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第10話:森の鉄の怪物

森の入り口に馬蹄の響きが轟き、朝靄を切り裂く土煙がタクミの視界を埋めた。貴族の騎士団が戻ってきた――前回の撤退は罠だったのだ。40騎を超える槍騎兵が列をなし、鉄と血の臭いを纏って村へ押し寄せる。タクミはガイストMk-Iを肩に被り、右腕のドリルアームを低く唸らせる。左腕には魔脈ピストルが握られ、ウェアラブル機体の骨格が朝焼けに鈍く輝く。胸部のAIコアが脈動し、ガイストの声が冷たく響く。

「ドリル稼働率85%、ピストルエネルギー残量90%、トルク60N・m。敵数は40騎、魔導士2名確認。戦えるぞ、タクミ。」

タクミは息を吐き、拳を握り締める。

「奴らをぶっ潰す。行くぞ、ガイスト!」


騎士団の先鋒が馬を駆り、槍を構えて突進してきた。森の木々が震え、前回の戦いで焦げた枝が地に落ちる。タクミは右腕を振り上げ、ドリルアームが高速回転。鋼の盾に突き刺さると、金属が悲鳴を上げて粉砕され、騎士が馬から転がり落ちる。

「何だ、この鉄の怪物は!?」

騎士の叫びが森に響き、タクミは冷たく笑う。左腕の魔脈ピストルを構え、引き金を引く。青白い衝撃弾が連続で放たれ、馬を吹き飛ばし、土を抉る。崩れ落ちる騎士たちの嘶きが朝の静寂を切り裂いた。ガイストが分析を続ける。

「ピストル残弾18発、衝撃波威力20N・m。前線10騎崩壊。だが、本隊が来るぞ。」


その時、森の奥から赤い光が奔った。魔導士が2人、後方から杖を振り、火球が唸りを上げて飛来する。タクミが突進し、ドリルを振りかざすが、連続使用で炉が過熱。機体から黒煙が立ち上り、彼の肩が焼けるような痛みに震えた。

「くそ、熱が籠もりすぎだ!」

ガイストの警告が鋭く響く。

「冷却不足、炉温度上昇中!エネルギー残量70%、あと3分が限界だ、耐えろ!」

火球が直撃し、ガイストMk-Iがよろめく。左腕のピストルが損傷し、衝撃弾が途切れる。タクミが膝をつきかけた瞬間、騎士団の本隊が現れた。

貴族ギルヴァス――金縁の甲冑を纏い、馬上の長槍を掲げる男が、タクミを見下ろして嗤う。

「虫けらが鉄の玩具で抗うとはな。ヴェールウッドは今日、灰と化す。貴様の首を飾りにしてやる。」

その傲慢な声に、タクミの脳裏にあの少年の笑顔が閃く。あの子の描いた未来を奪わせない――彼は歯を食いしばり、立ち上がる。


騎士団が一斉に突撃し、槍の穂先が朝陽を反射する。ドリルアームで盾を砕くが、魔導士の火球が次々と炸裂。機体の骨組みが軋み、タクミの肩から血が滴る。ガイストが叫ぶ。

「エネルギー残量50%、炉過熱リスク90%!撤退しろ、タクミ!」

「黙れ!ここで終わらせなきゃ、村が終わるんだ!」

その時、エリナが村人たちを率いて駆けつけた。彼女の剣が朝光を切り裂き、石や棍棒を手に持つ村人たちが魔導士を牽制する。エリナが吼える。

「タクミ、今だ!仕留めろ!」

村の老人が叫び、子供が涙声で続ける。

「異邦人、頼む!村を守ってくれ!」

「おじちゃん!頑張って!」

タクミの胸に熱が灯る。エリナの剣が魔導士の一人を斬りつけ、詠唱が途切れる。村人たちの石がもう一人を怯ませ、タクミに一瞬の隙が生まれた。


ガイストが制御を調整し、声を張り上げる。

「ドリルアーム、トルク最大60N・m!炉崩壊リスク95%、だが行ける!」

タクミは最後の力を振り絞り、ドリルをギルヴァスへ突き出す。高速回転する刃が唸り、馬の甲冑を貫き、貴族の胸を抉る。ギルヴァスが血を吐き、馬から転がり落ちる。

「貴様ごときに…!」

その断末魔を飲み込むように、タクミが叫ぶ。

「これが…俺たちの答えだ!」

魔導士がギルヴァスの死に動揺し、残る騎士団が混乱の中逃げ出す。ドリルが停止し、機体から煙が立ち上る中、ガイストが報告する。

「エネルギー残量5%、炉温度限界突破。だが、勝ったぞ、タクミ。」


戦闘が終わり、燃える森の中でガイストMk-Iが膝をついた。タクミは機体から這い出し、血まみれの手でフレームを叩く。肩の傷が疼き、息が途切れそうになる。

「動いた…本当に動いたんだ…」

エリナが近づき、煤にまみれた顔で笑う。

「お前はただの技術者じゃない。戦士だ。」

タクミは苦笑を返す。

「まだ始まったばかりだ。この世界…変えてやる。」


空を見上げると、赤い朝焼けに星が一つ輝き始める。村人たちがタクミを囲み、子供が「おじちゃん、すごい!」と駆け寄る。老人や女たちが涙を拭い、エリナが静かに言う。

「ここがお前の居場所だ、タクミ。」

彼は頷き、胸のコアを見つめる。ガイストの光が微かに瞬き、低く響く。

「次はもっと強くするぞ、タクミ。この勝利は、始まりに過ぎない。」

燃える森の向こう、アルテリアの大地に新たな風が吹き始めた。タクミとガイストの決意が、未来を切り開く一歩となっていた。



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