2 天敵
今回は、中途半端になるか少し長めになるか悩んで、長めにすることにしました。
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そんなこんなで、旅を続けていると、叫び声が聞こえてきた。
「キャァー」
誰の声なのか知らないが、女の子っぽかったので助けに行こうと思う。(下心満載)
それに、鑑定で見てみると、隠密結界が張ってあった。
ただ、俺には無属性の『見通す瞳』と、『地獄耳』を使えば、少しの音の波長でも聞き取れる。
パッシブスキルだが、普通じゃない音だけ、聞こえる音に変えてくれる超便利なスキルだ。
執事っぽい、バトラー?が守っているからなんとか持っているようだな。
「身体強化脚力 軽量化羽のように軽く 大剣撃 爆暴風!」
音を超える超スピードで、駆け抜ける。
なのに、軽すぎるせいで音もなく、地面もえぐれずにその男の首を叩き折ろうとする。
「絶剣」
確かに切った、其の筈なのにその男の首と胴体がつながっていた。
その代わり、そいつの死体の横には首が切断されたゴブリンがいた。
「お前、盗賊にしてはやけに強いな。何者だ?しかもテイマーか?暗殺者にも不向きなのにどうして……」
先程から気になっていたことを口にする。
「複数属性持ちでもないしね、君は何者だい?しかも、サイレントに、隠密結界も破りやがって。『地獄耳』に、『見通す瞳』持ちかよ。」
「いや、聞いたことがある。何十もの魔獣を捕まえて、暗殺に利用する、『動く魔国』か。」
「へえ、ぼくのことを知っているのはすごいね。まあ、それでどうだっていうこともないけど。お偉いさんが、嫉妬心で今日、この娘たちを殺して欲しいという依頼が来たんだ。いやぁ、恐らく強姦でもするんじゃないのかな?まあ僕には関係のない話なんだけどねえ。」
俺の中から不快感が渦巻く。
この子達が一体何をしたっていうんだ?
あまりにも身勝手にも程がある。
捻り潰す。
「お前は暗殺者ってことを依頼主の情報は漏らさないかもな。でも、お前はここで、叩き潰す。」
「出来るわけないじゃないか。」
お前の手札は全部、予想している。
「お前は従魔に自身ダメージを移すことができるんじゃないのか?」
もしそんなことができるのだとしたら……
僕の
『天敵』だ。
「そこまでわかっているのか?まあ、そこまで辿り着いてなお、僕を叩き潰すなんて耄碌したような言葉を吐くなんてね。信じられないよ。僕の従魔は何十体もいるんだからね。」
辺りに絶望的な雰囲気が流れる。
「貴方は逃げてください。私が足止めを行うので、援軍を!」
そう、バトラーが叫ぶ。
俺は思うのだ。
‘で、だからどうした?’
「で、だからどうした?」
「ッ!?」
『動く魔国』の表情が驚愕に染まる。
「期待以上かもしれないな。こういうのは人生経験を積ませる前に殺すに限るんだ。」
「お前は俺を舐めているんじゃないか?」 『雷属性付与』 『紫電一線』
その瞬間、俺は雷になった。
眩い光があたりを包む。
それと同時に行う。
『麻痺付与』
「アグッ……一体何をした!?」
「言うと思うか?この俺が?」
殺してもキズを移動するんだったら、状態異常を付与するのが得策だと考えたわけだが……
「は〜い残念〜状態異常も移動できますぅ〜残念でした!」
こいつ、煽り特性高すぎだろ。
「じゃあ僕の本領だそうじゃないか。」
そう言い、片手を突き出す。
その瞬間千を超える量の魔法陣が出現する。
そこから丸々としたスライムが分裂しながら現れる。
「君は分裂より速い速度で、このスライムたちを殺すことができるのかな?しかも足手纏いを守りながら。」
その言葉に俺は不敵に笑う。
「お前と同じような切り札が俺にもあるんだよ!」
そういい、亜空間から魔石を取り出す。
指の間に挟んだ魔石を宙に投げて、『召喚』と唱える。
そうすると、魔石から鉄が生えてきてゴーレムが完成する。
「これで足手纏いは守れるぞ。」
「君は思ったより厄介だね!」
「お互い様だな。」
スライムは物理攻撃無効だから、魔法攻撃を行う。
『吹き荒れろ、大破暴嵐氷刃』
嵐に、重力属性と、氷属性を付与している。
全てを飲み込む死を呼ぶ風だ。
「一気に個体が減ったな!」
あれだけの魔法を連打すると、疲れるので、暫くは身体強化のみで戦うか?
