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第32話:焔魔の財庫の深淵

貴族の洞窟「焔魔の財庫」の内部は薄暗く、湿った空気が肺にまとわりつく。壁に埋め込まれた魔脈鉱石が青白く脈打ち、微かな光が石畳に揺らめく影を落とす。タクミが魔脈感知機を手に先頭を切り、ガイストMk-I改で荷車で牽く。荷車の車輪が石を軋ませ、金属の擦れる音が通路に反響する。熔鉄団の頭領カザンと屈強な戦士たちが後方を固め、槍の柄を握り締めて周囲を睨む。石門を抜けたばかりの通路で、タクミがカザンに目をやり、軽く笑った。

「なぁ、カザンのおっさん。俺は異邦人じゃなくて、タクミって名前がある。いい加減そう呼んでくれよ。」


カザンが大槌を肩に担ぎ、低く喉を鳴らす。

「おっさんか…まあいい。熔鉄団は名を知らねえ奴と組まねえからな。お前、タクミか。覚えたぜ。」

赤い髭が微かに揺れ、彼の灰色の瞳に仲間への認める光が宿る。


リアが風魔コアを手に持ったまま、弾む声で言う。

「私もだよ! リアって名前。カザンさん、私の魔法も見ててね!」

彼女の指先でコアが青く光り、微かな風が髪を揺らす。バルドが双剣を手に、淡々と告げる。

「バルドだ。シンダーリーヴス出身。貴族を斬るためにここにいる。」

その声には静かな怒りが滲み、剣の柄を握る手が白くなる。


カザンが熔鉄団の戦士たちを見回し、頷く。

「なら俺もだ。カザン、熔鉄団の頭領。熔嵐谷の仇を討つため、お前らと組む。名前で呼び合うなら、結束も深まるってもんだ。」

熔鉄団の戦士の一人、ゴランが槍を手に笑う。

「俺はゴランだ。カザンの槌に負けねえ槍使いだぜ、タクミ。」

タクミが拳を軽く上げ、笑みを返す。

「よし、名前が揃った。カザン、ゴラン、熔鉄団の力も借りて、貴族の財宝を奪うぜ。」


ガイストの合成音がコックピットから鋭く響く。

「魔脈波動、複数検出。トラップと敵性反応あり。距離不明、警戒しろ。」

その声に、通路の空気が一瞬重くなる。カザンが通路の奥を睨み、低く言う。

「焔魔の財庫は罠だらけだ。昔、熔鉄団の先輩がここで死んだって話だ。足元に気をつけな、タクミ。」


通路を進むと、突然床がガクンと崩れる。石畳が砕け、ゴランが落下しかけるが、タクミが機体のドリルアームを瞬時に突き出し、床を支える。金属が石を抉る音が響き、ゴランが這い上がって息を切らす。

「タクミ、助かったぜ!」

タクミが機体を操作し、呟く。

「貴族の罠か…ガイストで進む。リア、風で援護頼む。」


リアが風魔コアを握り、目を閉じて呪文を唱える。

「風を…!」

冷たい風が通路を駆け抜け、埃を巻き上げて隠れた罠の気配を探る。風が壁を叩く音が微かに反響し、彼女の髪が乱れる。カザンが槌を手に、言う。

「いい魔法だ、リア。だが、敵も近いぜ。」

その言葉が終わる前に、通路の奥から溶岩を滴らせた「マグマラット」の群れが殺到する。数十匹のネズミが赤い目を光らせ、鋭い牙を剥いて飛びかかる。熱気を帯びた空気が鼻腔を焼く。


タクミが魔振剣を手に、機体で突進する。

「まとめてぶち抜く!」

刃が高速で振動し、青い光が尾を引いてマグマラットを一掃。溶岩と血が飛び散り、石畳に焦げた臭いが広がる。リアが炎魔法を放ち、残りを焼き払う。

「炎を…!」

小さな火球が群れを焦がし、ネズミがキィキィと悲鳴を上げて倒れる。彼女が笑う。

「私にもできる! タクミ、私も戦えるよ!」

だが、タクミが呆れた顔で振り返る。

「お前なぁ。普通、炎属性の敵にはさっき覚えた氷魔法だろう…。」

リアがキョトンとした表情で首を傾げ、よく分からないまま目を瞬かせる。


バルドが双剣を手に素早く動く。

「旋風双刃!」

回転斬りがマグマラットを切り裂き、溶岩が飛び散って石壁を焦がす。彼の動きは鋭く、息も乱れない。カザンが槌を手に援護し、低く笑う。

「やるじゃねえか、バルド。だが、無理すんなよ。」

大槌が一振りで数匹を叩き潰し、地面に鈍い衝撃が響く。


通路の奥で、熔けた鉱石が埋まる壁に宝箱が隠れている。リアの風が埃を払い、宝箱が青白い光の下に現れる。タクミが機体のドリルアームで壁を削り、石屑が舞う中、宝箱を開ける。中から「魔鋼石」と貴重な「焔脈結晶」が姿を現す。タクミが結晶を手に持つと、その熱と冷たさが指先に走る。

「これ、ストームライダーの動力に使えそうだな。」

ガイストが分析する。

「焔脈結晶、魔脈伝導率120%。動力炉の効率を向上可能。装甲損傷25%、現状維持。」

カザンが魔鋼石を手に、バルドに渡す。

「バルド、こいつはお前の双剣に仕込める。貴族の鎧を貫く刃にしろ。」

バルドが魔鋼石を握り、低く呟く。

「シンダーリーヴスのために…これで貴族を斬る。」

その瞳に復讐の炎が宿る。


一行が奥へ進むと、天井から矢が飛び出すトラップが発動する。ガシュッと鋭い音が響き、数十本の矢が雨のように降り注ぐ。タクミが機体を盾にし、装甲に矢が突き刺さる。金属が軋む音が耳をつんざき、リアが風魔法で矢を逸らす。

「風を…! タクミ、無事!?」

タクミが機体を動かし、笑う。

「ああ、お前の風で助かったぜ。リア、頼りになるな。」

ガイストが報告する。

「装甲損傷30%、機能に影響なし。敵性反応、奥で増大中。宝物庫が近い。」


カザンが槌を手に、熔鉄団の戦士たちに言う。

「タクミ、リア、バルド、いいチームだ。貴族の財宝はすぐそこだぜ。」

熔鉄団の結束が彼の声に滲み、通路に重みを加える。タクミが魔振剣を手に、通路の奥を睨む。

「トラップも雑魚も、全部ぶち抜く。ストームライダーのためだ。」

リアが炎と氷の魔脈を感じながら、タクミに笑う。

「私ももっと魔法で助けるよ。タクミと一緒に強くなる!」

バルドが双剣を構え、呟く。

「シンダーリーヴスの仇を討つ刃が、近づいてる。」

カザンが大槌を軽く振り、言う。

「熔嵐谷の仇も一緒にな。焔魔の財庫の奥まで、熔鉄団も行くぜ。」


一行は洞窟の深部へと進む。足音が石畳に反響し、薄暗い通路の先に貴族の隠し財宝が待っている。空気がさらに重くなり、魔脈鉱石の光が不気味に揺らめく。焔魔の財庫の深淵が、彼らの結束と覚悟を試すように迫っていた。

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