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紬の憂鬱

紬は母不在の間、区民館に同級生と集まり勉強することになっている。

真新しい区民館は、区内でも一番最近できたもので、小学生向けの自習スペースに小学校の同級生があつまり、みんなで各々の塾の宿題をやっている。ここに集まる理由はみんな一緒だ。息苦しい家で勉強したくないから。


紬の母はなんとかヒルズで働いており、帰宅はいつも18時半だ。週の半分は塾なので、帰宅まで顔を合わせることはない。一緒に勉強している大志の母は、駅前のクリニックの皮膚科医だが、父親はサラリーマンで単身赴任らしい。紬と大志以外の母親たちはみんな専業主婦で、みんな4年生までは大人しく家に縛り付けられて勉強させられていたが、5年生になりみんな区民館に集まるようになった。遊びのような、宿題のような、一石二鳥感がある。学校が終わってもこんなところで勉強漬け。私達はみんな可哀想な子だなと思うが、仲間がいれば少々心強い。


紬の母はプリントを沢山作ったり、iPadのアプリで副教材の暗記物を管理したがるが、絶対に仲間の前ではやらないことにしている。何か恥ずかしいというか、痛い子だと思われたくないからだ。


でもやらないと母親に折角作ったのにと文句を言われるので、帰宅した18時から30分の間に猛スピードでこなしている。なんなら母が台所に立ったりお風呂に入っている間にこっそりやることもある。


紬は小規模校舎というものに通っているので、小4の終わりからα1は固定だ。集まって勉強しているメンバーもみんなα2までには入っている。αは2つしかないけれど。

ここにほぼ週2回集まるメンバーはみんなお互いのマンスリーの成績を1桁まで知っていて、クラスの昇降もほとんど知っている。


紬は電車一本で通える桜蔭を第一志望にしているが、それは通いたいからではなく、仲間がみんな桜蔭か開成を目指しているからに過ぎない。


この前のサピックスオープンでは、他の学校が軒並み70,80%の合格率をたたき出す中、桜蔭は30%だった。このままでは厳しいのかもしれない。私よりはちょっと下の成績が定位置の結花は、桜蔭が40%だったと聞いて焦った。


宿題はほとんど真面目にやっているのに、テストになると手が止まってしまう。少しでも捻ってあると、もう手が出ない。この状況を母に相談したらどうなるのだろう?またプリントを増やされるのだろうか?

紬は、目の前で算数を解く結花の手の動きを見つめながら、いくら考えても分からないD問題の大問2を眺めていた。

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