3 鬼と阿久良王
人が死ぬ描写があります。
そこにはツノの生えた化け物、鬼が居た。
「逃げろ!俺はこいつを討伐してから、追いつく!」
「ッ!」
その想いが通じたのか、バトラーはお嬢様3人を連れて逃げていった。
「ふう、こうならないと本気を出せないぜ。」
俺は言う。
邪魔なものは必要ないと。
「へえ、見られちゃまずかったり?」
「いいや、巻き込んじまうからな。」
そう言い俺は不敵に笑う。
「最高の魔術を見せてやるぜ!」
それにはまあ、‘詠唱が必要’なんだけどよ。
「取り敢えず、お邪魔虫は排除するか!」
『召喚 解除 全崩壊』
ゴーレムの召喚魔法を解除する。
そして、まとめて排除しようとしたわけだが……
「お前、遠くの召喚獣にも犠牲出来んのかよ。しかも、召喚獣同士で。こりゃ参ったなあ。」
俺も少々焦って来たぜ。
遠くに居るやつは、半径300メートル以内には居ないようだから、おそらく従魔術の限界である400メートルだ。
そして、全崩壊にて、スライムを全て消し飛ばされた為、そいつらに犠牲するしかないってことか。
てなると……
「もうすぐだな。」
「それはどうかな?」
口は笑っているが目は笑っていない。
恐らく、焦っているのだろう。
ここまでの規格外が出てくるとは予想だにしていなかったに違いないし、俺はイレギュラーでもある。
「だからと言って、許すわけがないがな。運がなかったと思え。」
「?何の……」
『大剣撃 大嵐』
そいつが言い終わらないうちに『鴉の翼』を振り下ろす。
一体のやつに集中して、倒すにはこいつらに頼ったほうがやり易い。
『上位種召喚』
そう言うと、最強格の一角である、鬼を降臨させる。
鬼の島の王として昔は暮らしていたと、俺の祖母が言っていたことを思い出し、上位種召喚をしてみた結果、成功した。
「やれ、阿久良王。」
そう言った瞬間、一体の鬼に掴み掛かった。
魔黒金剛石製の、金棒……いや、黒棒だ。
伝承では、振るえば山が消えると言ったが、流石にそこまではなかったようだ。
『火矢』
そう、唱えた瞬間、火矢は鬼に向かって飛んでいった。
そして奴も攻撃に参加していた。
「フッ!」
俺に向かって剣を振るう。
先ほどまでは召喚に集中していたのだろう。
ただ、もう召喚できるものもいなく、犠牲用の召喚獣も少ないが、鬼の攻撃を援護することくらいはできると言うことなのだろう。
「堕ちたな。」
「何とでも、言え!」
こいつは少なくともこの世界でトップクラスの実力者だ。
しかもさっきから、妙に調子がいい。
何か要因があるのだろうか?
調子がいいのはいいことだ。
『岩弾雨』
何粒かは阿久良王の所へ向けて、援護する。
相手の鬼の潰れかけの頭に追い打ちをかける。
「チッ、小癪な真似を!」
「本性を隠さなくなったな。」
言葉の応酬を繰り返す。
『鴉の翼』はとても丈夫に作ってある為、酷使しても問題ないが、相手の棍棒はそう言うわけにはいかないのだろう。
そして、遂に大きな均衡が破れることとなる。
阿久良王が相手の鬼を倒したのだ。
相手の鬼が足止めに重点を置いていた為、なかなか倒すことができなかった。
・攻撃はせず避ける。
・受け止める時はできるだけ流す。
・‘動’の構えではなく‘静’の構えで相手をする。
そうしているうちに、相手の体力が尽きてくる。
俺は体力がつきそうになった時、小回復をかけている為、集団と相手をしていても疲れること知らないが、阿久良王の相手をしている鬼は、格上相手にジリ貧な戦い方をしていたのだ。
だからこそ余計に阿久良王の体力を削いだようで、少し休憩したいなどとふざけたことを阿久良王も言い始めてしまったのだ。
イラつくがそれだけだ。
俺は紳士なのでこんな程度で怒ったりはしないさ。紳士だからね……
そんな事はさておいて、阿久良王がさらにもう二体引き受けてくれたおかげで、俺にも余裕ができた。(阿久良王に回復を打った。)
なので、一気に終わらせるとしよう。
この不毛な戦いを。
阿久良王が相手の棍棒に叩きつけるように黒棒を振るっている。
ただ、構えが甘いな。
もう少し改良の余地があると、考えている今日この頃。
『岩弾雨 水嵐』
この二つを同時に打ち込む。
片方は渦潮を地上で巻き起こし、片方は巨石の雨を降らせている。
こんな独特な使い方をすることになるなんてな。
渦潮の中で岩が流れ、その中で加速し、それから放り出されることで、相手に当てる。
ブラフで打ち込んだり、俺が直接行ったのがブラフだったりと、様々な要因が組み合わさっている。
「ああ、君は一体どれだけの魔力があればこんな無茶苦茶なことができるんだい!?予想はついているにしてもSランクモンスター5体を用意して負けるなんてね。誰に言っても信じてもらえないような現象が起きちゃってるんだねぇ。魔法使いは物理弱くなくちゃいけないのに、そっちの道も上を行くなんて面白くもなんともない冗談だよ。」
『動く魔国』は、饒舌になりながらもそう答える。
「そりゃあ!大剣撃 暴風斬」
『鴉の翼』を縦から下へ振るうと、暴風が吹き荒れる。
『動く魔国』は吹っ飛ばされたようだ。
まるで鍛えていないようだな。
「軟弱だな。」
「答えてるんだけど君たちがすごすぎるんじゃない?」
確かにこの暴風はすごいかもしれないがだとしても、
「従魔やスキルに頼るのではなく、もっと自分の力を鍛えておけ。魔力操作だったりなんなりすると、自分の従魔が使える魔法を使えるんだぞ。」
「ハハッそんなこと言ったって意味がないよ。だって僕は君に殺されちゃうんだからね。」
‘でもね’
「少しは一矢を報いさせてもらうよ!」
そう『動く魔国』は言った。
その瞬間そいつはブレた。
身体強化魔法!?
「僕のこれは音を超えるっ!」
だったら俺も!
『身体強化魔法 全体 軽量化魔法 感覚鋭敏 眼力』
そう唱えると、『動く魔国』を捉え攻撃する。
驚いたような顔をするなよ。
「俺がこれくらいもできないと思ったか?」
俺は不敵な笑みを浮かべる。
こいつは世の中のためにならない。
絶対に殺すべき存在である。
有難いと思え!
最強だと思える魔法を使ってやる。
「ギリシア神が舞い降りし時に、炎の神が人に与えた炎の全力をいま見せんとする。」
『金色に燃ゆる炎』
それは金色に輝く炎。
何もかもを飲み込むような炎。
これをみたものは息を殺して見つめ続けることしかできない。
そして、『動く魔国』は死んだ。
焼けこげているやつの体は残っていた。




