婚約関係の解消
お父様とお母様は私のやることなすこと反対した試しが無いし教育は乳母のマーサに丸投げして猫可愛がりする。
私も今まではそれが当然だと思っていた。
私は完璧で可愛くて愛される人間だと。
その勘違いが将来の身の破滅を呼ぶのだ。
そんな将来を思い出してしまっては、のんびり寝ている場合では無い。
「あの・・・殿下・・・」
「どうしたんだい?さっきまで愛称で呼んでくれていたのに・・・」
「いえ、先程までは申し訳ありませんでした。殿下を愛称で呼ぶなどと・・・」
「愛称で呼んで欲しいんだ。殿下などと寂しい呼び方は辞めてくれ」
レイは悲しそうな顔をしていた。
うっ。美少年が悲しそうな顔をするのはズルい。
「ですが・・・」
なおも言い募ろうとすると、なんと殿下は広いベッドに乗り上げ顔を近付けて来た。
「話し方も戻して?レイと呼んで欲しい」
「うっ。ではレイ様と呼ばせてください」
「話し方」
「レイ様と呼ばせて」
「うーん、仕方ないね」
なんとかレイは納得してくれたようだ。ベッドから降りてくれた。
「それで、レイ様、お話があるの」
「なんだい?」
レイが首を傾げる。言いにくい。
「あの・・・」
「?」
思い切って言うしかない。
「婚約をっ!解消してくださいっ!」
ふーっ。よし、言い切ったぞ。
安心してレイの顔を見たが・・・
「ひっ」
思わず口から悲鳴が漏れてしまった。
レイの表情は完全な「無」だった。
だがすぐにニコッと笑顔になる。え、なに、さっきのは見間違い?
「倒れてしまって気が動転しているんだね。大丈夫だよ」
何が大丈夫なのかわからない。
しかしここで引くわけにはいかない。
「いえ、私には勿体ないお話だったの」
「どうしてそう思うんだい?」
どうしてと言われても困る。本当のことを話すわけにはいかない。絶対におかしくなったと思われて侍医どころの話では無くなる。
「だって私まだ5歳の魔力測定も受けて無いし・・・」
「大丈夫。魔力測定の結果が良いに越したことはないけど結果が悪かったとしてもどうにかしてみせるよ」
笑顔のまま言い切るレイ。どうにかとはどうするのかちょっと怖くて聞けない。
「不安があるなら一緒に解決して行こう」
良い笑顔で言い切られてはこれ以上何か言うのも難しい。
こうなったら、婚約者候補として相応しくないと行動でわかってもらうしかない!
幸い婚約者の決定までは2年もある。
「わかったわ。婚約解消なんて言い出してごめんなさい」
「いや、わかってくれたなら良いんだ。不安な事は話して?」
「ううん、もう無いわ。大丈夫」
微笑んで見せると何事かと慌てていたお父様やお母様も安心した顔になった。
「いきなりリズが婚約を辞めたいなんて言い出すから心配したが落ち着いたようだな」
「ええ、驚きましたわ」
「お父様とお母様もごめんなさい」
お父様とお母様に頭を下げる。
「いいんだよ。だがなんだか急にしおらしくなってしまったな」
ギクッとしてしまった。お母様が頬に手を当てながらまだ心配そうにしている。
「そうね、まだ疲れているんだわ。休ませてあげましょう」
「私も長居してしまったね。帰らせてもらうよ。」
レイは布団から出ていた私の手を、伸びをしてぎゅっと握り言った。
「ゆっくり休んで。近いうちにまた会おう」
そうしてゆっくりと手を離して帰って行った。
お見送りのためにお父様とお母様は出て行き、部屋にはマーサしかいない。
さてここからどう行動するか。2年で解消してもらうために色々やってみよう。そう決意した。
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