全体に低く唸るような振動が広がる。タクミが目を細めて呟く。
「これが貴族の隠し財宝か…ストームライダーが完成するぜ。」
その声に、勝利への確信が滲む。
だが、部屋の影から雑魚モンスター「シャドウガード」が現れ、一行を囲む。黒い鎧を纏った戦士が10体、剣と盾を手に無言で襲いかかる。足音が石畳に反響し、金属の擦れる音が耳を劈く。タクミが魔振剣を手に、機体で突進する。
「貴族の残党か! まとめてぶち抜く!」
剣が高速で振動し、青い光が尾を引いて2体を一掃。鎧が砕け、黒い破片が飛び散る。
バルドが
「旋風双刃!」
と叫び、双剣を手に突進する。回転斬りが3体を切り裂き、鎧が甲高い音を立てて崩れ落ちる。
「邪魔だ! シンダーリーヴスのために斬る!」
その声は鋭く、怒りと決意が刃に宿る。
リアが少し離れた位置から氷魔法を放つ。
「冷たく…!」
氷の結晶が鋭く輝き、2体の足を凍らせる。霜が鎧を覆い、動きが止まる。タクミが凍ったシャドウガードに魔振剣を振り下ろし、鎧が砕け散る。
「リア、いい援護だ! そのまま続けろ!」
リアが息を整え、目を輝かせて叫ぶ。
「うん、私、もっと頑張るよ!」
彼女の声に、成長への喜びが弾ける。
カザンが大槌を手に残りの敵に突進し、豪快に笑う。
「熔鉄団の力、見せてやるぜ!」
槌が3体を叩き潰し、衝撃で地面が震える。ゴランが槍で援護し、最後の1体を刺す。
「動くな、クズども!」
槍が鎧を貫き、黒い破片が飛び散る。宝物庫が静寂に包まれ、埃が舞う。
タクミが巨大な宝箱に近づき、ドリルアームで鍵を壊す。金属が軋む音が響き、宝箱が開く。中から「嵐魔鋼」、リアの魔法を強化する魔導書「エレメンタル・トーム」、バルドの新武器「デュアル・ヴォルティス」が手に入る。
嵐魔鋼: 軽量で魔脈を増幅する金属。青白く輝き、手に持つと冷たくも熱い感触が走る。ガイストが分析する。
「魔脈伝導率150%、ストームライダーの核心素材だ。」
その光はまるで嵐を閉じ込めたようだ。
エレメンタル・トーム: 中級魔法の詠唱が記された魔導書。厚い革表紙に魔脈が刻まれ、ページをめくるたび微かな風と熱が指先に触れる。炎、氷、雷、風の魔法が習得可能。
デュアル・ヴォルティス: 「渦 (vortex)」と「力 (fortis)」を意味する双剣。魔鋼製で鋭く、魔脈を帯びた青い刃が軽く唸る。手に持つと軽さと重さが同時に感じられる。
リアが魔導書を手に持ってページを開き、興奮が抑えきれずに叫ぶ。
「すごい…! これ、魔法の詠唱がいっぱい書いてある! ちょっと試してみるね、タクミ!」
彼女が目を閉じ、詠唱を口にする。
「炎よ、我が手に集え…フレイム・バースト!」
火球が炸裂し、宝物庫の壁を焦がす。熱風が髪を揺らし、リアが目を輝かせて笑う。
「やった! これなら貴族に勝てるって、私、信じてるよ!」
バルドがデュアル・ヴォルティスを手に、軽く振ってみる。剣が魔脈を帯び、青い光が弧を描き、空気を切り裂く音が響く。彼が静かに呟く。
「シンダーリーヴスの仇を討つには、こいつがいい。貴族の血で試したいぜ。」
その声は低く、冷たい決意が刃に宿る。
タクミが嵐魔鋼を手に、カザンに渡しながら言う。
「カザン、熔鉄団でこいつを仕上げてくれ。ストームライダーが完成する。リアとバルドの宝もすげえな。」
カザンが嵐魔鋼を受け取り、豪快に笑う。
「熔嵐谷の仇を討つ武器になるぜ。タクミ、お前らの力なら貴族をぶっ潰せるさ。」
その笑い声が宝物庫に響き、熔鉄団の誇りが滲む。
宝物庫の財宝を手に、タクミが部屋を見回す。金塊と魔鋼が青い光に照らされ、静寂の中に勝利の余韻が漂う。ガイストが報告する。
「エネルギー残量80%、装甲損傷30%。洞窟内の魔脈波動安定。帰還準備を整えろ。」
タクミが拳を握り、カザンとゴランに目をやる。
「貴族の財宝を奪った。熔鉄団の工房でこいつらを仕上げて、次は鉄都ガルザードを叩くぜ。」
リアが魔導書を抱えて、タクミに近づく。
「私、もっと魔法を覚えて、タクミとバルドと一緒に強くなるよ。新しい魔法、ワクワクするな!」
その声に、純粋な喜びと頼もしさが混じる。バルドがデュアル・ヴォルティスを手に持ったまま、静かに言う。
「この剣なら貴族の鎧も斬れる。シンダーリーヴスのために戦うのは、俺だけでいい。」
その言葉に孤独と覚悟が滲む。
カザンが大槌を肩に担ぎ、熔鉄団の戦士たちに声をかける。
「ゴラン、熔鉄団はヴェールウッドを守りつつ、タクミたちを鍛え上げる。工房で装備を仕上げてやるぜ。」
ゴランが槍を手に頷き、タクミに笑いかける。
「タクミ、熔鉄団と組めば貴族も終わりだ。次はでけえ戦いになるぜ、楽しみにしとけよ!」
その声に、荒々しい期待が弾ける。
一行は洞窟を後にし、焔嵐大陸の荒野へ戻る。宝物庫の財宝を手に、ストームライダーへの道が開かれ、貴族との最終決戦が近づいていた。通路の奥で微かに揺れる魔脈の光が、彼らの背を見送るように瞬いていた。




