20 サンクトシリア=フレスト
サンクトシリア=フレスト。
領内では聖女として多大な人気を博し、聖属性と聖を治める者の祝福を所持している。
魔族に特攻能力を持っており、その他、魔物にも大きな影響を与えることが可能な優秀な能力。
家も公爵家ということもあり、日々縁談が舞い込む毎日なのだとか。
「ローランド様、お久しぶりでございます」
恭しく頭を下げてくる。
いや、何だかなー………
「サンクトシリア様、そもそも私は貴族号を破棄された後、子爵を賜った身。あなた様のような天の様なお方に恭しくされる謂れは御座いません」
「ふふふ、命の恩人に礼を尽くすのは貴族の常識では?元公爵家嫡男ならそれぐらいは家庭教師に叩き込まれたはずでは?」
やんわりとこの後のことを手加減してくれと言ったんだがな……
手加減はないようだ。
「何分、近頃はそのような技術は使っておらず……申し訳ありません」
「こちらで教えましょうか?1年程こちらに留まられるならば、それくらいの手配は容易い事ですが」
う〜ん。フレスが隣にいる状況でそれはちょっとなぁ……
「はは、御冗談がお上手ですね。サンクトシリア。貴方はいつから泥棒猫になったんですの?」
「泥棒猫は貴方でしょう?フローレンス様?」
おや?おやおやおやおや?おれの知らない間に戦いが勃発したぞ。どうするか……
ん?てゆーかフロスが泥棒猫っていうのは分かるけど、サンクトシリア様がそれいうのはどういう事だ?
「レオール公爵家嫡男である彼と婚約していたのは私ですのよ?」
は?待て待て待て。
何でそうなった!?
「彼はもうレオール公爵家嫡男ではありませんのよ?領地を持っていないので後名は持たれておりませんが彼は今は、ローランド子爵なのです。過去を引き合いに出すのはどうかと思いますわ」
「そのお話は別ではございませんこと?ローランド様はローランド様、今も昔も変わりませんわ」
「しかし、先方ではレオール=レッター様がレオール公爵家嫡男に正式に就任されたのでは?」
ぴー、ピピー、サイキドウカイシ。
え?ちょ、ちょマジ?
うせやろ。
いやいや、もちつけもちつけ。
天下餅……じゃなくて、いくら過去の記憶を探ったって出てこないんだが?
本当にどういう事だ。
しかもフレスはそのことを認識している口調だぞ。
マジで何かがあったんだろうってことはわかるんだが……
フレストは俺の弟と婚約する予定だと聞いてはいたが……
完全に俺じゃないから何も言えないが、俺の母が死んだ後、俺の立場は悪くなっていったのは記憶にも新しい。
この情報って意識しないと浮き出てこないっていうか、何というか。
本当によくわからない仕様だぜ。
神様はもっと便利にすることは無理だったのだろうか?
(これがワシの限界じゃよ)
何か幻聴が聞こえた気もしなくもないが、無視だ無視。
こんなことを考えている間にも、目の前でレスバは続けられている。
レスバ(お嬢様バージョン)だが。
「あんのー?すいません、言い争っているところ申し訳ないが俺の記憶にサンクトシリア様と婚約していた記憶がないのだが、そこら辺の詳細を教えてくれないか?確か弟がそうなるはずだとか何とか言われてたような記憶しかないんだ」
「ふふふ、やってくれましたね?あの古狸」
何だろう、この気持ち。
これは……恐怖?
つまんないことは置いておくとしてよ?
俺の状況は◯兆年と◯夜の知らない知らない僕は何も知らないっていう状況に置かれているんだが!?
ただ予想もできるわけだ。
まあ言動的に俺を嫡男から引き摺り下ろして、弟なのに嫡男にして、婚約まで持って行こうという様な算段だったか。
確かにあり得るが、恐らくレッターが大きく関与している事だろう。
有り得る路線としては、レッターがloveったか、どうかか。
公爵と公爵の婚姻関係は別におかしくはない。
前後一段くらいは親の裁断だけで決められたりすることもあるそうだ。
王族は嫁ごうとすれば臣籍降下は免れないし、準伯爵、又は伯爵、辺境伯、侯爵くらいしか嫁げないのだ。
逆も然りだ。
しかし、それを大きく外れる道もある。
それは、世話係だ。
世話係とは王族を世話する異性のことだ。
男爵や準子爵、子爵などはよく、己の娘の三女以降などはよくメイドに行かせたなどと話を聞くことも多い。
大奥に入ることができると出世街道まっしぐらだとか。
そういうものに夢を見る若い男女も多いそうな。
これ以上関係ない話は割愛するとして、話を戻すと、フレスト家が指定してきたら、指名の相手を長男から次男に変えればいいだけの話。
それをフレスト家はしていない。
ということは今回俺が追放されたことは認知の外側だったと思われる。
レッターの我儘が第一候補。
第二候補として親の暴走。
我が子に相応しい相手を用意しようとしたか。
有り得る可能性といったらこのくらいだろう。
「レッターの暴走……か」
「どうかなされましたか」
「ああ、いや、何だ。消滅都市の勇者と災龍を読んだことがあるか?」
その言葉を発するとサンクトシリアは眉を顰めた。
それもそうだろう。
その物語の終わり方、それは聖女と勇者の結婚によって幕を閉じたのだから。
災龍に対し、命を以てして、封印を施した名もわからぬA。
その男は手数が多く、百芸簡単習得と剣聖という相当強力な力を持って生まれたのにも関わらず、努力を怠ることなく、最終的に聖女と恋仲になるも、聖女を守って死んでしまい、その聖女は勇者に寝取られるという胸糞話だ。
レッターはどこか、夢見がちなところがあるため、その話通りのことをやろうと実行する可能性だって存在するのだ。
「あれは私が最も嫌いな物語の一つでしてよ」
それもそうだろうなぁ。
「貴方にピッタリな話……ではないわね。私の愛するローランドが死んでしまったら元も子ないもの」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「何よ?いつも私の言葉が嬉しくないっていうの?」
「ハハッ、そんなことないさ」
「ふふふ、お二人様、私はここにいますよ?」
その、怒気を孕んだ声に背筋が一瞬震えてしまう。
「はあ、正直いって、ローランドの器量を女一人で独占なんて勿体無いとは思うわ。側室を認めるべきと客観的に見れても、それでも私は否定したいのよ。でも教会が何かを言ってきそうだからね、側室を認めてあげるわ」
それはまるで自分を言い聞かせるようにも聞こえなくはなかったのだった。
原神のせいで投稿遅れました。
すいませんは言いません。
楽しいからね、原神。




