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第16話:目覚めと策謀

ヴェールウッド村の朝は、静かな緊張に包まれていた。焼け焦げた小屋の残骸から煤の匂いが漂い、朝陽が湿った地面に淡い光を投げる。タクミは倉庫でガイストMk-Iの調整を終え、村の片隅にある簡素な小屋へと足を運ぶ。木の壁は湿り気を帯び、屋根の隙間から風が低く唸る。そこには、治療中のベッドに横たわる少女、リアがいた。貴族の鉱山からタクミと共に脱獄した彼女は、戦いの混乱で倒れ、村人たちに匿われていた。


タクミが小屋に入ると、リアの瞼が微かに動き、彼女が目を覚ます。焦点の合わない瞳がタクミを捉え、震える声が漏れる。

「鉱山で…貴族が…もっと来る…」

彼女の手が震え、粗い布団を掴む。タクミがベッドのそばに膝をつき、リアの肩を優しく押さえる。

「落ち着け。お前はもう安全だ。」

リアの目から涙がこぼれ、首を振る。脳裏に鉱山の暗闇、鎖の音、貴族の冷笑が閃く。

「安全なんて…信じられない…鉱山で見たんだ。あいつらが…村を潰すって…山脈の向こうで、軍勢が集まってた…」


タクミがリアの手を握り、小さな震えを抑えるように力を込める。煤だらけの手が彼女の冷たい指を包み、彼の声が低く響く。

「なら俺が証明する。お前やこの村を、貴族から守ってみせる。」

リアがタクミの手を見つめ、涙を拭う。彼女の声が小さく震える。

「本当に…できるの?」

タクミが頷き、疲れた笑みを浮かべる。

「当たり前だ。俺とお前は一緒に脱獄した仲間だろ?」

小屋の外で、村の子供たちが笑い声を上げ、リアの顔に微かな安堵が広がる。


一方、王都大陸の北、鉄都ガルザードの貴族の城。冷たい石造りの広間には、重厚な鉄の装飾が並び、魔脈鉱石の青い光が壁を不気味に照らす。貴族長、灰色の髪を厳つい顔に垂らした男が、高い玉座に座している。騎士団長が鎧を鳴らし、貴族長に膝をついて報告する。

「ヴェールウッドに異邦人が潜み、鉄の怪物を作りました。騎士団50騎と魔導士3人を退け、村を守ったようです。」


貴族長が冷たく笑い、玉座の肘掛けを叩く。石に響く音が広間に反響する。

「なら焼き払え。魔導士を10人に増やし、騎士200騎を動員しろ。異邦人ごときが我々に逆らうなど、笑いものだ。」

騎士団長が顔を上げ、眉をひそめる。

「しかし、斥候の報告では、魔脈が不安定で…魔獣も動き出してる様子です。村を攻めるのはリスクが―」

貴族長が手を振り、言葉を遮る。

「構わん。異邦人を潰せば魔脈は我々のものだ。魔獣が動こうが、ヴェールウッドごと始末すれば済む。」


騎士団長が立ち上がり、命令を受け入れる。だが、広間の影に立つ黒いローブの男が、密かに聞き耳を立てていた。フードに隠れた顔の下で、奇妙な紋章の刻まれた杖が微かに光る。彼が低く呟く。

「面白い…異邦人か。貴族長の愚策がどう転ぶか、見物だな。」

彼は影脈会の一員であり、貴族長の策謀を冷ややかに見つめる。魔脈の不安定さを己の目的に利用する算段を巡らせ、その目が不気味に光り、城の闇に消えていった。


ヴェールウッドに戻り、タクミが倉庫でガイストMk-Iの点検を始める。煤と汗が混じる熱気の中、リアが小屋から出て、タクミのそばに立つ。彼女の足取りは弱々しいが、目に力が宿っている。タクミがリアに気づき、工具を置く。

「お前、動けるのか?」

リアが小さく頷き、呟く。

「貴族が来るなら…私も何かしたい。鉱山で見たことを伝えるよ。奴らの軍勢、魔導士の数…覚えてる。」


タクミがリアを見つめ、設計図を手に持つ。

「なら、貴族のことを色々教えてくれ。俺がそれを叩き潰す。」

ガイストの声がコックピットから低く響く。

「魔脈の不安定化と貴族の動きか…リアの情報は戦術に役立つよ。貴族の策を予測するデータが揃ってきたな。」

タクミが笑い、リアに言う。

「お前がいてくれるなら、俺も強くなれるぜ。」

リアが微笑み、初めて安心した表情を見せる。


夕暮れ、タクミが村の戦士たちにウェアラブル型の制御装置を配る。鍛冶屋クロウが装置を手に持つ戦士に使い方を教えるが、一人が装置を落とし、不安げに呟く。

「こんなんで戦えるのか…?」

タクミがその男の肩を叩き、言う。

「練習しろ。俺が教えてやる。」

エリナがタクミに近づき、低く告げる。

「リアが目を覚ましたか。貴族の次の襲撃が近いぞ。斥候が動き出した。」

タクミがガイストMk-Iを見上げ、呟く。

「ああ。奴らが来るなら、こっちから迎え撃つ。」

ガイストが報告する。

「エネルギー残量98%、冷却効率80%、トルク最大85N・mだよ。魔導士が10人だろうが対応できるさ。」


村の広場で、子供たちがリアに花を渡し、彼女が笑顔で受け取る。タクミが設計図に目を戻し、貴族の城への反撃を考える。遠くの森で、魔獣の咆哮が微かに響き、新たな脅威が近づいていることを予感させた。ヴェールウッドの戦いは、まだ始まったばかりだった。



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