いや、魔法と言っても中級魔法程度じゃ全く持って疲れない為大丈夫だろう。
『火矢』 『火傷付与』
同時に唱える。
「ククク、一体君の魔力はいつ切れるのか、見ものだねぇ。」
「そんな空想考えてねえで、今俺を殺すことだけを考えろ。余計なこと考えてっと死んじまうぜ!」
「余計なことじゃないのにねえ。」
バトラーの人もある程度はスライムを倒してくれている為、随分数が減って来た。
俺に持久戦を挑んできたお前がバカだったな。
しかし、従魔術師が忌み嫌う、犠牲というパッシブスキルを自分につけるとは。
しかも、これは外すことのできない本物の不良品だ。
傷がいくのは選択できるが、絆でつながる従魔術師たちは、こんなパッシブスキルを使わない。
やはりこいつは殺すべきだろう。
「大剣撃 暴風斬」
あたり一面に風が吹き荒れる。
そして、失った魔力も急速に回復して来た。
「殴打 蒼炎化」
俺の手が蒼炎に変化する。
そして俺はそいつの顔面に手を打ちつける。
蒼炎は、耳の中からそいつの脳にも侵入する。
そして今、奥の手を使う。
『形態変化』 『火傷付与』
そういうと同時に、そいつの脳内が普通ではあり得ない苦痛で発狂する。
「があああ、頭があああああああ」
殴った手を引く。
傷はなくなっているが精神的な傷は無くならない。
暗殺者も痛みなどには気をつけているようだが、流石にこれはえげつないな。
「くっそ、こうなったらやけだ!奥の手を出してやるっ!」
そう言い、そいつは片手を突き出す。
5個程の魔法陣が、現れてその中から化け物が現れた。
「マジかよ……」
そいつは……鬼だった。
***視点変更 バトラー(セバス=チャン)視点
驚愕は突然現れた。
何せ、公爵令嬢の御二方に加え、王女様の乗っている馬車に手を出す輩をいないし、ここまで浅い場所だったら、大した魔物も出ないだろうということだったはずなのだ。
しかも、公爵令嬢の一人は、聖女という能力持ち。
私が、御者兼護衛をすることになり、それを他の執事見習いたちが羨ましそうに見ていたのを覚えている。
「くっそ、こんな所でオーク4体だとっ!」
そう愚痴りたくなるのも当然だ。
初心者用の平原からすぐそこの、森の中でピクニックをしたいとお嬢様方のたっての願いだからだ。
それを王様は許可して、向かわせたのだが……
もしかしたらどこかでバレて、暗殺者に依頼された可能性もある。
それか、愉快犯の可能性もあるだろうし、盗賊の可能性もある。
そう思いっていたときだった。
「粘るねえ。邪魔だよ、君。」
そう言われた時は驚いた。
全くもって気づかない、足音を出さずに近づいてくる時点で、暗殺者は確定した。
「ふふふ、隠れ護衛は先に始末させてもらったよ。僕はサイレントという魔法が使えるからね。それに隠密結界も張ってある。誰からの助けも来ないよ。」
そういい、高笑いするそいつの頭がずれ落ちた。
そして、その頭が何故か回復している。
‘チャキッ’と、納刀する音が聞こえる。
後ろにいるお嬢様も驚いているがそこの男性に見覚えがあるからだ。
‘レオール=ローランド’ この男は公爵家を追放されたと聞いた。
そのような男が何故こんなに強いのか?
疑問が湧いてくるが、今は押し殺す。
そいつが、スライムを大量に出して来たからだ。
そして助けを求めるよう言った。
「貴方は逃げてください!援軍を呼んでくるのです!」
そう私は焦ったように言った。
その不安とは裏腹に安心させるような言葉が聞こえる。
「で、だからどうした?」
この言葉に私は心から安心しました。
それからは、魔法対スライムの激戦。
さらに召喚で、ゴーレムを呼びお嬢様を守りながらスライムを潰していく。
圧倒的にこちらが優位に思えた。
あいつが出てくるまでは。




