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35 遺された物

魔王軍との死闘は、ローランドの覚醒によって幕を閉じた。黄金の嵐が戦場の闇を払拭し、ナインスとエイスはその身を光に溶かされ、霧散した。


静寂――戦いの後に訪れた、あまりに深く、重たい沈黙。


炎も光も風も、今はただ穏やかに揺れていた。


「……終わったのか?」


ローランドが聖炎刀を地面につき、疲れきった体を支える。彼の周囲には仲間たちが駆け寄っていた。


「ローランド様!」


クローネ=フロストが彼の傍に膝をつき、聖剣を収める。彼女の鎧は傷だらけで、額にも血が滲んでいたが、その表情は安堵に満ちていた。


「私たち、勝ちましたわ」


「……ああ。だけど、あいつらが何を護っていたのか……まだ確かめてない」


ローランドはゆっくりと立ち上がり、魔王たちが最後にいた場所へと歩き出した。サンクトシリアとフローレンス、クローネ、そして風神や隠神刑部も後に続く。


戦場の中央、黒い大地の割れ目の奥に、奇妙な光がゆらゆらと揺れていた。


それはまるで、地中の深淵が吐き出した“何か”のように。


「これは……?」


ローランドが近づくと、そこには漆黒の石柱があった。その柱の中心には、水晶のような宝玉が埋め込まれており、脈動するように赤黒い光を放っていた。


「魔力の密度が異常です……」

サンクトシリアが額に手を当てて低く呟いた。「この宝……生きているかのように魔を吸い込み、吐き出している」


「この地に満ちていた瘴気の源……ここか」


隠神刑部が静かに言葉を落とす。尾をふわりと揺らしながら、その宝玉をじっと見つめていた。


「それが“宝”か……?」


「ええ。魔王ナインスとエイスは、この《核晶》を護っていたのです」

風神が静かに答える。「その名も――《深淵の核晶》。この世界の深層に繋がる扉の鍵とされる、危険な存在」


「世界の……深層?」


ローランドは一歩、宝に近づいた。刹那、宝玉の脈動が彼に呼応するように強まり、蒼い炎が彼の手の甲に灯った。


「反応してる……」


「主よ、貴方の覚醒した力に核晶が反応しているのです。……どうか、この地から解き放ってください」

隠神刑部が静かに頭を下げた。


ローランドは息を整え、聖炎刀を逆手に握る。


「……この宝は、ナインスたちが求めていた力の源だ。世界を闇に染めようとした連中の礎だった。なら――」


彼は剣を持ったまま、ゆっくりと手を宝に伸ばした。その瞬間、宝玉から放たれていた黒い瘴気が彼の腕に絡みつこうとする。


「うわっ……!」


「ローランド様!」


クローネが剣を抜こうとするが、ローランドは首を振る。


「大丈夫……これは試してるんだ。俺の“本質”を」


その言葉と共に、彼は剣を掲げた。


「――なら見せてやるよ。俺の炎が、お前の闇を断ち切れるか!」


《神焰・輝滅掌印》


ローランドが掌を核晶にかざすと、黄金の炎が灯り、闇の瘴気を瞬時に焼き尽くした。核晶は一際強く輝いた後、音もなくその黒い輝きを手放し、透明な結晶へと変化した。


それは、まるで彼の“意志”によって浄化されたかのようだった。


「……これが、ナインスとエイスが護っていたもの」


ローランドは結晶をゆっくりと抜き取った。小さな水晶ほどの大きさしかなかったが、その内部では、赤と金の光が静かに渦巻いていた。


「美しい……けれど、同時に禍々しいですわね……」


クローネが呟くように言った。


「これ、どうするの? 破壊する?」


フローレンスが慎重に尋ねる。


「いや……今は、俺が預かる。この力が何を呼ぶのか、知る必要がある」


「……ローランド様が?」


「俺の中の炎は、もう逃げる理由をなくした。誰よりも、この“核晶”に責任があるのは――俺だ」


仲間たちはしばし沈黙したが、やがてサンクトシリアが微笑み、頷いた。


「分かりました。なら、私たちはあなたの隣に立ち続けます」


「ええ、どこまでもご一緒しますわ」


「フッ、主が行くなら風も吹かせようじゃありませんか」


百鬼夜行の面々も、それぞれに頷いた。


こうして、ローランドは世界の命運を左右する“闇の宝”《深淵の核晶》を手にした。だが彼は知っている。これは“終わり”ではなく、“始まり”だと。


ナインスとエイスがその命をかけてまで護ろうとしたこの宝。その真価は、まだ誰も知らない。


――新たなる災厄の扉が、今、静かに開かれようとしていた。

ブクマと⭐︎5評価何卒お願いします!


という事で戦争編完結!!

ペースが異常に速いのですがこれはどうすればいいのやら………


どう書き換えていいかもわかっていません。


日常回を書ける自信が無いのですが……


まあ頑張りますっ!!

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