表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

AI母さん

Excel父さんではなく、AI母さんのお話

由美子は派遣社員である。

子供が小学生になるまでは正社員で働いていたが、時短でボーナスが満額貰えない、マミートラックから抜け出せない生活に嫌気がさし、新卒から働いたJTCを退職し、1年休んだ後に派遣社員となった。


派遣先は、なんとかヒルズのベンチャー企業だ。毎朝、レジデンス棟から出てくる保育園に送迎する意外と普通なママを横目に、カフェラテのトールサイズを片手にエレベーターに乗り、東京タワーを眺めながら今どきのオフィスで働くのは、ちょっと愉しい。新卒社員はみんな黒いTシャツを着ていて、古巣にはあまりいないようなタイプだ。メンバーもインターナショナルで、自分の力で日本に来た者もいたりして、非常に意識が高い。そう言った子は、ここは踏み台だとハッキリと口にする。


ランチで1800円という金額のお店があることには閉口するし、帰宅時に福島屋で副菜を買ってしまい、当初の予定より貯金はたまらないが、ストレスが少なくやりがいのある日々を過ごしている。


JTCではパソコンの先生だったが、この会社では使えない方である。古巣ではマクロは禁止だったし、Excelの関数を入力できたり、プレゼン用の資料を作るだけで、貴重な人として扱われた。嘘みたいだが、それでも転職における人気業種の最大手の企業で、新卒の学歴は東大や慶應ばかりだった。


この企業に派遣されたことで、由美子のスキルは飛躍的に伸びた。インターネットが導入された時くらいのイノベーションが仕事に起きた。とはいえ事務職なので、大したことはしていないが、一人で数人分の仕事をミスなく完璧にこなすことができるようになった。古巣の仲間にノウハウを伝えたいと思っても、ピンと来ないようで少し寂しい。


由美子はべったりと付き添えない塾の伴走をパソコンとタブレットを駆使して行っている。


AIにこんな感じのプリントを作りたいと命令し、何度か修正すれば、大抵のプリントは、データを入力してボタンを押すだけで簡単に作ることができる。コピー機から吐き出される漢字プリントを子供がこなす。これを始めてから社会の漢字で間違えることがほとんど無くなった。

子供に向き合う時間は専業主婦よりは圧倒的に少ないが、コアプラも白地図も言葉ナビも全部iPadで正答率も管理した上で子どもに自主学習させていて、効率よく勉強ができていると思う。

トイレにはタブレットを設置し、レジューム機能で前回の続きから歴史年号の語呂合わせを再生して暗記させている。


毎回のテストの成績は、いくつかのデータを入力することで標準偏差を計算し、ケアレスミスの9点を正解していれば偏差値がいくつ上がったかをレポートにし、1点の重要さを伝えることが出来ている。


そんな由美子だが、サピックスオープンの成績が気がかりである。娘の紬は桜蔭を目指していて、偏差値は4科で63くらいだ。なのに、A問題の偏差値と、B問題の偏差値が乖離しすぎているのだ。何故、思考問題のB問題を解けないのだろう?


由美子は、Googleに文字列を打つ。

「B問題 できない なぜ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